国主導の「全国旅行支援」が混乱し岸田政権の支持率が低迷する割と簡単な理由

国が10月11日から始める予定にしていた「全国旅行支援」が混乱しているようだ。小池東京都知事は国からの連絡が遅れたため期日に始めることができないと苦言を呈した。

このような話が出ると「誰が悪いのか」と言う話になりがちだが割と簡単な構造的理由がある。それが統治機構改革と広報戦略飲み直しだ。

統治機構改革の抜本的解決は難しいのだが広報戦略の練り直しは明日からでもできる。民間ならできているはずの「簡単なこと」が疎かになっているため、政権は起死回生の策を打ち出せないでいるということになる。






国が「全国旅行支援」を始める理由は簡単だ。国葬問題・統一教会問題で支持率が低迷している。ここは「コロナ明け」を演出し空気を入れ替えたいのだろう。斉藤大臣は「できれば平日に行ってくださいね」と旅行換気需要策を遠慮がちに積極的に宣伝した。ただし観光業会からの期待は高かったようで、9月20日に発表がなかったときにはわざわざ「発表がなかった」と記事にする業界団体もあったようである。

狙い通りテレビでは「おトクな秋が始まる」とこの話題に食いついた。TBSは「半額以下も!?旅のスペシャリストが教える「全国旅行支援」のもっとお得な“裏ワザ”【ひるおび】」と伝えたそうだ。「お得」に弱いワイドショーの視聴者が何で動くかを「ひるおび」はよく知っていたということになる。

つまり国会日程がありそれに合わせた形でキャンペーンがやりたい。ところがコロナの感染者数は日々増減を繰り返す。このため裏方の準備が間に合わなくなっている。小池都知事は「実務的にですね。クーポンを刷ったりすると有価証券になるわけで、コピー機で刷るわけにいきません」とできない理由を端的に説明している。

おっしゃる通りですというしかない。

国が権限と財源を持ち地方はそれに従うだけと言う構図がある。岸田政権は「国がこれだけやってあげた」と宣伝できるわけだから積極的に利用したい。ところが地方は単に振り回されるだけになってしまう。そこで意識に乖離が生まれる。すると業界からは「もっと事前に仕込みができないのか」と文句が出てしまう。今回は都道府県ごとに政策が違うこともあり「さらに混乱するのでは?」という予測もあるとヤフーニュースのコメント欄には書かれている。

つまりこれは統治機構の問題であると言えるだろう。

旅行業界の方には批判されそうだが「単に旅行の話だ」ともいえそうだ。だが混乱が起きているのはここだけではない。実はオミクロン対応ワクチンの接種が始まっている。12歳以上の人は全て接種ができる。

横浜市は2022年9月27日にこんな広報を出している。横浜市だけでなく各地方自治体に通達が出ているのだが「知らなかった」という人もいるのではないだろうか。実は9月末から政府のワクチン接種方針が変わっている。

  • 4回目接種の接種対象者(オミクロン株対応ワクチン接種の場合):3回目接種を完了した日から5か月以上経過している、横浜市に住民登録のある12歳以上の方
  • 4回目接種の接種対象者(従来ワクチン接種の場合):3回目接種を完了した日から5か月以上経過している、横浜市に住民登録のある次に該当する方(次とは60歳以上、基礎疾患がある、医療従事者や高齢者施設などの従事者)

かなり場当たり的に各種通達が出ているため地方自治体としても「お知らせすることはお知らせしましたよ」として積極的に広報していないようだ。そもそも国がワクチンを接種して欲しいのかそうでないのかもわからない。ただ準備が遅れると「国のワクチン調達が遅かった」とか「地方は何をやっている」と言われかねない。「クレームに備えて文句を言われないように対応する」という状態が続いている。

今までは「何とか無事に動いてくれれば特に政治に関心がない」という人が多かった。ところがコロナ対応では「いったい国は我々にどうしろというのだ?」という事例が増えている。状況が180度転換してしまったため安倍政権末期、菅政権と混乱が続いた。そして岸田政権も同じ「罠」にはまっている。冷静に分析すると実に簡単な話である。

ここまで考えてくると「統治機構改革待ったなし!」という文章を書きたくなる。だが、今までもできていないのだから、おそらくいつまで経っても結果は出てこないだろう。

都道府県と国が関与するすべての住民サービスが変化に追いつかなくなっている。どこまでを全国一律にしてどこからを地方に任せるのかがよくわからなくなっているからだ。国と地方との関係を整理しない限りいつまでも「誰が悪い」と言う話ばかりが出てくることになりかねない。

ただ、今回の問題は構造が簡単なので解決も実は簡単である。「政権にとってのメリット」を説明しそれが「有権者のベネフット」に合致していると示せばいいだけの話なのだ。

  • 岸田政権としてはコロナで閉塞した気分を明るくするため旅行需要を喚起したいと思っていますと説明。つまりは政権側にもメリットがあることを正直に伝える。
  • これまで我慢していた分だけ皆さんも旅行に行きたいでしょうし、経済が回れば旅行業界も潤いますねと説明。つまり、受け手側にもメリットがあると伝える。
  • 我々の利害は合致していますからすぐに進めたいところです。しかしながらコロナの感染状況の予測は難しく、都道府県によっても事務の進捗はまちまちですと説明。つまり制約条件を伝える。
  • そこで現在走っているプログラムの進捗状況が一覧できるようにポータルサイトを作りましたと説明。解決策を提示する。
  • 最初は不十分かもしれませんが責任者の元で鋭意より良いものに仕上げてゆきたいですと、改善の意欲と誠意を提示し「今度ともよろしくお願いします」と締めくくる。

そもそも「政権浮揚策では?」との疑惑も「皆さんの満足感が高ければ政権運営も安定するのです」と説明さえすれば済む話だ。さらに重要なのは「政府が責任を持って状況を把握しそれを伝える」と言う意思を示すことだろう。これはコロナワクチンも同じことである。政権はどうして欲しいのかがよくわからないので「打ったほうがいいのか打たなくてもいいのか」がよくわからない。そうこうしているうちに次の流行が来ると「何をやっているんだ」と言う話になってしまう。こうなるとクレームに追われ顧客の声を聞くのが嫌になる。

統治機構改革の話は進めるべきなのだろうが今の問題点は「政府が何をやりたいのか、何をやっているのかがよくわからない」と言う広報レベルの問題に過ぎない。つまり解決自体はそれほど難しいものではないのではないかと思う。民間ならどこでもやっている程度の話だ。

きめ細やかな情報提供にはオンラインとオフライン(テレビや地方自治体)の協調が必要だ。既にやっている人たちには簡単な施策だが記者クラブ経由で地上波と新聞に広報してもらうと言うワンウエイの広報をやっていればよかった時代が長く続いた。このため、なかなか新しい形の広報に発想を切り替えられないのだろうなとは思う。政府・政権の人材の問題なのかもしれない。

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