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広がる五輪汚職。大広ルートで「その先の企業名」は出てくるのか?

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東京オリンピックを巡る汚職疑惑が進展している。現在は高橋容疑者と高橋容疑者の「子分」の経営者(深見和政氏)、AOKI、KADOKAWAの経営者が逮捕されていた。今回準大手広告代理店「大広」の執行役員が逮捕されている。なぜか電通の下請けに入っていたようだ。この話はしれば知るほどモヤモヤが募る。その原因を考えたところ「高橋さんって結局何をする人であればよかったのか?」というところに行き着く。これをみんなで考えればいいだけの話なのだが不思議と誰もその話をしない。だからモヤモヤするのだ。

いずれにせよ大広の先には「ある企業」がある。産経新聞は「語学サービス系企業のスポンサー契約」としか書いていない。産経新聞は電通と大広の間の金のやりとりは書いており「サービス系企業」がスポンサー料を支払ったところまでは抑えているようだ。

この企業が高橋・深見両容疑者にオファーに応えて「コンサル料」を支払っていれば巻き込まれる可能性がある。つまりAOKIやKADOKAWAと同じ扱いになってしまう。だが、今の所そのような話にはなっていないようである。どの業界に属する企業かが分かれば特定は簡単だ。

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確かにAOKIやKADOKAWAと同列のオフィシャルパートナーを探すと有名な語学の会社が出てくる。この企業名で検索するとある媒体が書いた記事がYahooに掲載されていた。この記事には企業から大広に渡った具体的な金額が書かれているがどのようにそれを調べたのかについての記述はない。媒体は「世界の主要都市で取材した一次情報だけを発信し、変化を重ねるマーケットの今を多角的な視点から報道いたします。」としており一次情報(実際に取材した情報)だということを強調した媒体のようである。いずれにせよ記事の日付は9月6日になっていた。「その筋」では早くから知られていたのかもしれない。

媒体が一次情報だと約束してはいるものの記事だけを見ると出典不明のためこの記事を根拠にするのはためらわれる。だが、いずれにせよこの語学会社はもともと大広との間に取引があったようだ。これを「電通がかっさらう」のは良くないという業界仁義が働いたのかななどと想像してしまう。いずれにせよ「なぜこんな複雑な取引になっていたのだろうか?」という疑問は湧く。

組織委員会は電通を専任代理店に指名していた。専任代理店の主なミッションはスポンサー集めだ。つまりスポンサーは電通と交渉しなければスポンサー契約が結べなくなっていた。ところが組織委員会や電通が必要と認めれば「販売協力代理店」として再委託が結べることになった。

さてまずは「これがいいことなのか悪いことなのか」ということになる。業界的な心情からすると「あの企業はこの広告代理店のナワバリ」となっているのだからそれを奪うのは良くないという気もする。この業界の道徳をオリンピックに持ち込むべきなのかということだ。

普通の企業の事例を考えてみよう。企業は製品やサービスを売るためにお金を出してCMを作成する。主導するのは企業の宣伝広告部隊だ。広告代理店は宣伝広告部隊(マーケター)を補佐して広告計画を立案し、広告政策を行い、広告の実運用(テレビにCMを流したり雑誌に広告を載せたりする)を行う。

役割は明確だ。ところがテレビ時代になるとこれが歪む。「独占」という概念が出てくるからである。この「独占」が今回のキーワードになる。

日本にはキー局と呼ばれるテレビ局は数が限られておりその枠を抑えなければならないという時代が続いた。独占ではなく寡占と呼ばれる。電通はこの枠を抑えることで広告大手としての地位を不動のものとした。テレビ局は利権だがデパートのような「場所貸し」であり実際の番組は電通・博報堂など一部の広告代理店が組織した事業体が運営することも多い。スポンサー企業なしにはコンテンツが作れない。これが思いつきを形にできるネットや思い思いに広報活動を展開する従来型の広告との大きな違いだ。

