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ネタニヤフ政権の誕生でアメリカ・民主党政権は苦労することになりそうだ

イスラエルでネタニヤフ政権の誕生が確実になった。最終的な陣営の議席数は64になる。中には「宗教右派」と呼ばれる人たちが含まれておりアラブ系イスラエル人への人権侵害が懸念される。アメリカ合衆国はことイスラエル政策に関してはダブルスタンダードを持っている。バイデン政権はネタニヤフ政権への対応に苦慮することになりそうだ。

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イスラエルでは4年間で5回の総選挙が行われた。いったんは反ネタニヤフ陣営が協力し政権を奪取したものの予算編成で内紛が起こった。予算は通ったが離反する議員が出たため少数与党に転落し暫定首相のもとで総選挙が行われた。

当初予想された通りにネタニヤフ政権が政権を奪取した訳だが「右傾化」が進んだ。AFPは次のようにまとめている。

  • ネタニヤフ氏率いる右派「リクード」が32議席
  • ユダヤ教の超正統派勢力が18議席
  • 極右「宗教シオニズム」が14議席を獲得

リクードが勝ったというよりは宗教勢力が躍進したといってよさそうだ。血統ではなく宗教をバックグラウンドにしたイスラエルでは宗教勢力はほぼ「民族主義」と同義だ。リクードは新与党連合ではちょうど50%の議席を持っていることになり、宗教勢力の協力が不可欠になった。

今回注目されているのが「宗教シオニズム」だ。BBCは極右の超民族主義と書いている。イスラエルでもインフレが進行しており特にテルアビブなどの都市部は物価高が進んでいるようである。ハイテク産業が集まるテルアビブは世界一生活費が高い都市として知られている。こうした不安や成長から取り残された人たちが「排斥主義」に走るのは何もイスラエル特有の現象ではない。

  • 「宗教シオニズム」指導者のイタマル・ベング=ヴィール氏とベザレル・スモトリッチ氏は、反アラブ的言動で知られる。
  • ベン=グヴィール氏は「不忠実」とみなされた人々の国外追放を、スモトリッチ氏はアラブ系政党の非合法化を、それぞれ要求している。

これは「愛国」を政治参加への条件にする中国共産党と似たような考え方である。こうなると困るのがアメリカ合衆国である。民主党・共和党共にユダヤ人の支持は欠かせない。だがイスラエルが人権侵害に走れば国際的な批判は後ろ盾になっているアメリカにも向かうだろう。つまり、香港、チベット、新疆ウィグルについて中国共産党政権を批判しているがイスラエルも同じことをやっているではないかと言われかねない。

このためアメリカ合衆国は「すべてのイスラエル政府関係者が、開かれた民主主義社会の価値観を共有し続ける」ことを望むと表明したとBBCは伝えている。そうした価値観には「市民社会の全員、特に少数派の人々に対する寛容と尊重が含まれる」と釘を刺している。

ネタニヤフ首相は汚職疑惑でいくつかの裁判を抱えているようだ。つまり崖っぷちの状況である。裁判を有利に進めるためにも国家の中枢に居続ける必要がある。おそらくそのためには宗教勢力への妥協が必要だとみなす可能性が高い。野党に転落すればそのまま即政界引退となりかねないからである。ところが彼らのいうことを聞いてしまうとアメリカの後ろ盾を失いかねない。

もっともロイターによると連立協議はまだ始まっておらず、実際にネタニヤフ政権が誕生するかはわからない。また宗教勢力が閣内に入るかも確定していない。今後の成り行きが注目される。

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