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アメリカ中間選挙結果を「楽しむ」うえで最低限知っておくべきこと

アメリカで中間選挙が行われる。アメリカのメディアは赤と青に分かれており当てにならない上に「論点」と呼ばれるものが乱立している。そこでイギリスBBCの英語版を見ながら知っておくべきことをまとめてみた。イアン・ブレマー氏も中間選挙についてまとめている。これも参考にした。だいたいこれだけ分かれば9割ほどは楽しめるのではないかと思った。

ほどなくしてBBCが論点を5つに整理した日本語の記事を出した。やはり影の主役はトランプ氏である。2020年の大統領選挙の決着がまだついていないようなのだ。

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基本情報

  • 中間選挙はいくつかの州知事選挙と上院・下院の選挙を組み合わせたもの。
  • 上院・下院の選挙は2年ごとに行われる。下院が実質的な審議をし上院はそれを承認したり拒否したりする。州単位で決められる法律も増えており州知事選挙も重要だ。
  • 上院は2年ごとに1/3が入れ替わる。つまり任期は6年だが2年ごとに選挙がある。下院は全ての議席が2年に一度入れ替わる。
  • 上院は均衡しており副大統領(民主党)が議長として最終決定権を持っているため民主党が維持できそうだが、ネバダ・アリゾナ・ジョージア・ペンシルバニアで勝敗がわからない。
  • 下院は大統領の支持率が低い時には共和党が勝利する傾向がある。今回も支持率は低いので共和党が勝ちそうだ。だが実際に争われているのは435議席のうち30議席ほどしかない。
  • このほかにいくつかの州で州知事選挙と州務長官選挙が行われる。2020年の選挙の懐疑論者がいるアリゾナ、ミシガン、ペンシルバニア州やトランプ氏が推しているフロリダ・テキサス州の知事選挙などが注目されている。

結果が与える影響

BBCの日本語の記事によると論点は次の5つにまとめられている。イアン・ブレマー氏はこれを三つにまとめる。1が文化戦争、2〜5は全て実は2020年の決着がついていないことを示している。

  1. 中絶の権利か制限か
  2. 共和党が民主党を調査する転換点になるか
  3. バイデン大統領の将来
  4. トランプ氏は再び立候補するのか
  5. 選挙否定派が選挙を仕切るのか
  • 内政
    • 最高裁判所は既に保守が支配しており中絶問題などで保守が好む結果が出ている。下院が共和党支配になれば民主党の文化的課題は司法に抵抗が難しくなる。文化的課題には気候変動問題、銃規制、医療保険問題などがある。イアン・ブレマー氏はこれを文化戦争と言っている。
    • 共和党が勝てばバイデン大統領の「疑惑」について調査が始まる可能性がある。ハンターバイデン氏の問題やアフガニスタン撤退の是非などがターゲットになりそうだ。イアン・ブレマー氏はバイデン政権に対するあらゆる調査が行われことによれば弾劾訴追にまで発展するだろうと予測している。
    • 一方で共和党が勝てばドナルド・トランプ前大統領を攻撃する目的で設置された1月6日委員会は終了することになる。
  • 外交
    • ウクライナの戦争については「撤退論」が出てくるものと思われる。これについては読売新聞や日本テレビなどが詳しく伝えているので文末に補足した。だが実は有権者のウクライナへの関心はそれほど高くないようだとする報道もある。
    • 台湾情勢や日米同盟・日韓同盟などに関して言及しているものはない。これらはそもそも争点になっていないようだ。日本人はこれを最大の関心事だと考えるだろうがそもそも論点ではないのだ。
  • 知事選挙・州務長官選挙
    • 知事選・州務長官選挙で共和党が勝利すればトランプ前大統領が大統領選挙キャンペーンに復帰するのはより容易になるだろう。トランプ氏が復帰するためにはテキサスとフロリダで知事が勝利する必要があるとBBCは分析している。
    • ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルバニアで民主党が勢力を維持できればバイデン大統領の再選に可能性が出てくる。「選挙否定論者」が勝てば2024年の大統領選挙に混乱が起きるかもしれないとイアン・ブレマー氏は懸念している。選挙の正当性を認めるのは州知事と州務長官の仕事だからだ。

ここからは補足情報である。


補足1:ウクライナ問題

読売新聞が「白紙小切手」のエピソードを紹介している。発言したのはケビン・マッカーシー院内総務だ。ペロシ氏に変わって下院議長になる可能性がある人物だ。ただしアメリカが撤退を仄めかせばNATOが動揺する可能性がある。このため上院の院内総務であるミッチ・マコネル氏が「火消しに走った」そうである。つまり共和党が勝てばウクライナ情勢に影響を与える可能性がある。

補足2:日本ではあまり語られない州知事と州務長官問題

日本では州知事問題と州務長官問題についてはあまり語られることはない。特に2020年の大統領選挙の結果について疑問を持っている人が多く立候補しているとロイターが書いている

懐疑論者がいるのはアリゾナ、ミシガン、ペンシルバニアだそうだ。どの州も僅差でバイデン氏が勝っている。州知事・州務長官が「認定しなかった」としても選挙結果が覆るわけではない。直ちに裁判が起こされることになる。ただし大統領選挙の結果が確定するのは遅れることが予想される。つまり単にアメリカが州国が混乱するだけだろうとロイターは分析している。

ウィスコンシン州の共和党候補もトランプ氏がエンドースする候補だ。こうしたトランプ氏が推している候補が勝てばバイデン大統領にとっては極めて不利ということになる。つまり今回の知事選の影の争点は実は2020年の大統領選挙の結果を受け入れるかである。

このため「今回の影の主役はトランプ氏である」などと語られている。

このようにトランプ氏にとって好ましい結果が出れば、トランプ氏が大統領選挙に出馬表明するのではないかと言われている。娘のティファニーさんの結婚式を控えているためにそれを避けて14日に出馬表明するのではというのが現在の観測のようだ。

読売新聞も「トランプ氏の再出馬はあるか」を最大の争点にした記事を書いている。

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