トランプ前大統領(以下トランプ氏)の自宅に大量の機密文書が見つかった事件に新展開があった。当初ワシントンポストが指摘していた通り核関連の文書が見つかったようだ。トランプ氏が国家機密をずさんに扱っていたことがわかると同時に「それでも気に留めない人がいる」という点にも驚きを感じる。
トランプ氏の邸宅「マール・ア・ラーゴ」がFBIに急襲されたというニュースは驚きをもって伝えられた。当初核関連の文書も含まれていると報じられたからである。その後目録が出てきたのだがその中には核関連の情報は入っていなかった。このため「ワシントンポストの例のあの話はどうなったのだろうか?」と感じた人も多かったのではないだろうか。それが今になった伝わってきた。ロイターは「トランプ邸の押収資料、外国政府の核戦力機密文書も=米紙」とワシントンポスト紙の報道を伝えている。
ではこの文書はどれくらい厳密に管理されていたのだろうか。実は私物などとごた混ぜになっていたということもわかっている。もちろん機密情報も含まれるのだが機密指定されていない公文書も1万点以上回収されている。機密文書と関連するニュース記事の切り抜きというところまではわかるのだが、CNNは衣類や贈答品も一緒に保管されていたと書いている。こうなると「想い出に持ち帰ったのではないか?」とすら思える。外国に売り渡す目的であればもっと厳密に管理しても良さそうだからである。
実際にトランプ氏には「コレクション癖」があったと指摘する記事がある。トランプ氏のコレクション癖を罰する法律はないので、スパイ容疑や情報管理の杜撰さといった問題に落とし込んで処理をしなければならない。トランプ氏の道徳観念が法律や常識の枠を超えているということがわかる。
今回わかったのは書類の中から「外国の核戦力に関する機密書類が見つかった」というニュースだ。ただしワシントンポストが複数の関係者から聞いた話だということになっている。各紙が伝えているのはその伝聞情報になる。ハフポストによると問題視されているのは「普段なら政府高官の中でも限られた人しか見ることができないような文書が警備体制が盤石ではない私邸に保管されていた」ことの是非である。トランプ氏に機密情報売り渡しの意図がなかったにせよ他国に盗まれる危険性は極めて高かった。
ただしこの文章が厳密に何だったのかについてはよくわかっていない。このためワシントンポスト紙の信憑性も一応は疑ってかからなければならないだろう。
CNNがワシントンポスト記者から聞いた話によると「外国の防衛に関する文書」でその中に核兵器の情報が含まれていたそうだ。捜査員ですら見ることが許されないというところから捜査と取材の難しさと異様さがわかる。基本的に内容を伝えられないものを伝えようとしている。信憑性が担保できる範囲で国名を特定しないなどの配慮が求められているのだろうということになる。
この外国がどこの国だったのかはわかっていないのだが、仮に敵国であれば送り込まれているスパイや協力者が誰なのかが露見しかねない。一方でこれが同盟国であった場合には「実は信頼されていなかった」ということになり外交上大問題になるだろう。
CNNのキャスターは「当初伝えられていた核に関する情報」と「今出てきている話」は同じ国の同じ情報なのかとワシントンポストの記者に尋ねている。しかしながら「政府の中でも限られた人たちしか見ることができない」ほどの情報について記者がやすやすと類推することなどできない。記者は取材の微妙さを説明するばかりでダイレクトに質問に答えることはなかった。
それほど微妙な情報であるにも関わらずトランプ氏の保管方法はずさんだったのだからアメリカ世論は大騒ぎになっても不思議はない。だがこのニュースがアメリカ合衆国の選挙事情を変えることはないものと思われる。実際に心配しなければならないのはこの状況なのかもしれない。MAGA共和党と呼ばれる集団ができており捜査を進めるFBIを脅迫したりしているそうだ。
アメリカはそれほど分断され「国家機密の漏洩流出など大した問題ではない」というところまで来てしまっているのである。