オリンピックはこのテレビの形式を踏襲している。キー局にあたるのがオリンピック組織委員会でありテレビ局と違って1つしかない独占企業体だった。さらに国のお金も入っていた。つまり組織委員会の理事は「公務員に準じる地位を持つ独占企業の運営者」という極めて独特の地位に置かれる。

政治と業者の役割関係はかなり微妙である。独占的な営利活動に利益を提供し「他のところで恩を返してもらう」という関係があってもそれは犯罪にはならない。

高橋容疑者は独占企業の役員であり、みなし公務員であり、さらに電通という実行部隊(スポンサーを連れてくる役割がある)の関係者であり、独立したコンサルティング会社の代表者だったということになる。

テレビの例で言うと「テレビ局の役員であり広告代理店の関係者であり独立したコンサルティング会社の代表者」ということになる。こうした存在がテレビ局で成り立たないのは当然である。おそらく株主が黙っていないだろう。

「オリンピックの株主に当たるのは誰だったのだろうか?」と言うことになる。これはおそらく日本の国会だ。国会がオリンピックの収支について適切に監視ができておらず従って出資者にあたる納税者を裏切っていたのは明らかだ。主に責任を負うのは自民党・公明党だが与党批判を政局利用してきた野党にも責任の一環はある。いずれにせよ、現在政治と汚職は切り離されて考えられている。これがこの問題がスッキリしない最初の原因になっている。

次の問題は「高橋容疑者はどの立場であるべきだったのか」と言うものだ。この点についての議論も全くなされていない。これがこの問題がすっきりしないもう一つの原因になっている。高橋さんはテレビ局の役員として振る舞うべきだったのか企業側のコンサルタントであるべきだったのか、広告代理店の実質的統合者であるべきだったのかということだ。

高橋元理事は「電通幹部」に直接「大広が仕切る」と伝達していた。つまり組織委員会の人間として振る舞っている。ところがKADOKAWAの会長は電通雑誌局の人だと思って会ったが組織委員会の事務局に連れてゆかれたと言っている。だが実際にはこの人はコモンズ2という会社の代表者であり高橋さんの協力者だった。さらにKADOKAWA会長は「コンサルタント費用」を相手の言い値で支払っている。

なぜ高橋容疑者の立ち位置が決められないかという問題には答えがある。いったいオリンピックがどうあるべきなのかという問題を誰も考えてこなかったからである。そして今でも誰もこの話をしない。

広告代理店はもともと、企業を補佐して計画を立てて、制作し、実運営をすると言うのが役割だったはずだ。だが寡占市場のテレビ時代が長かったために「独占的に枠を抑える」というビジネスモデルが確立された。インターネット広告の誕生によりベルリンの壁が壊れたのだが、既存の広告代理店はこの先の効果検証ができなくなっている。

このため「広告代理店+早期退職」で検索するとたくさんの記事が見つかる。効果検証なき広告が受け入れられなくなっているのであろう。既存のビジネスで生活してゆけなくなった人たちが「自分達のセカンドキャリア」のためにビジネスチャンスを求めてオリンピックという一大イベントに群がった。その結果起こったのがスポンサーを巻き込んだ贈収賄事件だったということになる。

NHKの記事によると「大広」のさきには「この企業」と呼ばれている「サービス系の企業」があるそうだ。サービス系の企業は当初電通と業務契約を結ぼうとしたものの協賛金の額で折り合わなかった。しかしこの後で高橋氏が仲介したことで「なぜか協賛金の引き下げ」が行われたそうだ。仮にこの「サービス系の某企業」が高橋氏側に何らかの支払いをしていたとすると、おそらくこの企業の経営者も巻き込まれることになるだろう。

冒頭でも説明した通り産経新聞は「語学サービス系の企業」とだとだけ書いている。この企業が仮に「スポンサー料」だけを支払っているのであればあとは電通と大広の内部の話であり特に企業が罪に問われることはないはずだ。

産経新聞は企業名を掴んでいるのだろうがその企業がどうだったのかということは書いていない。NHKも特定されないように業界名を書かずに「サービス系企業」としている。特捜部が具体的な名前を出すまではここまでが「ジャーナリズムとしての線」なのだということがわかる。

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