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黒田日銀総裁を使った「口先介入」はとりあえず成功

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昨日はめずらしく円相場が円高に動いた。要因となったのは黒田日銀総裁の「牽制発言」だった。官邸に呼び出したあとで記者の質問に答えさせる形をとったのが効果的だったようだ。

即座に「一方的な流れ」が戻したことから市場が黒田総裁の一挙手一投足に注目していることがわかる。

ただし岸田政権には時間的余裕はあまりなさそうだ。予備費を使ったインフレ対策は予想通り限定的なものになり補正予算の検討は10月以降になる。足元では統一教会問題と国葬問題がくすぶり続けている。

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共同通信が「円高進み、一時141円台 首相と日銀総裁会談、市場が反応」という記事を出している。内容はロイターが黒田総裁の発言を伝えている。

  • 為替が1日に2円も3円も動くのは急激な変化であり好ましくない
  • 首相からは「特別な指示や要望はなかった」

これだけで為替相場に一定の影響を与えたことから黒田日銀総裁の一言や総理大臣との連携がどれだけ金融市場から注目されているのかがわかる。政権が舞台を作り黒田総裁は期待通りの役割を果たしたと言えるのかもしれない。

ただしロイターは別の記事で「仮に実施できたとしても小規模にとどまり、影響は限られるだろう」とする市場の予想を伝えている。つまり実際に行動を起こしたとしても流れはさほど変わらないかもしれないというのだ。結局は金利差の問題を解決しない限り円安基調は変えられないものとみられる。

FRBもECBも積極的な利上げ姿勢を維持しているところから日銀だけがこれに抵抗し続けるのは難しそうだ。出口がないならば金融市場にショックのある「ハードな解決」が取られるのではないかというのがこのところの日経新聞やロイターなどの懸念である。日経新聞は24年前の出来事を持ち出しロイターもコラムで懸念を表明している。

急激な円安はいったん止まった形である。つまり岸田政権は何の犠牲も出さず流れを止めることに成功したといえるのかもしれない。この時間を使って何をやるのかというのが次の課題になる。まずは当座のインフレ対策が決まったが当初予想されていた通りの小規模なものにと止まった。「地方創生臨時交付金」の増額分は6,000億円だった。

ただし小規模とはいえ政府からは「出口を検討したい」という声が出ているという。特に懸念が大きいのが一ヶ月に3000億円ほどかかっているとされるガソリン対策である。このまま出口が見つからなければだらだらと出血が続くことになる。これは消費税増税と同じ効果を生む。終了が決まったとたんに駆け込みで需要が膨らむ。そのあとで長期低迷に陥るというのが「消費税効果」である。補助金政策には大きな副作用があるのだ。

予備費を使った対策には限界があるため岸田総理は次の経済対策の取りまとめを指示した。9月中にまとめて10月3日から臨時国会を招集する予定である。一応「新しい資本主義」も盛り込む予定のようだがインフレ対策で手いっぱいになってしまうのではないかと思われる。

できる手段は全部使って円安を防ぎ時間を稼ぎその間に経済対策をまとめるという綱渡り的な状況が続いている。

そんな中、岸田政権が足を取られているのが統一教会問題の処理と国葬問題だ。国葬問題に関しては「丁寧な説明」を心がけたもののメディアからは従来の説明を繰り返すだけだったと評価された。統一教会問題についても自民党側の十分な協力は得られなかったようだ。

全数氏名公表を主張する岸田総理に茂木幹事長が譲らなかったと時事通信が伝えている。関わりがあった議員は179人だった。このうち名前が公表されたのは121名である。となると当然野党は残りの中に隠したい人がいるのでは?などと追及することが予想される。

ただし記事を読んでもなぜ茂木幹事長が全氏名公表を嫌がったのかは伝わってこない。

アメリカとヨーロッパが金利を上げる中で、日本だけが低金利で発行できる国債に依存した経済対策をすることは難しくなりそうだ。だが経済対策は行わなければならない。小麦や石油など一般市民の生活に大きく関わるものの値段に大きな影響があるからだ。野党はこうした経済対策には反対しにくいため当然統一教会問題などを追求してくるはずである。だが自民党内にはどういうわけか「抵抗」があり思うように処理が進められない。

当座の円安の進行はストップできたのだがこの効果がいつまで続くかもよくわからない。退任を控えた黒田総裁が思い切った行動に出る可能性も期待できない。

当面綱渡りの難しい政権運営が続きそうだ。

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