ドイツの土曜日の朝は大混乱だった。なんらかの技術的理由で鉄道が止まり午前11時まで解消されなかった。時事通信はドイツ北部で鉄道網が一時まひ 「破壊工作」原因か、当局捜査と伝えている。
破壊工作とは穏やかではない。時期が時期だけに「敵対している外国が関与しているのではないか」などと思いたくなる。大方の見方は「怠業」のようだがやはり「何者かがドイツのインフラを破壊しようとしているのではないか」という疑いも消えていないようだ。
2021年のドイツではストが横行していた。2021年9月の東洋経済の記事が見つかった。ドイツ鉄道スト、「労組間の勢力争い」の深刻度と書かれている。長距離列車がキャンセルされてもローカル列車を乗り継げばなんとかなるようだが鉄道に詳しい人でないと「もう鉄道は使わない」となりかねないような事態だ。
フランス24によるとドイツの鉄道はたびたび遅延が問題になっていたそうだ。また市場の自由化を進めたためバスとの競争が激しくなり、また高速鉄道の導入によりダイヤが複雑化しているもののインフラ整備が追いついていないという事情があるという。高速鉄道と在来線がほぼ分離されている日本と違いドイツでは国際列車も含めた複雑な路線構成になっている。
ただし鉄道には「環境にやさしい」というイメージがある。現在のドイツは左派+自由民主党という政権のため鉄道優遇策が推進されるはずだった。中でも9ユーロチケット(1300円で1ヶ月乗り放題)の効果は大きく交通渋滞の緩和効果もあったと言われている。燃料費が高騰すれば当然エネルギー効率がいい公共交通機関(特に鉄道)へのシフトはドイツ全体の経済に良い影響をもたらすはずだった。2022年には目立ったストもなかったようだ。
ところがこの9ユーロチケットの財源探しで自由民主党との調整ができず調整が難航していた。ウクライナの戦争による燃料費の高騰やインフレ対策に税金を回す必要もあり結局政策は継続できなかった。
さらにインフラ整備が進まないまま需要だけが増えれば鉄道輸送はさらに圧迫されることになる。夏にはライン川が干上がるという想定外の事件までおきたため鉄道輸送は「キャパいっぱい」のところまで来ていたようである。
今回の件についてポリティコによるとフォルカー・ヴィッシング運輸大臣は次のように発表した。
- ハンブルグ、シュレースヴィヒ ホルシュタイン、ニーダー ザクセン、ブレーメンの北西部の州の長距離列車、地方列車、貨物列車のサービスが影響を受けた。
- 影響は3時間に及んだが現在は復旧済み。
- 原因は重要な通信ケーブルが二箇所破壊。
- 犯人は特定されておらず背景情報の発表もなかった。
重要なケーブルが効率的に破壊されていることから内部に詳しいものの犯行と思われるのだが犯人や背景情報についてはよくわかっていない。二箇所であることから個人が思いつきでやったのではなさそうだ。だが、今回の事件は英語では「サボタージュ」と表現されている。日本語では「スト」の意味で使われることが多いが怠業行為全般をさす言葉だ。つまり「テロ」ではなく怠業行為の一環として見られていることがわかる。
破壊活動は特定箇所を修復すれば回復するため鉄道システム全般の回復にはさほど時間はかからない。だが鉄道の運行には大きな影響が出る。そんな壊され方になっている。
ただしドイチェ・ベレの記事は最後にこう結んでいる。ノルドストリームが何者かに破壊されたあとなのでインフラの破壊活動が起こるかもしれないとNATOとEUが警告していた。つまり「特定の外国の関与」は否定できないということだ。フランス24も同様の指摘をしており現在のヨーロッパ(特にドイツ)の緊張がよくわかるまとめ方になっている。
However, the latest disruption comes after reported acts of sabotage targeting the vital Nord Stream gas pipeline last month, which prompted NATO and the European Union to sound the alarm on protecting critical infrastructure.
Sabotage cause of massive train disruption in northern Germany, rail operator says
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