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財務省と自民党政調会長の仁義なき戦い。勝者は萩生田政調会長だが敗者は誰なのか?

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テレビ東京が興味深いYouTubeビデオを流している。「禁じ手には禁じ手で」自民党VS財務省経済対策をめぐる攻防というタイトルになっている。タイトルだけを見れば、まさに抗争といった様相である。昭和の東映映画の「仁義なき戦い」のテーマが流れてきそうだ。勝者は萩生田政調会長なのだが敗者は誰なのかを考えてみた。

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仁義なき戦いを仕掛けたのは財務省だった。何らかの理由で焦りを感じていた財務省は鈴木財務大臣と共に官邸に乗り込み「自民党との間に合意ができている」とした上で補正予算の規模を25.1兆円になったと報告した。これに疑問を持った岸田総理大臣が萩生田政調会長に電話をしたところ合意はできていなかった。萩生田政調会長がこれを会議で暴露したために自民党の間に反発が起きたという。結果的に予算規模は「財務省の顔を潰す形」で膨らんだ。

最初の禁じ手は財務省が抜け駆けして既成事実を作ろうとしたことだ。もう一つの禁じ手は何なのだろうと思いながらビデオを見た。総理大臣との会話の内容を漏らすことが禁じ手なのだそうだ。「嘘はいけない」と思うのだが「会話を漏らしてはいけない」のがなぜ禁じ手なのかはわからない。とにかくそうなっているそうである。

岸田総理大臣がなぜ萩生田政調会長に電話をかけたのかはわからない。だが岸田総理は政調会長経験者だ。つまり自民党の中でどのようなプロセスが進行しているのかをよく知っていたのだろう。

財務省がなぜこのような行動に出たのかという話は伝わってこない。新規の10年もの国債は市中に出回っている金額よりも日銀が引き受けているものの方が多いという異例の状況になっている。財務省が「このままでは自民党が暴走する可能性がある」と危機感を募らせても不思議ではない。

このような対決姿勢が見られるのは何も財務省と自民党の間だけの話ではない。鈴木財務大臣は「防衛省も自己改革と合理化を」と予算増額を牽制したとNHKが伝えている。鈴木財務大臣は記者たちに「規模ありきの議論は困る」と説明したそうだがなぜ政府で調整する前にそのような発言をしたのかはよくわからない。とにかく全体として調整ができなくなっており「世論戦」が展開されているようである。財務省はかなり焦っており鈴木財務大臣は対応に苦慮しているようだ。

前回のJアラートの件では「官房長官はニュースデスクかニュースキャスターになるべきだ」と書いた。実際には「デスク不在」の官邸では予算編成でも同じようなことが起きている。党の幹事長が調整役になるべきか政府の官房長官が調整役になるべきなのかはわからないのだが、結果的にはどちらも機能していない。このため、総理大臣に直接報告が上がり結果的に全てを総理大臣が調整するというような展開になっている。

もちろん秘書が全てを取り仕切るような政治にも問題はある。だが、総理大臣が全てもの問題について調整をすることなど不可能だ。誰かが整理する必要があるだろう。整理担当者不在絵は今後の予算編成も荒れそうだ。

具合の悪いことにこれらのツケは全て国民が支払うことになる。財務省主導で増税の話が飛び出し、厚生労働省主導で保険料値上げの話が飛び出す。つまり、全体としての支出が増えれば増えるほど国民負担は増えてゆく。最終的には誰かが負担しなければならないからである。

政府は国民に対して「財務省が楯突いてきたので予算を増やしました。将来はあなたたちが負担しますがよろしくお願いします」と言っていることになる。つまり敗者は国民だろう。

結局「払ってもらえるところから払ってもらおう」ということになり余裕のない人の首を締め付ける。こうなるとゲームから早く脱落した方が正解ということになり社会が縮小することになる。一生懸命その場で支えようとする人やこれから生涯設計を始めようとする人ほどダメージは重くなる。バブルが崩壊直後に卒業した人たちは埋められない荷物を背負わされた。特に頑張って社会を支えようとした人ほど徒労感は大きかったはずだ。同じようなことが起こりかねない状況になっている。

政府・与党に調整役がいないことで結果的に我々は社会の縮小を選択していることになる。今回の仁義なき戦いの明確な勝者は自民党でありその功労者とされているのが萩生田政調会長だ。一方で敗者もはっきりしている。それは間違いなく国民だろう。

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