ざっくり解説 時々深掘り

盗んだ他人の土地に「核兵器の鍵」をかけるプーチン大統領

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イギリスタイムス紙の報道がちょっとした騒ぎを引き起こしている。ロシアがウクライナとの国境で核兵器実験をしているというのである。いよいよロシアがやけになってNATOを攻めるのか、あるいはカディロフ首長が考えるように立てこもりに使うのかなどなど不安は尽きないのでこれについて調べてみることにした。

西側は「使う」という選択肢を盛んに心配しているがロシアは「核兵器の別の使用目的」を想定しているのではないかと思う。日本語でわかりやすく例えると「お守り」である。核兵器で結界を作ろうとしていると表現してもいい。ある意味極めて呪術的な核の利用方法だが実際には効果が出る。

もちろん、この結論は新聞報道から得られた意見ではなくあくまでも個人の感想だ。最初にお断りしておく。今後、テレビでいろいろな専門家の意見が聞けるはずなのであくまでも準備運動程度に目を通していただきたい。

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まず日本の報道を見てみよう。

イギリス・タイムス紙がなんらかの報道をしてそれをロシア側が否定したという組み合わせである。アメリカは「報道は知っているが自分達の態度(行動指針)は変わらない」と言っている。NATOも同じ立場だ。

イギリス・タイムス紙は一応無料で読むことができた。ただし購読してくださいというお知らせが出てくる。この報道には二次報道に書かれていない情報がある。それが情報源のKonrad Muzykaという名前と彼が根拠にしている「ロシア国防省第十二総局とつながっているロシア中央部で発見された列車」である。興味深いことに情報ソースはTwitterで公開されており誰も簡単に見ることができる。Muzyka氏のTwitterでは12 GUMO relatedと表現されている。列車に特別の防衛装置が付けられており12 GUMO特有のものなのだそうだ。

12 GUMOとはロシアで核防衛を担うThe 12th Chief (or “Main”) Directorate of the Ministry of Defenseの意味のようだ。これが今回の報道の根拠になっているということがわかる。これに関して日本側の識者のコメントをTwitterで読んだが「テレビでお話しします」か「非常に説明しにくい」となっている。複雑である上に「今最も売れるテーマ」なのであろう。今後彼らの分析が盛んにテレビで取り上げられるはずである。

なぜか妙にロシアと核兵器に詳しい丸の内のOLによると次のようになる。このOLさんはプロフィールによると餃子がつくと機嫌が良くなるようだ。

つまり、ロシアが核兵器を仄めかしたり実際に使って見せたりするのはバックダウン(引き退らせるという意味なのだろう)のためだと言っている。日本語的な表現をすると核兵器をお守りがわりにして「ここには入ってくるな」と主張するということだ。このアカウントには核演習をやるという話も出てくるが「実際に核をつかった実験をやる」とは書いていない。

最初にこのニュースを聞いたときには立てこもり型というこれまでにはない発想で低出力核を使おうとしているのではないかと考えた。「立てこもり型の小型核兵器の使用」というのは日本人にはなかなかない発想である。日本は国土が狭く放射能で汚染された区域には人が住めなくなる。代わりに四方を海で囲まれておりわざわざ新しい干渉地域を作る必要はない。一方で大陸国家のロシアにはそのような海はなく「自分で作り出す」必要がある。核兵器で汚染されれば人は住めなくなる。

ただしペスコフ報道官はカディロフ首長がいうような「ゲリラ的」な小型核の使用は否定した上で「これまでのドクトリンに従って」配置すると言っている。これは旧来型の「抑止のための使わない核兵器配置」である。だがこの旧来のドクトリンもアメリカや西側が考えるものとは少し違っている。西側は常に自分達の気に入らない体制を潰そうとしておりそれを守る最も確実な呪符が核兵器なのであるといういわば核兵器信仰のようなものになっているのではないかと思う。

