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「このままでは第三次世界大戦」だ「いやこれはアルマゲドンだ」

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何者かによって橋を爆破され面子を潰されたプーチン大統領が報復に出た。民間人に対する無差別の攻撃であり国際法と現在の国際秩序に対する真っ向からの挑戦状である。国際社会はこの暴挙を止めることができておらず、現在の国連中心の体制が機能不全に陥っていることがわかる。

そんな中、アメリカ合衆国で言論合戦がエスカレートしている。「このままでは第三次世界大戦だ」とか「これはアルマゲドンだ」という言論が聞かれる。情報を発信しているのは大統領選挙の候補者たちで一方の当事者は現職である。目の前の選挙戦に夢中になっていることがわかる。国際的には一種の空白状態となっており北朝鮮やイランが核開発を進めるには好都合な展開になっている。

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トランプ氏はアリゾナ州で行われた集会で「無能な民主党政権のせいでこのままでは第三次世界大戦が起こる」と主張した。まだ正式な立候補はしていないと思うのだが自身の大統領選挙に向けたアピールだと思われる。アメリカは「偉そうな」民主党に一矢報いたいと考えている人が多く主張が極端であればあるほど盛り上がる。ただし集まった人たちは実際の戦争当事者たちがどのような悲惨な目に合っているかについてはあまり深くは考えていないのではないかと思う。集会の様子はYouTube(トランプ氏「第3次大戦も」【WBS】(2022年10月10日))で見ることができる。

ただ盛り上がっているのはトランプ陣営だけではない。バイデン大統領も世界は今未曾有の危機にあるのだから民主党に投票せよと言っている。バイデン氏、核兵器による「アルマゲドン」のリスクは「キューバ危機以来」とBBCが伝えていた。CNNによればこれは資金集め集会におけるオフカメラでの発言だったようだが後にホワイトハウスが「新しい情報に基づいた大統領のコメントではない」と否定する騒ぎになっている。

プライベートな集会でお金を集めるためには多少乱暴なことを言っても構わないという雰囲気があるのだろう。ただ行政の責任者として「危機が高まっているからアメリカはこう準備している」と言っているわけではなく「今は大変だからもっと募金してください」というメッセージになっているのだから、部下の高官たちが慌てて火消しに走るのは当たり前といえる。とても正常な最終意思決定ができるようには思えないからだ。おそらく重要な意思決定は選挙が終わるまで先延ばしになっていることだろう。

アメリカでは議会選挙・知事選挙などをまとめた中間選挙が11月に迫っており各陣営ともある種の興奮状態にある。このため全ての問題は選挙と関係付けられており国際社会は一種の空白状態に入っている。トランプ氏の発言はいつも通りという感じだが、バイデン大統領の興奮したコメントは彼が選挙の興奮の中でパースペクティブ(現実感)を失いつつあるということを示しているようだ。

おそらくこんな状況を最も歓迎しているのは北朝鮮だろう。欧米・中露が対立してくれているおかげで核実験に対する制裁はなさそうだ。最近はグアムに届くようなミサイルを立て続けに発射しており、ついには核実験についても仄めかし始めた。「私たちも核を持っていることをお忘れなく」というわけである。イランでも核合意復帰は望み薄だ。こちらはIAEAの監視ができなくなっており「今どうなっているのか」がよくわからない。

既にクリミア橋の爆破のエントリーで伝えたように現在は「情報戦」の最中だ。つまり不確実性が増しており不測の事態が起こりかねない。

  • ロシアは大規模な報復を行ないヨーロッパに対して「支援を続ければこちらも容赦しない」と恫喝している。ただし内情はかなり厳しいようで「大規模報復のふり」と書いているメディアもある。国内の主戦派やテレビ視聴者たちを納得させるためのものと言ってよさそうだ。
  • 一方で「ロシアの内部にもプーチン大統領を狙っているものがいる」と示すことで内部からの体制崩壊を目指す試みもあるようだ。実際にそういう動きがなくても「疑念」を生じさせるだけで十分だろう。もともと諜報活動家だったプーチン大統領には一定の効果があるはずだ。

では現実はどうなっているのか。プーチン大統領は面子を潰されて怒っているが選択肢は限られているため大規模な報復は行えそうにない。だが実はアメリカ側も弾薬の供給が追いついていないそうだ。予想していたより多くの弾薬が供給されており枯渇も心配されている。こちらはロシア側が動揺を誘おうとしているわけではなくアメリカのシンクタンクの試算に基づいている。

アメリカでは選挙戦の一環として「まるでビデオゲームに興奮するように」戦争を見ている人がいる。だがこれはビデオゲームなどではない。一般市民が無差別に狙い撃ちされ訓練も装備もない予備役が何のために戦っているのかよくわからないままに犠牲になっている。さらにいつまで支援が継続できるかには疑念が生じ始めている。

おそらく数ヶ月前までは「具体的な核戦争のシナリオ」など誰も怖くて書けなかっただろうが現在は「上から下まで勝負に夢中」のため、一般の通信社も「プーチン氏の核兵器使用で想定されるシナリオ(時事通信)」などという物騒な記事を出すようになった。しばらくはこの状態が続きそうである。

「ロシアが核兵器を使用すれば、これまで制裁に消極的だった国々、例えばインドやおそらく中国さえもが、制裁強化に加わるきっかけになるかもしれない」とクローニグ氏は言う。

プーチン氏の核兵器使用で想定されるシナリオ(時事通信)

聞き方によっては「ロシアの側から一線を越えてくれればこちらも容赦なく叩けるのに」と言っているように聞こえる。犠牲になるのは自分達ではなく他の誰かだという「冷徹な」判断のもとにこのような分析をしているのだろうが「無責任だ」とも思える。実際に使用されれば何が起こるのかを十分にできるにもかかわらず「頭に血がのぼる」と冷静な判断ができなくなってしまうのである。時事通信は小規模核であっても広島・長崎よりも大きなものも含まれていると書いている。

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