「戦争に行きたくない人はドイツにいらっしゃい」とドイツ政府がロシア人に呼びかけ

ロシアを脱出する航空チケットの値段が高騰しているそうだ。そんな中、ドイツがロシアからの脱走者を受け入れると表明した。正確にはプーチン政権下のロシアからの脱出者を受け入れるという。AFPが「ドイツ、ロシア脱出者の受け入れ表明」と伝えている。いきなりこんな出だしで書くと混乱する人がいそうだ。「既にだいたいのことは知っているよ」という人もいるかもしれないのだが、これまでの流れを簡単におさらいしておこう。






ロシアは一方的な軍事侵攻を行ったが兵士の士気は上がらず一部領土を奪回された。それを受けて現状を固定しようとロシアへの併合を画策する住民投票が発表された。実際に投票が行えるかどうかは不明だが手続きさえ踏んで発表してしまえば既成事実が作れると思ったのだろう。しかしながら政権も「これで終わる」とは思っていなかったようで国内の体制が強化された。9月20日に脱走兵に対する処罰規定が作られ動員の根拠を作る法改正が行われた。さらにここから間髪入れずに30万名の予備役動員命令がプーチン大統領から発表される。翌日の9月21日だった。国民に意図は説明されず法的な形式が作られて翌日から運用されることになったということになる。ロシアの民主主義が形式化しており既に機能していないことがわかる。

ロシアの「特別軍事作戦」が行き詰まりを見せている。ロシア側の士気は高くなく管理を厳しくしても支配地域の人たちの気持ちを変えることはできないだろう。奪還された地域では虐殺の証拠が出てきているため「プーチン大統領を戦争犯罪で裁くべきだ」という声も出始めている。だが一度踏み出した以上は推敲するしかない。そんな状況だ。

西側の非難は程度予測できたのだが「航空便に予約が殺到している」というAFPのニュースにはさすがに驚かされた。しかも、一つのソースからの情報ではない。格安航空券サイト、トルコ航空、エアセルビアの情報だった。

  • アルメニアやジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタンといった旧ソ連諸国への直行便が完売
  • ロシア発着便の主要経由地であるイスタンブールへの便は24日まで満席
  • セルビアの首都ベオグラード行きの便で、次に空席があるのは26日
  • Googleによるとロシアでは「チケット」と「航空便」のキーワード検索が2倍以上に増加

だが、これはほんの始まりに過ぎなかった。

ついにロシア各地で抗議デモが起きた。これまでは一部の職業軍人たちの問題であって自分達の問題ではないと感じていた人たちが騒ぎ出した。人権団体の発表によると「逮捕者だけで1,300人」ということなのでさらに大きな抗議運動が起きていることが想像できる。

背景にあるのは政府に対する不信感だ。

BBCの記事にはロシアの予備役について触れたイラストが添えてある。

ショイグ国防大臣によればロシアには2500万人もの予備役がおりそのうちの30万人が招集されるだけなのだという。つまり該当者であっても可能性はそれほど高くないという説明だ。ショイグ国防大臣は学徒動員もしないと表明した。だがBBCはロシアの予備役の数を200万人程度と見ているようだ。全体の兵力は290万人になるそうだ。つまり2500万人の根拠はよくわからないのである。そもそも政府は「特別軍事作戦はすぐ終わる」と説明していたのだから「学生は招集しない」とか「該当者はそれほど多くない」などと嘯いてみてもそれを信頼する人はいないだろう。

テレビ朝日がまとめている情報を読むとさらに不安が増す。項目のうち第七項目が伏せられており実際には何が起きているのかよくわからないようだ。ロシアは正確な死者の数を発表していないことから実際にどれくらいの補給が必要なのかもよくわかっていない。

ここまでひどい状況になっていたがロシア市民はこれを放置してきた。国民の関心なしに国家権力が暴走していることは明白だがそれを見過ごしてきたわけだ。

さまざまな状況から、ロシア政府と議会が国民に意図を隠したまま法的整備を進め、検証すればすぐにわかってしまうような説明をしてその場を乗り切ろうとしている様子がわかる。それでも人的資源を物量的に投入すれば何とかなると考えているのかもしれないし、それしかないと追い詰められているのかもしれない。

逮捕覚悟で抗議をする人も出てきているが、当然逮捕覚悟で国を出る人も増えることだろう。

このような背景がありドイツ政府はロシアからの脱走者を受け入れると表明した。もともと弾圧を受ける可能性がある人はドイツ政府が保護するという方針があるようだがロシアからの脱走者がこれに該当するということを明確にした形のようだ。単なる兵役忌避者の受け入れではなく「プーチン大統領に立ち向かうことを表明した人」ということになっている。

  • 深刻な弾圧を受ける恐れがある脱走者は原則、ドイツで国際保護を受けることができる
  • プーチン政権に勇敢に立ち向かい、そのために大きな危険にさらされる人は誰でも、政治的迫害を理由に亡命を申請することができる

国内からの抵抗は難しそうだが脱走者が増えればプーチン大統領が国民から支持されていないことは明白になる。ドイツ政府は「ーチン政権に勇敢に立ち向かう人」を受け入れるのだから、つまり「ロシアがやっているのではなくプーチン大統領が暴走している」という形を作ることができるのである。

次の焦点は一体どれくらいの人が逃亡に成功するのか?ということになりそうだ。

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