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尹錫悦大統領のバイデン大統領に対する暴言は厳密には何だったのか?

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尹錫悦大統領が「この野郎ども」と発言したというニュースがあった。背景がよくわからないが興味深かったので調べてみた。調べてみるとTBSの翻訳は割と優秀だがAFPは少し外れた翻訳をしていることがわかる。

  • TBS:あいつらがバイデン大統領の提案を通さなければどうなるんだ?
  • AFP:こいつらが議会で可決しなかったら、バイデンのクソメンツは丸つぶれだな

また暴言の背後には韓国のアメリカに対する過度な期待とバイデン大統領の外交下手という問題も含まれている。岸田総理大臣は長く外務大臣をやっていたためアメリカの雑さをうまく織り込んで処理したようだが、外交デビューの尹錫悦大統領にはそれができなかった。

いずれににせよ「単なる暴言」として嗤うにはもったいない素材だ。

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尹錫悦大統領とバイデン大統領の「首脳会談」は48秒の歓談と団体レセプションだけだった。ホワイトハウスの発表にはインフレと通貨スワップについての言及は入っておらず韓国側は失望していたようだ。政権に批判的なハンギョレは社説で尹錫悦大統領の外交失点について伝えているがおそらくアメリカが韓国を重要視していないという意味にとらえた人も多かったはずだ。

また日韓会談も日本側では「略式の懇談である」と表現された。会場のビルの一室でソファに座る形で行われた。国際会議の際の協議は30分程度が普通で、「会談」としなかったのは異例と時事通信が説明している。このニュースだけをみると「日本が韓国に距離を置いているのだな」という印象を持つ。

特にバイデン大統領と会談できなかったことは批判的な勢力から「48秒会談」とか「48秒の出会い」などと揶揄されているようだ。そもそも会ってもらえないという事情があったようで、スケジュールを変更しバイデン大統領がいる会議に参加することにした。つまり尹錫悦大統領はバイデン大統領の冷遇に怒っていたことになる。

AFPによるとバイデン大統領が優先したのは「感染症対策に取り組む基金への増資を検討する会合」だった。アメリカ合衆国が世界の感染症対策に責任を持っているというアピールだが、意識しているのは主に国内世論なのではないかと思える。

さて各社の翻訳を見てみよう。同じ発言とは思えないほど翻訳が違っているがなんとなく上品な発言ではなかったのであろうと思える。

  • TBS:あいつらがバイデン大統領の提案を通さなければどうなるんだ?
  • AFP:こいつらが議会で可決しなかったら、バイデンのクソメンツは丸つぶれだな

韓国語で検索したところ「국회에서 이 새끼들이 승인 안 해주면 바이든이 쪽팔려서 어떡하나?」だったそうようだ。直訳すると「国会であいつらが承認しなければバイデンが赤面してどうなるんだ?」という意味になる。「この野郎」は韓国語では伏字になるほどの言葉なのだが、赤面するもあまり品の良くない言葉になるようだ。調べると「主に若者が使う言葉」と書かれている。

構成としては「国会であいつらが承認してくれない」と「バイデン(呼び捨て)」が赤っ恥を書いてどうするという二文が주면(くれなければ)で結びついている。は動詞と動詞を結びつけ「〜して」という意味を持つ。「赤面してどうするかな?」という意味になる。主語が二つと動詞が三つ使われた文章だ。

ちなみに韓国語ではこの言葉は地上波放送に載せられないため伏字になっている。SBSのニュースを見るとわかるがピーという音がはいっていた。このため「この野郎、尹錫悦」と検索してもメジャーな新聞社やテレビの報道は検索できない。

日本は「この野郎」が韓国で批判されていることを意識した上で残している。惜しいのは「してくれる・してあげる」が「する」になっているところだけだ。テストでは減点されるだろうが実用的にはオリジナルの意味が残っている。一方でAFPは「この野郎」が落ちており下品さが伝わってこない。それを「クソメンツが丸潰れ」で回収しようとしたことがわかる。元の文章は「承認されなかったら赤っ恥をかく」というところまでしか言っていないので「丸潰れだな」とは言及していない。やや意訳に失敗したと言えるだろう。

このニュースだけを見ると韓国だけがアメリカから冷遇されているように思えるかもしれないのだが、実は日本側もバイデン大統領とは満足な会談は設定できなかった。日本は韓国との会談を「異例の懇談」に落としたのだが、実は日本側も同じようなことをされている。ただ韓国よりはマシな30分の時間をもらったようである。

NHKは「岸田首相とバイデン大統領が懇談 国連安保理改革へ連携確認」といかにもバイデン大統領との強い絆が再確認できたようなタイトルをとっているが、実際には30分程度間立ち話をしただけだった。ソファすらなかったことになるだろう。

もともとバイデン大統領は自分が興味がある問題にしか興味がない極めて外交下手な大統領である。今回も国際的な協調体制を主導する力強いリーダーという絵を作ろうとして尹錫悦大統領を不機嫌にしたが、こうしたバイデン大統領の外交下手は近隣諸国に知れ渡っている。最近では移民対策でお願いする立場にもかかわらずキューバ、ベネズエラ、ニカラグアを排除した。これに反発した8カ国の首脳が会議をボイコットするという騒ぎになっている。近隣諸国の協力が得られなかったため移民の数は増えてしまった。

つまり絵作りで身内を優遇すればするほど優先順位が低いとみなされた人たちを怒らせてしまうという構造がある。尹錫悦大統領はおそらくその最新の犠牲者といえる。彼らは大抵バイデン大統領やアメリカにいい印象を持たなくなりいざという時に協力してくれなくなる。韓国もそうなるかもしれない。

一方で、日本はアメリカが日本をそれほど重要視してくれていないことがわかっている上にアメリカの雑な対応に慣れている。特に岸田総理大臣は外務大臣経験が長いのですっかり慣れているのだろう。あえて期待値を上げて後でガッカリするような事前発表をすることはない。NHKの「無事に懇談も終わり連携が確認できた」という報道で締め括られた通り「アメリカの外交下手」が国民に伝わらない仕組みができているのだ。

いずれにせよ尹錫悦大統領はかなりハードルを上げてしまったのだろう。もともと検察の人なのでそれほど外交に詳しいとも思えない。日本のように優先順位は低くともそれなりにうまくいったという演出をすべきだったのだろうが期待が高かった分だけ失望も大きかったのだろうと思える。

これが48秒会談と揶揄されることになった。日本のウィキペディアにあたるナムウィキには48초 한미정상회담 논란(48秒韓米首脳会談論議)という項目まで立てられている。

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Comments

“尹錫悦大統領のバイデン大統領に対する暴言は厳密には何だったのか?” への1件のコメント

  1. 各種報道ではさっぱりわからなかった背景が詳しく書かれてい納得しました。