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トラス政権が所得税減税政策を撤回:BBCのこの一週間あまりの報道を軽くおさらい

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トラス政権のクワーディング財務大臣が減税政策の一部を撤回した。ポンドはやや値を戻しそれにつれて円も若干戻したそうだ。トラス政権にとっては大きな失点になったが失敗したものをそのままにしておくよりは傷が浅くすんだのかもしれない。BBCの一連の報道を軽くおさらいしよう。

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トラス政権のクワジ・クワーテング財務相が「ミニバジェット」と呼ばれる政策を発表したのは9月24日だった。英ポンドが大幅下落、トラス新政権の減税政策に懸念によると富裕層への減税と借金を組み合わせた内容で、サマーズ元財務長官などは「新興国が自ら没落してゆくようだ」などと批判していた。

この政策が何を狙ったものかはわからない。IMFがイギリスの減税政策に警告 「不平等を加速させる」に不平等だと書かれているように、インフレは貧困層や低所得者層に多くのデメリットをもたらす一方で富裕層減税で恩恵を受けるのは高所得者である。この間をつなぐのが「お金持ちが優遇されればその成果が滴り落ちてみんなが潤う」というトリクルダウンだが、実際のそんなことが起こる保証はない。これが「新興国のような」と評された理由だろう。なお45%の対象者は「15万ポンド」以上だが日本円では2400万円程度になるようだ。

英イングランド銀が市場介入、国債購入へ 現状は英財政の安定に「リスク」によるとこの後イングランド銀行が国際購入を行い金利の引き下げを狙ったことから「イギリスの金融政策がどこに向かっているのかがわからない」ということになりパニックだと表現されるようになった。これが9月29日のことだった。

トラス首相は党大会を控えていた。このため地方のラジオに出演し「丁寧な説明」を心がけたが「あんた恥ずかしくないのか?」と突っ込まれる始末だったとトラス英首相、BBCの地方ラジオ各局に出演 減税策に厳しい質問相次ぐで紹介されている。この一週間は針の筵だったようだ。

英財務相、減税政策で「Uターン」 45%の所得税率の撤廃案を撤回によると結局10月3日にクワーディング財務大臣は方針を撤回し所得税の最高税率を45%から40%に引き下げる案を撤回した。

確かに「恥ずかしいこと」ではあるのだが、トリプル安と呼ばれる混乱を招いた以上一時撤退するのは間違った判断ではないと思う。

BBCは撤回されてそれで終わりとはしていない。トラス首相の発言をチェックし今後の影響についても短くまとめている。トラス英首相の発言をファクトチェック BBC番組で減税政策を擁護に詳しく書かれている。

記事は政権から独立している予算責任局(OBR)の経済見通しを同時に公表しなかったことが市場の疑心暗鬼をもたらしたと指摘している。トラス首相やクワーディング財務大臣が言っていることが正しいものなのかを判断できなかったということだ。

いずれにせよイギリスの借入コストは大きく上昇した。この借入コストがまた引き下がるかどうかはわからない。つまりこれから住宅を購入しようという人やスモールビジネスオーナーにかなり深刻なダメージを与えている可能性がある。BBCはこれまでの借入コスト上昇について書いているがロイターは英企業の借入コストが急騰、中銀の国債買い入れ後も高止まりかと書いている。

つまりトラス首相の政策はお金が回る国を作るどころか資金調達が難しくなり国にお金が回らない状況を作り出してしまったと言える。

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