ウクライナのハルキウ周辺でかなり大きな戦況の変化があった。専門家も驚くほどの展開で一部懸念を表明している人もいるとお伝えしたばかりだ。その後マスコミの報道が少しずつ出揃い状況が見えてきた。読み物が非常に多いので分析は控えて記事をまとめた。単に記事をまとめただけなのですでに関連記事を読んでいる人には物足りない情報かもしれない。
戦況評価は「ロシア軍のハルキウからの撤退」だが終戦は見通せない
ロシア軍はイジュームに増援していたとCNNが伝えていた。
しかしながら、結果的にはロシア軍はハルキウから撤退した。ドネツク州に戦力を集中させるための配置転換だと説明しているが事実上の撤退であると西側のメディアは見ているようだ。
軍服を脱ぎ捨てて逃げ出した兵士もいるとういう。士気の低さがうかがえる。
ゼレンスキー大統領は終戦交渉などの外交交渉を行うつもりはないと表明しており、この撤退が全面終戦に向かう可能性はあまり高くないようである。西側各国から終戦を求める声が出ているという報道も今の所は入ってきていない。
Twitter上の識者の声
高橋杉雄氏は撤退後広域攻撃があるのではないかと考えTwitter上で懸念を表明していた。今の所氏が予想するような極端なことは起きていないが「週明けに考えをまとめて発表する」としている。週末は炊飯器でチーズケーキを作り気分を整えていたようだ。炊飯器でも意外とチーズケーキは作れるということを証明した。
「よく分かる軍事ニュース解説」でおなじみのJSF氏はイジュームの戦略的位置について解説。ロシア軍はイジュームを突出点にして周囲に攻め込むつもりだったようだが背後から隙をつかれてイジュームを失ったということのようだ。塗り分けされた地図があり状況がわかりやすい。5月に日本の財務省が「戦車は役に立たないから予算を削減しては?」と指摘していたという朝日新聞の記事を引き合いに、国土防衛に戦車が「歴史的成果を上げた」ことを強調した。日本の防衛議論にも少なくない影響を与えていることがわかる。
小谷哲男氏は短くハルキウで虐殺の痕跡が見つかり始めているとつぶやくが海外出張中のためまとまったコメントはできない模様。キエフ郊外が解放されたときもロシア軍の兵士が逃げ出していると伝えられ、さらにその後で「ブチャの惨劇」と言われる悲劇が報道された。そのことを思い出した。
なぜかロシア事情にやたら詳しい丸の内炒飯OL氏は戦術クラスターの観測待ちと短くコメント。質問箱に答えてコミュニティとの交流に勤(いそ)しんでいる。広域爆撃などの「極端な攻撃」については否定的なようだが詳細は不明。
マスコミのまとめによると「結果的にロシア軍が撤退した」ということしかわからないのだが専門家も驚くほどの変化であり、中にはうまくゆきすぎているという感想を持った人もいるということのようだ。ただ、ウクライナがどこまで押し返すのかや今後何が予想されるのかについての見解がまとまっているとは言えない。今後、さらに情報が出てくるものと思われる。さらに言えば停戦・休戦・終戦の見込みは全く立っていない。
ロシアの国内事情
なぜ増援がうまくゆかなかったのかについても気になるところだ。「ロシアは兵隊集めに苦労しているようだ」といくつかのメディアが伝えている。読売新聞は次のような記事を出している。情報源は徴兵問題を専門に扱うロシア国内の人権団体など。
ロシアは完全独裁ではなく選挙も行われている。地方選挙を延期しては?という声もあったようだが結局実施された。こうした事情もあり国民の動向を無視して強制徴兵などを行うことはできていないようだ。
ザポリージャ原発の「安定化」
この他にヨーロッパから懸念の高かったザポリージャ(南部)原発についても進展があったようだ。IAEAも入り「安定化」に向けた努力が進んでいる。
朝日新聞はロシアからの攻撃で電力供給が難しくなっていたが外部からの電源が遮断されたため停止作業もできないという状態だったと短くまとめている。このほど電源が確保され停止状態に入ったためタイトルは「ザポリージャ原発が完全に停止 「より安全な状態にするため冷却」」となっている。
読売新聞は冷却作業が行えなくなれば90分で炉心溶融(メルトダウン)が始まるとのエネルゴアトムの予想を伝えたうえでロシアに暴行されてなくなった職員がいると訴えている。200人が拘束されており10名の行方が把握できていないそうだ。職員たちが犠牲を払いながらウクライナとヨーロッパの安全を守ろうとしているようだ。