ざっくり解説 時々深掘り

この冬は「コロナもインフルエンザも家で寝ててくれ」になりそうだ

「コロナの流行が落ち着いたらコロナを<普通の病気>にするための検討を始める」などとニュースで聞いていたのになあと思った。いわゆる2類相当を5類にするという議論である。ところが実際には反対側の議論が進んでいるようだ。インフルエンザの患者もオンライン診断にしてくれという話になりつつあるようなのだ。政権に近い印象がある読売新聞も「コロナ・インフル同時流行、難題だらけ…患者自らリスク判断・オンライン診療しづらく」と書いており、おそらくこの提案がそのまま通ることもないのだろうが念のために現在の厚労省の提案は把握しておいたほうが良さそうだ。

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共同通信が「インフルエンザにネット診療活用 政府、コロナ同時流行対策」と短く伝えている。河野大臣のマイナンバーカードのニュースよりも当然ながら大きく扱われていた。

共同通信の記事を要約すると次のようになる。

  • 冬に新型コロナとインフルエンザが同時に流行する可能性がある。
  • ピーク時に75万人の患者が発生したと仮定すると医療機関の逼迫が予想される。
  • 高齢者らに優先して医療を提供するために新型コロナ検査キットやインフルエンザのオンライン診療を活用してほしい。

政府はこれを「先手先手の準備」といっている。発熱外来を温存するために「誰でも病院を受診できる」という国民皆保険制度の精神を犠牲にしているのだがおそらくそれには気がついていないだろう。これまで同じようなメンバーで検討を重ねているうちにだんだん周りが見えなくなる「集団思考」の状態に入っているものと思われる。ここは読売新聞のように政権に近いメディアにダメ出ししてもらうしかなさそうである。朝日新聞や東京新聞では政権はいうことを聞いてくれないだろう。

時事通信はもう少し細かな図解を載せている。高齢者と子どもを優先する案を出したと書かれている。つまり「若者はどうせ大したことにはならないから家で寝ていろ」ということになるだろう。

ただし厚生労働省はこれを強制するとは絶対に言わない。単に75万人分の体制を作らないといっているだけで、加藤厚生労働大臣は「あとは皆さんの協力次第だ」と表現する。また最終的に判断するのは都道府県などの地方自治体だ。厚生労働省は提案してお願いするだけで「決めるのは都道府県ですよ」ということになる。

冒頭で触れた2類相当から5類への議論について岸田総理は触れなくなってしまったようだ。検討使というあだ名の通り「議論を進める」といっているが結論は出そうにない。「首相、コロナ感染症法上の分類緩和明言避ける」と産経新聞が書いている。医師会も議論しているようだが「国民の理解が必要」として結論を出すのを避けている。国のトップリーダーが国民世論に訴えかける通路がなくなっているのだが制度は守る必要がある。すると「若者は医者に来ないでくれ」と「自粛を要請する」ことが唯一の選択肢になってしまうのだ。

時事通信の記事によると厚生労働省は新型コロナの患者が1日に45万人出てインフル患者は30万人程度出るという予想をしているそうだ。このところ間違いが指摘されることが多くなったために何度もニュースを見直したのだがやはり何度見ても「1日あたり75万人」である。これを自己判断し「重症化しそうなら適切な窓口を自分で選べ」ということになる。

もうこうなると政府に対する文句しか出てこない。だが、一応自分が発熱した時の流れは確認しておいたほうがよさそうだ。熱が出たら苦しむのは自分であり家族だ。

  • まず自分が「重症化リスクが低いかどうか」を知っておく必要がある。持病のある人はあらかじめ主治医に聞いておいたほうが良さそうである。
  • 熱が出た場合はまず自分で新型コロナの診断キットを申し込む。つまりどうやって申し込むかは事前に調べておいたほうがいいだろう。
  • 陽性の場合は自治体の指示に従うことになる。これも流れは事前に確認しておいたほうがいい。
  • 陰性の場合はおそらく他の病気なので(もっともインフルエンザとは限らないのだが)オンライン診療を受けて治療薬を郵送してもらう。実際に「どの病院がオンラインに対応しているのか」と考えてみたのだが「よくわからない」と思った。この時点で市役所などに確認してもおそらくわからないと言われるのではないかと思う。その場合はよくわからないまま寝ていることになる。二、三日して熱が下がったらラッキーということになるだろう。

もっともこうした提案がそのまま採用されることはないだろう。全国知事会などで「押し返し」が起こるのはいつものことである。

岸田政権の支持率はついに危険水域と呼ばれる30%を切った。だが、直近に選挙もなくこれといった野党もないという状態だ。つまり、国民は政権を支持しているわけではないがかといって代わりを託すことができる代替手段も持ち合わせていない。自民党・維新の支持率は若干上がり、立憲民主党の支持率は少し落ちているがいずれも誤差の範囲といったところである。支持政党なしが58.9%となっており「政治を信頼しない」人が最大会派だ。

こうなると政権は「支持率が下がってもどうせ政権は変わらない」という妙な安心感を持つだろう。ワイドショーなどで騒ぎになれば少々は軌道修正されるだろうが「自己責任の冬」の到来は覚悟しておいたほうが良いのかもしれない。ワイドショーも、円安・物価高やミサイル・核など「扱うべきニュース」はいくらでもある。新しい流行が始まるまではなかなかコロナにまで時間が割けないかもしれない。

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