ところが実際にはこの呪符が効いてしまう。アメリカはレッドラインを設定できないからだ。例えばウクライナで低出力核を使った場合にアメリカは容赦しませんよと発言したとする。これが実行できればいいのだが(容赦しないとはいよいよアメリカが参入するということを意味する)議会の承認が得られないと「結局アメリカは何もできなかった」ということになってしまう。民主主義の制約がありレッドラインが設定できないのだ。

いくつかのTwitterを読むと「オバマ大統領がシリアで化学兵器の使用がレッドラインになる」と発言したものの結局シリアに参戦しなかった例について言及している人がいた。産経新聞の「「レッドライン=化学兵器使用」で対応分かれたオバマ米前政権とトランプ氏 「力の空白」埋めたイスラム国」によると力の空白が生まれたとされるトラウマに富んだ出来事だったようだ。結局、このために化学兵器の使用をアメリカが容認したことになってしまったのだ。

こうなるとアメリカは「非難するだけで行動指針を示せない」ということになる。このことは日本にとって極めて重要である。北朝鮮の核実験とリンクしているからである。

ロイターの「北朝鮮、ロシアの併合宣言を支持 米を「二重基準」と非難で北朝鮮はアメリカを次のような言葉で非難している。

「米国は旧ユーゴスラビア、アフガニスタン、イラクなどの主権国家に侵略戦争を仕掛けたが、安保理から問題視されたことはない」と述べ、安保理が米国の「高圧的かつ恣意的な慣行や不公平な二重基準」に従えば、報いを受けることになると警告した。

北朝鮮、ロシアの併合宣言を支持 米を「二重基準」と非難

ロシアと北朝鮮は「核兵器がないからこれらの主権国家は侵略された」から「我々は核兵器に依存するしかないのだ」というメッセージを受け取ったことになる。北朝鮮にとっても核兵器の保有が唯一のお守りになっている。単に持っているだけではダメで常に使い続けなければならない。

この文章の目的は「だからアメリカの戦略が間違っていた」と主張することではない。アメリカにはアメリカの事情があることは理解できるからだ。

我々は「核兵器を準備しているということは使うということなのではないか」と考えてしまうのだが、これらの諸状況から判断すると専制主義の国は常に体制転覆に対する潜在的な怯えを持っており「何かお守り代わり」になるものを探しているのかもしれないと思う。

では何がお守りを生み出したのか。アメリカもまた広島・長崎の記憶(一度使ったら壊滅的な被害が出る)に縛られている。アメリカにとっては日本との戦争を終わらせた成功体験だが同時にトラウマにもなっているのだろう。あの絵はアメリカでも広く知られている。広島や長崎をシカゴやニューヨークに置き換えて考えるのはそれほど難しくはない。だから、核兵器の使用を仄めかされると手出しができなくなってしまうのだ。

いまだに呪術的かつ非論理的な世界から抜け出せないこと是非についてはここでは考えないが、これは国連機能が不全になる中で「核兵器が前提となった安全保障の世界」に入ったことを意味している。国連のような協力を前提にした安全保障体制ではなく「一つ間違えれば世界が破滅するかもしれない恐怖心」だけが全面戦争の抑止になっているという世界だ。日本は北朝鮮と対峙しており恐怖のよる抑止の最前線にいる。

核兵器がお守りだと書いたのにはもう一つ理由がある。お守りにはそれが実際起きた時のことを考えないで済むという効果がある。つまり、実際にそれが使われた時のことを考えていない人が核兵器を持っているということである。実際に使われてエスカレーションした場合その結末を予想できる人は誰もいないということがわかる。

ロシアは一方的な侵略により他国の領土を盗んだと言って良い。その土地を守るために20万人とも言える国民を使い捨てのコマとして利用した。逃げ出した人の数は一般的には20万人程度と言われているが70万人が逃げたと推計するメディアもある。盗んだ土地でも徴兵が開始されるという情報もある。ロシアの言い分では「ロシア国内に配置されるだけ」になる。さらにその土地に核兵器を持ち込み鍵をかけたうえで「入ってきたらいつでもぶっ放す準備がある」といって脅している。

ただこの人は実際にぶっ放したら何が起こるかについては考えていないのではない可能性もある。

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