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企業収益は過去最高なのに岸田政権でトリクルダウンが起こらない理由

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連日さまざまな刺激的なニュースが飛び交っている。その中で小さく扱われたニュースがあった。実は2021年の法人収益が過去最高を記録した。製造業だけでなく旅館飲食も業績を回復させている。去年の数字だが、これがトリクルダウンを起こすことは決してない。長い時間をかけてそのように誘導されているからである。11月からまたさまざまなものが値上げされる。一般消費者にとっては厳しい年末になりそうだ。

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円安の影響もあり企業収益も税収も好調

2021年の法人収益は過去最高だった。これは国税庁の発表なので公式に捕捉されている数字だ。だが法人税収益はバブル時代の75%程度だった。長い時間をかけて法人税などから消費税への誘導が進んでいる。急激な変化ではないため徐々に慣らされていったことになる。実は税収も過去最高を記録していた。これは記事が2022年7月に出ている。

ロイターは政策投資銀行の頭取のインタビューを掲載している。「円安で起業業績が好調だった」いう。この人は元財務次官で日本政策投資銀行は財務省所管の特殊会社だ。つまりこの好調は今も続いている。

ただ「円安は企業によって都合がいい」などというと袋叩きにあいかねないため「中長期的に見ればデメリットもありますが」とフォローしている。こう言っておけば円安を容認していると非難されなくても済む。

庶民の困窮は実は追い風

企業は儲けているが庶民の生活実感は苦しい。これも実は自民党公明党政権にとっては追い風になっている。

国民生活が苦しければ苦しいほど、政府に圧力をかけて国債を原資に大型の補正予算が組める。財務省は反対したようだが萩生田政調会長が押し切った。自民党関係者はこれで「急進力が維持できる」と満足げである。だが物価高と賃金上昇のための予算は13.7兆円から12.2兆円に減額されている。増えたのは「不測の事態に備える」という名目で政府が自由に使えるお金と支援者たちへの分配だ。自民党は分配によって急進力を保ってきた政権である。これまでもそうだったしこれからもそうなのだろう。

自民党は予算を勝ち取ったことに満足しているが実は物価高対策ではなさそうだ。11月中旬まで補正予算案は出てこない。岸田総理は「スピード感を持って」といっているのだが実際には支援者たちへの分配の色彩があるためそれほど急ぎではないのだろう。

岸田総理は今回の補正予算案の説明で「発信・広報に努める」と言ってしまっている。つまり補正予算の目的が宣伝であると自ら認めてしまっている。ロイターの記事の表現では「求心力の維持」だ。かなりあからさまな利益誘導だがこれに気がつく人はいないだろう。

負担は広く薄く

今回押し切られた形の財務省は「国民負担提案」に余念がない。厚生労働省も同様の方向性だ。政権は支援者たちに分配しているので当然さまざまなお金が足りなくなる。そのようなお金は選挙にあまり関心を持たない人たちから広く薄く取ればいいということになる。

基本的にこれがトリクルダウンが起こらない仕組みである。普段のニュースは個別案件単位で語られるため全体像はあまり問題にならない。例えば国民年金は国民年金の話として議論される。当然制度が維持できないなら保険料を何処かから取ってこようという議論になる。

世論操作も実は簡単

おそらく国民の不満は高まっていると思うのだが、意外と政府批判にはつながらない。

ワイドショー対策は実は簡単だ。旅行支援は瞬間蒸発したとされているがワイドショーでは「おトクに乗り遅れないために情報を取りましょう」などと盛んに煽っていた。誰ががトクをしたニュースを見れば「なんとなく自分が乗り遅れたからソンをしたのだ」という印象になる。少ない予算で「お祭り気分」が演出できたことになり政府の「発信・広報」としては大成功だったと言えるだろう。

統一教会問題などで支持率が下がると、岸田政権は慌てて色々なことをやり出す。これをみているとなんとなく「岸田さんも困っているのだろうな」と視聴者は満足してしまう。その意味では、実は支持率の低下というニュースは岸田政権にとっては追い風なのかもしれない。支持率が下がっても代替野党が出てくるわけではないので政権交代は起こらない。そればかりか自民党にとっては利益誘導に有利な環境が作られる。萩生田政調会長が予算をとりやすくなるのだ。

テレビでは11月からさまざまなものが値上げされたと言っている。一般消費者にとっては苦しい冬が続きそうである。

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