米国債への依存を減らそうと試みる中国

9月の末に入って駆け込みで色々な動きが起きている。織り込み済みと思われたFOMCをきっかけに株価が下がっている。日本は金融政策の持続を決めたため金利差の拡大が固定され円安を防ぐための防衛が行われた。そしてイギリスは目の前の経済危機を凌ぐため財政出動を決め「ショック」が起きている。これが数日のうちに起きたのだ。一方で静かに「準備」を進める国もある。それが中国だ。アメリカ国債の保有を徐々に減らしている。中国にとっては「代わりさえ見つかれば」米国債を処分しやすい状況が作られつつある。

すると最大の米国債保有国は日本ということになるだろう。






中国が米国債を減らそうとしているというニュースは「激震」とは言えないためそれほど大きく語られることはないだろう。合間を見て日経新聞の記事を整理しておきたい。

  • 中国が米国債の保有を減らしている。2021年と比べると9%減の9700億ドル(139兆円)だった。
  • 中国は米欧日がロシア中央銀行の海外資産凍結を凍結したことにショックを受けた。実はロシアのSWIFT排除よりもこちらの方がショックが大きかった。
  • 中国が急速に資産を多様化させることは難しいので租税回避地に逃避する動きもある。詳細は明らかでないもののケイマン諸島やバミューダ諸島が保有する米国債が増えている。
  • 習近平国家主席が台湾侵攻に動けば3兆ドルに達する外貨準備の多くが凍結されるだろう。2016年時点では59%がドル資産だったが、近年では人民元決済も増えており以前ほどドルの需要は多くなくなっている。ロシアとの貿易に人民元が使われるようになった。
  • 中国だけでなくロシアやトルコも金の保有を増やしている。

つまり経済制裁という西側の武器の効果を減じるための準備をしている。中国ウォッチャーの柯隆氏はコメントで次のように補足している。中国としては不透明な投資である米国債を減らしたいが現実的には難しい側面もあるようだ。

  • アメリカは急ピッチで利上げを進めており不透明感が増している。
  • また中国の一帯一路プロジェクトにも焦げ付きが目立ち外貨準備が減少している。
  • 中国の金融機関や国有企業も外債を保有するようになっている。

ロイターによると現在アメリカの国債を一番たくさん保有しているのは日本なのだそうだ。1兆2340億ドルとなっている。中国が静かに米国債から退出すればおそらく日本が世界第一の米国債保有国ということになる。

アメリカは日本が米国債から逃げることは許さないだろう。今回行われた為替介入にアメリカが反対しなかった理由としてBloombergは「日本の為替介入、米国債への波及リスク低い-FRBのドル供給策で」という記事を出している。いざという時のために使えるアメリカドルの枠(海外・国際金融当局(FIMA)向けレポファシリティー)を準備しておいて米国債が売られるのを防いでいるという。

先日、韓国がアメリカに苛立っているという記事を配信した。苛立ちの中に「通貨スワップ」に関する懸念があった。

ハンギョレは通貨を買い支えるためには保有する米国債を売らざるを得ないと主張している。米国債の売りは暴落につながるのだから相手国の通貨を支えるためにスワップ協定を結ぶのではないかと期待を込めて書いている。慢性的な通貨安不安を抱える韓国は通貨スワップに期待しいていることがわかる。尹錫悦大統領の「このやろう発言」の一因には韓国が期待する通貨スワップに対してゼロ回答だったアメリカ政府への「恨み」もあるのだろう。

ハンギョレは「代表的な安全資産である米国債の価格が大きく揺らぐと、金融市場全体が不安定に陥る可能性もある」と通貨スワップの重要性を強調するのだがこれは我田引水が過ぎるように思える。実際にはアメリカは国債を売らなくてもドルが調達できる仕組みを作っている。だがBloombergの記事を読む限りは「事前に貯蓄しておくこと」が必要なようだ。つまりアメリカは自助努力を求めていることになる。

さらに、国際金融環境が悪化すれば米国債への需要は高まる。(2022年)6月の7兆4300億ドルから7月には7兆5010億ドルに増加したとロイターは書いている。利上げの影響もあり海外投資家の米国債保有はむしろ増えており「韓国に心配してもらう」ような状況ではない。

さらにFRBが積極的に利上げをやっているのだから国債の利回りが値崩れしても表面的には区別がしにくいという事情もある。イギリス国債のように政策変更で値崩れしているものもあり「国際的なトレンド」が形成されているのだから米国債の利回りが上がってもそれほど目立つことはないだろう。

こうなると中国としては「退出」がしやすくなる。米国債が大きく根を崩さないうちに静かに売りを進め「経済の独自化」を進めることができる。すでに非米ドルで資源を売り買いする仕組みが模索されており、世界経済は統合よりむしろ分裂の方向に進んでいるように思われる。ただし、中国の取り組みが成功するかどうかは現在の金融の仕組み以外の仕組みや市場を中国が形成できるかにかかっている。ロシアが戦争(特別軍事作戦)で疲弊する中で市場としてある程度の大きさを持った有力なパートナー国家も見当たらない。中国は独自でこの取り組みを続ける必要があるのかもしれない。

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