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バイデン大統領がCBSの番組で再び台湾防衛への力強いコミットメントを表明する

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バイデン大統領が台湾有事への力強いコミットメントを表明した。各紙が伝えている。一方で表明しなかったこともある。次期大統領選挙に出るかどうかをいまだに明確にしていないのだ。台湾有事についてのコミットメントについては多くの媒体が取り上げているが、大統領選挙に出ないかもしれないという点について伝えている媒体はそれほど多くなかった。

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各媒体の見出しを見ると、バイデン大統領が台湾防衛を明言、中国が反発、アメリカ政府は方針に変更なしとフォローという3つがセットになっている。台湾情勢について特に変わった動きがあるわけではなく、具体的に「前例のない攻撃」が何を指すのはもよくわからない。

つまりニュースとしては特に目新しい情報はない。

いずれにせよアフガニスタン撤退とウクライナで「弱腰」の姿勢がその後問題を引き起こしたことから「強気の姿勢」を見せていることは明らかである。

背景にあるのはアメリカの産業を支える半導体の供給地確保問題である。時事通信によると、世界の半導体生産能力の約8割が韓国、台湾、中国、日本のアジア4カ国に集中しているとされる。アルメニア・アゼルバイジャンやタジク・キルギスなどの紛争と違い、台湾問題はアメリカや我が国の経済に大きな影響を与えかねない。このため台湾を組み込んだ、アメリカ・日本・韓国・台湾で「半導体同盟」を構築するのがバイデン政権の狙いである。2021年ごろに盛んに問題になった半導体不足はいまだに解決しておらずアメリカのインフレの原因の一つになっている。

バイデン大統領は穏健な姿勢が却って「専制主義」の国の行動を激化させると考えているのだろう。盛んに台湾を擁護し中国を牽制する動きを強めている。こうして折に触れて力強い発言を繰り返さなければ中国を抑止できないということでもある。

とここまでの話は盛んに伝えられている。ところが同じ番組の中でバイデン大統領は続投についての言及を避けたということはあまり伝えられなかった。共同通信が2期目出馬は「状況見る」 バイデン大統領、中間選後判断かという記事を出している。

現在バイデン大統領は79歳で、2年後の選挙は80代ということになる。つまり、今台湾についてのコミットメントを強めてもそれが2年以上続くかどうかはよくわからないということになるだろう。2年以上の長期的視野で外交・防衛政策が決められないというのがアメリカの現在の状況だ。

では「今後がどうなるのか」ということになる。見方は分かれている。第一に民主党の支持率は回復してきている。上院で民主党が過半数を維持するのではないかという観測を出すところも出てきた。フォーブスが「バイデン大統領支持率が45%に急上昇、インフレ抑制法を好感」という記事を出している。民主党支持者にターゲットを絞った政策を次々に実現しているのが好感されたようだ。

一方で激戦州と呼ばれる地域で共和党系の知事が増えれば民主党が不利になるように選挙制度を変えてしまったり、選挙結果を認めないなどの妨害工作が広がるのではないかという見方もあるそうだ。こちらはロイターが出している。「アングル:バイデン氏勝利認めぬ知事候補ら、当選なら大統領選にも影響か

総合するとこの先が「どうなるかよくわからない」ということだ。日経新聞が「防衛費2%、抑止力向上が急務 台湾有事で継戦能力など」と書くように台湾有事を念頭に置いて防衛費の相当な増額議論が始まっているが、2年後の様相は全く変わってきているかもしれない。とはいえ現在バイデン大統領が台湾にコミットメントを強めていることからこの流れに逆らうこともできない。

不確実性は増しているがどうにかこの動きについてゆかなければならないという状態になっている。

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