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ついにイランで政府抗議運動が始まる。きっかけは女性たちの怒り。

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イランで政府に対する抗議運動が始まったというニュースが伝わっている。きっかけは「スカーフの被り方を咎められた女性が警察で亡くなった」という問題だが、背景には長年溜まってきた政府に対する不満があるようだ。いずれにせよ、ようやく抗議の声を上げたのはヒジャブで顔を隠すことを強要されてきた女性たちだった。

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2021年3月のニッセイ基礎研究所のレポートは「「最強」制裁継続でさらに深刻化するイランの人々の暮らし」でアメリカの経済制裁などを背景にしてイランの人々の暮らしが困窮していると伝えている。核兵器開発問題でアメリカと折り合っておらず、近年では新型コロナとウクライナ戦争の余波儲けている。このレポートは2021年のものなのでウクライナ状況は織り込まれていない。

「デモ4日目で初めて死者が出た」と伝えられたがすぐに死者数が塗り変わった。南部シラーズと西部ケルマンシャーでの死亡者が加わったためだ。Bloombergも同じ人数を報じていることからこれが当局の発表であることが確認できる。ただ初期報道が不審死となっていたことからも政府がこの問題をできるだけ小さく見せようとしていたことが伺える。

CNNはこれとは別に人権団体からの報告という形で西部のクルド人地域での死者を伝えている。共同やBloombergが伝える政府発表と重複しているのかあるいは別のものなのかはわからない。「逮捕後の女性死亡に抗議のデモ、衝突で死者5人 イラン」というタイトルで死者数は5人になっている。

BBCの報道によると亡くなった女性は西部クルディスタン州出身の22歳の若い女性だった。このためクルド人地域で死者が出ているということは理解できる。政府もクルド人の分離独立運動に利用されていると説明しているようだ。

ただし抗議運動はイラン全土に広がっておりスカーフを燃やし髪を切るという過激な行動に発展している。革命体制下で女性の権利が抑圧されており近年では生活苦も重なっていることを考えると「もう我慢の限界」と考える人たちが増えているのかもしれない。全土に女性の怒りが広がれば政府のクルド分離派の陰謀だという説明も虚しく響くだけになってしまうだろう。

この動きが直ちに体制転覆につながったり核兵器開発問題に影響を与えるとは思えない。しかし、イラン政府も女性たちの怒りや生活苦を無視できなくなるだろう。ただし長年の経済制裁で経済が傷んでおりイラン政府にできることは少ない。力づくで女性たちを押さえつけない限りしばらく混乱が続く可能性がある。

アラブニュースは「最後に広範な民衆蜂起が起きたのは2019年で、イスラム革命防衛隊(IRGC)が出動し、約1500人が殺害された。」と書いている。つまりこれまでもかなり大規模な鎮圧は行われていたようだ。ただし今回当局が対峙するのは自由を求める女性たちだ。これまでとは違った対応が求められるのではないかと思う。自由を求める女性たちを容赦無く叩きのめすようなことになればイラン国内外からの批判はこれまで以上に大きなものになりそうだ。

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