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中国との経済切り離しがアメリカ経済に与えた影響と今後の展望

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先日中国について書いた。一旦「おそらくデカップリング(米中切り離し)とインフレの影響は政治的には語られないだろう」と書いてから一応関連記事を探してみた。アメリカではあまりでカップリングのことは語られないのだが、日経新聞を検索すると簡単に記事が二つも見つかった。どうやら既に日本では影響が指摘されていたようだ。

だがこの二つの記事のうち1つは面白いことを書いている。金融政策をやりすぎると「日本化」が進むだろうというのだ。資産バブルが崩壊した結果経済成長が止まった日本と同じようなことが他の先進国でも起こるかもしれないという見立てになっている。

つまり冬の後に春は来ないということになる。

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一つ目の記事は40年ぶりインフレ時代突入、重なった4つの構造変化だ。2022年7月ごろの記事である。ちょうど「嵐が来る」などと言われていた時期に重なる。今でこそ「インフレ退治は日本を除く先進国のトッププライオリティ」などと言われているが、実はそんな予測が始まってからまだ数ヶ月しか経っていない。

記事は、まず「低インフレ・安定成長の時代には戻らないだろう」という予測から始まる。その前の安定時代を「グレートモデレーション(大安定)時代」と呼ぶそうだ。

グレートモデレーション時代は「流動性が縮小する時代」だったという記述は少し意外だった。リーマンショックで拡大しているような印象があったのだが実際に「急膨張」したのはコロナ禍に入ってからなのだそうだ。これがインフレを呼び起こす原因になった。

もう一つの原因はエネルギー価格の高騰だ。この高騰はいわば政治的な失敗の産物だ。今回の高騰の前に省エネルギー政策と原油増産が原因で原油価格が下落していた。アメリカでシェールオイルの発掘方法が開発されたことなども原因になっている、安い原油が買えることでアメリカの物価は安定していた。ところがこれはウクライナ危機で反転した。OPEC+は「売れるうちに高値で売っておこう」と考えるようになりサウジアラビアとアメリカの間には今でも政治的な緊張がある。

三番目と四番目が中国ファクターだ。政治的な意図と人口動態の変化による影響という二つの問題がある。

まず三番目の原因は「グローバル化の反転」だ。トランプ政権下において中国との貿易戦争という文脈で関税を引き上げたことなどが要因として挙げられている。この三番目の原因がデカップリングの影響ということになるが政治的な意志ということになるだろう。

ただし中国ファクターはこれだけではない。中国を中心とした安い労働力が消えかけている。中国が豊かになり賃金が上昇しているのだ。また少子高齢化が始まっており中国が豊富な格安労働力を提供するということはもはやないだろう。

日本との影響で言えばドン高が起きておりベトナムから労働力が調達しにくくなっている。円安ドン高で20%円の魅力が減価した上にベトナムの賃金も上昇しているそうだ。英語も通じないためフィリピン人も日本にはこない。これは日本でも「賃金上昇圧力」になるだろう。黒田日銀総裁は「インフレの影響は海外要因であり一時的」と分析しているのだが、実は地方経済には大きなインフレ圧力がかかっておりその影響は過小評価されている。

現在流動性は再び縮小しつつある。石油価格の上昇もそのうち整理されて落ち着くかもしれない。ところがこの中国ファクターはおそらくおさまらないだろう。

この記事だけを読むと「そうかインフレはそのまま続くのか」ということになる。ところがもう一つの記事には違うことが書いてある。それが「米欧のインフレ、行く末は日本化か 停滞リスク拭えず」である。やはり同じ7月の記事である。

バイデン大統領は目の前の選挙に熱中し国内のインフレに対してまともな分析を行っていないようだ。さらに他の先進国に比べてアメリカの政策はうまくいっていると考えており自己肯定感が過剰である。すると中央銀行は独力で経済を弱らせるしかない。暴れる動物を取り押さえて首を絞めて大人しくさせるようなことになる。経済がおとなしくなればいいがそのまま弱ってしまう可能性もある。

二番目の記事の現状認識は一番目の記事と同じである。アメリカもヨーロッパも低インフレの時代は終わったとしてインフレ対策に躍起になっていると書いてある。ところが世界経済にはリーマンショックの後に訪れた「低成長」という別の要因が隠れていると言っている。先進国が経済の冬を予想すると過剰な貯蓄を保持し投資が減退する傾向にあるという。これが先行して起きているのが日本だ。

アメリカはグレートモデレーションがインフレに切り替わるタイミングの見極めに失敗した。今度は逆に過剰なインフレへの恐怖心が続き「ブレーキを効かせすぎるのではないか」というのがこちらの記事の予測である。

バイデン大統領は積極的すぎるマネー供給でインフレの原因を作り世界経済を巻き添えにしながらそれをおさめようとしている。そしてアイスクリームを食べながら「他の国には政策がないからドル高も当然」と涼しい顔をしているのである。だが「冬や嵐はいつかは去るだろう」という見込みがあるのだろうが日本のケースを見ていると「必ずしも冬の後に春が来るかどうかはわからない」ことになりそうだ。失われた世代は経済に対して悲観的な見込みを長年持ち続ける。つまり影響も長く持続する。

原油と食料を海外に頼る日本は貿易的には赤字が定着した国である。これを海外からの利子収入などで補ってきた。だから海外からの利子収入だ滞れば赤字に転落する。つまり海外の不調が直接日本の国家収支に影響する構造になっている。世界景気の減速を受けて、現在の経常収支が赤字スレスレという領域に落ち込んでいるが日経新聞の表現を借りれば「貿易や投資などの海外との取引状況を表す経常収支は589億円の黒字だった。黒字額は前年同月から96.1%減り、8月としては比較可能な1985年以降で最小となった。」ということになる。

中国やロシアが自由主義経済に組み込まれて民主化するだろうという期待は裏切られた。そのために基本的な構造が冷戦末期(グローバル化前)に戻りつつあるようだ。これが32年ぶりの円安とか40年ぶりの物価高などと呼ばれる現象を作り出しているのかもしれないと思う。我々は意外とグローバル化の恩恵を受けていたのである。

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