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イタリアで「極右」メローニ政権が誕生するも市場は先行きをやや不安視線

イタリアでドラギ政権が崩壊したのは7月21日だった。総選挙は9月25日に行われメローニ党首率いる「イタリアの同胞」が勝利した。それから一ヶ月弱をかけてようやく大統領から組閣の依頼が行われた。既に選挙で枠組みが決まっているためイタリアの同胞・同盟・フォルツァイタリアの連立政権ができる見込みである。組閣名簿は既に大統領に提出済みだそうだ。宣誓式が22日に行われ正式に内閣が発足する。

イギリスでトラス首相が引き起こした混乱を見たばかりなので「イタリアでも混乱があるのではないか」と戦々恐々としている人も少なくないかもしれない。ただし、ドラギ首相の退任が決まってから金融市場は既に動揺していたため今のところ新しい混乱は起きていない。日経新聞は「市場は不安視している人もいる」との表現にとどめている。ただし政権内にはNATOをめぐる意見の違いもあるようで万事安泰とはまではいかないようだ。

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ドラギ政権が崩壊したのは7月21日だったとBBCが伝えている。EU圏内では第三位の経済規模でG7の加盟国なので世界経済と安全保障に与える影響は小さくない。この時点で閣内にいなかった「ポピュリズム色の強い」イタリアの同胞が躍進するのではないかと想定されていた。ドラギ首相が辞任を表明した時点で金融市場は動揺し、実際にユーロや国債先物の価格にも影響があったようだ。

トラス首相が財政政策を打ち出してからイギリス経済は大混乱に陥った。ちょっとした政策変更がサマーズ元財務長官のいう「破滅ループ」の引き金になりかねない。イタリアも大変なことになるのではないかと心配になるが、今のところは特に混乱を伝える報道はない。まだ具体的な政策が出てきていないということもあるのだろうし7月の時点である程度の混乱は織り込まれているということなのかもしれない。

メローニ氏は今のところ親NATOを全面的に打ち出しており安全保障などの路線変更は行われない見通しだ。これも金融市場にとっては安心材料だろう。

ただしやはり懸念はある。メローニ氏は組閣を指示されて「おじさんたち」を従えて会見を開いた。だが「おじさん」の一人であるベルルスコーニ氏はプーチン大統領への共感を隠さないそうだ。いかにも自己主張が強い人たちの集まりといった感じでメローニ氏が彼らをまとめ切れる保証はない。

それでもメローニ氏がセンターステージに立っていられるのは選挙でかなり優勢だったからである。ドラギ政権で閣内にいなかったことからまだ悪いイメージがついていないのだ。つまり、今後の政権運営で国民に不人気な意思決定をした瞬間に国民から離反される可能性がある。すると背後にいたおじさんたちがセンターポジションを狙いに来るかもしれないと言う状況になっている。

イタリア国民は既に政治にはあまり期待しておらず総選挙の投票率は63.82%と劇的に低かったとBBCが書いている。この2/3の人たちからは一番人気だったイタリアの同胞だがシチリア島などの南部は特に投票率が低かったそうだ。二番・三番人気は今回政権に入らないイタリア民主党と五つ星運動なので実は選挙戦略で成功しただけで国民からの圧倒的支持を得たわけではない。イタリアではあらかじめ連立の枠組みを示して総選挙に臨んだ政党が有利になる仕組みがあるようだ。イタリア民主党はこれができなかった。

選挙のために作られた枠組みであり連立相手はあまり国民からの支持が高くない政党ばかりである。何らかの理由で有権者がメローニ氏から離反すればたちまち政権が崩壊しかねないという危ない状態での船出となる。

既に閣僚名簿は大統領に提出済みで今後具体的な政策作りに入る。日経新聞は「財政拡大路線も打ち出しており、市場ではポピュリズム(大衆迎合主義)色の濃い新政権の政策を不安視する声が少なくない」とまとめている。イギリスのトラスショックを経験したばかりであり「またひと騒動あるのではないか」と身構える気持ちもわからなくなはい。

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