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ニューヨーク株価は9月も「一時1200ドル下落祭り」に

共同通信の配信リストを見て驚いた。「ああまた今月もこうなったのか」という感想を持った人も多いのではないか。この記事を一旦配信した時には「900ドル超安」だったのでタイトルは900ドル超としたのだが、結果的には「一時1200ドル下落」となった。

この間も自由落下的な動きを見せていたが、最終的には「NY株、一時1200ドル安 米利上げ継続で景気懸念」という記事が出た。CPIが発表された直後からの急展開ぶりがよくわかる。

説明はいらないと思うのだが、時事によるとガソリンは下がったが自動車と家賃の価格が高止まりしているそうである。このCPIの発表を受けて「来週のFOMCでまた大規模な利上げが行われるのでは」という予想になったようだ。

円もまた下落した。これを書いている時点では144円になっている。

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8月末にもジャクソンホール講演を受けた株価の下落があった。もう思い出したくないという人もいるだろうが米国株式市場=大幅安、ダウ1000ドル超の下げ FRB議長講演受け(2022/8/27)という記事になって残っている。そこからまだほんの数週間しか経っていないだけに「ああまたか」という市場の落胆は大きいのかもしれない。

こうなると「面倒なことはいいからいつまで続くのかを示してほしい」という人が増えるのではないか。記事を探した。コラム:「さっさと上げて長く引っ張る」FRBの戦略、裏目に出たら円高に=上野泰也氏という記事は連銀総裁たちの観測をずらっと並べている。「テクニカルすぎてよくわからない」と思うのだがそこは心得たものである。こちらを見透かしたように上野さんはこう書いている。

わかりやすく言うと「さっさと利上げして、その水準で長く引っ張る」のが、FRBがいま採用しているとみられる利上げ戦略である。

「なるほど、まだまだ続くのか」というわけだ。

ただ、このコラムには続きがある。つまり今の戦略は今の見通しを反映しているものなのだからそれがぐらついた時に反動があるだろうというようなことが書かれている。これがタイトルの2段目にある「裏目に出たら円高」だ。その兆候が何になるのかは、ぜひ実際のコラムを読んでいただきたい。

ただしこれは来年を見据えた話なので「今」に意識を戻す。ロイターは米金利先物市場、来週の0.75%利上げ観測強まる CPI受けという記事を出している。FRBが利上げの一時停止を検討するには、インフレの緩和が数カ月継続する必要があり、「現時点でその状況には程遠い」となっている。

FRBが経済を犠牲にしてでもインフレを止めるという強い覚悟を持ち続けるならば株価は低迷するであろうということになる。だが、株式市場は望みを捨てられないため一時的な上昇が起きたりする。そしてCPIのような具体的な指標が出るたびに大慌てになるというわけだ。

中央銀行はそれなりに奮戦している。政治も協力してなんとかすべきなのではないかと思うのだがバイデン大統領のコメントはどこか他人事である。「米CPIに進展、インフレ抑制に時間と決意必要=米大統領」というタイトル通り「CPIが進展した(つまりインフレは良くなりつつある)」とコメントしている。

  • 8月の消費者物価指数(CPI)で進展がみられた
  • インフレ抑制には時間がかかる
  • インフレを引き下げるにはより多くの時間と決意が必要だ

つまり時間がかかるから覚悟してくれと言っている。ただし覚悟するのは資産家・投資家であり民主党がターゲットとする中間層ではない。

バイデン大統領は自身を支えてくれる左派中間層にターゲットを絞ってしまった。このため金融投資家の痛みにはあまり関心がないようだ。「全てうまくいっているからこのままお待ちください」というメッセージになっている。中間選挙モードに入ったアメリカの政治に期待することは少なくとも当面は難しそうである。

当然のことながら連動して円の価格が下落している。また144円台まで戻ってきた。これが145円を超えると一般紙と地上波が再び「24年ぶり」報道を加速させるかもしれない。そんな中面白いコラムを見つけた。これもまたロイターの記事だが為替介入をほのめかしている。

タイトルは「コラム:現実味を帯びてきた中国と日本のドル売り介入」というものである。

  • 日本と中国が対抗して利上げしないのならば「強力な為替介入」するしかないのではないか
  • 中国と日本の外貨準備は約12兆5000億ドルの3分の1を占める。
  • 政治面と資金面の問題をとりあえず除外すれば、基本的にドルを売って自国通貨を買う直接為替介入が最も効果を発揮する
  • ただし「自国通貨買い」は実質的な国内金利の押し上げになる。つまり買い入れた自国通貨を「不胎化」させる手段を探さなければならない。

日本政府はアメリカの顔色を伺いおそらく為替介入はしないだろうというのが国内の一般的な見方である。だが海外からは「アジアの他の諸国もやっていることだし為替介入するのが自然である」という見方が出始めているようだ。なお不胎化とは「外貨の売買に伴う金融市場の需給変動の影響を、自国通貨建て資産の公開市場操作(オペ)によって相殺する介入手法」のことを指すそうだ。介入によって自国通貨建ての資産の価格にも影響が出ることが予想されると読むのが良いのだろう。

ただし、このコラムに書かれているようにおそらく一番の障壁は日本政府がアメリカとの対立を恐れずに自国経済と自国通貨を防衛する意思を示せるかという点にあるのかもしれない。少なくとも手段はあるわけだからそろそろ日本国内からも「為替介入」を要求する動きが出てきてもおかしくない。

ただし国内の声をまとめると「当面円安は続くだろうがそれを受け止めてなんとか適応しろ」という意見が多いようだ。特に榊原英資氏は「為替介入などできないのだから現状を受け止めて乗り切ろう」という論を盛んに発信している。

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