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五輪汚職KADOKAWAルートで冬季五輪札幌招致にも赤信号

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東京オリンピック・パラリンピックをめぐる汚職事件で大会スポンサーに選定されるように便宜を図った見返りに7,600万円を支払ったとして出版大手KADOKAWAから逮捕者が出た。

KADOKAWAの角川歴彦会長が「AOKIとは違う」という認識を示した次の日の出来事だった。普通「汚職事件」というととても悪いことのように思えるのだがこの事件にはどこか釈然としないものが残る。通常のビジネスと公金の境界線が曖昧なため、関係者に贈収賄という意識が薄いのだ。

IOCのバッハ会長は札幌市長との面談を直前でキャンセルした。検察の捜査が進展する日本から距離を置こうとしているようだ。東京の不始末によって札幌のオリンピック開催はかなり難しくなったといえるのかもしれない。IOCは日本で十分に稼いだ。後の騒ぎは検察に任せようということなのではないかと思う。

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Quoraの議論を見ていると「これがなぜ贈収賄になるのか」という点が曖昧になっているようだ。まずここを整理してゆきたい。東京オリンピック・パラリンピックには政府からたくさんの資金が流れている。関連支出が1兆円になる。公金を扱っているから公正に運用しなければならない。だからこれは贈収賄事件であるとして捜査されているのである。

だが考えてみれば「オリンピックは公金を扱っている」という認識は国民の間でもかなり希薄である。国債で調達すれば政府はいくらでも借金ができるという認識が広まっているため、1兆円もの国費が軽く考えられているのかもしれない。改めて見てゆこう。

2019年に会計検査院が発表した時の金額は1兆円を越していた。国が公表していた金額は2880億円だったのだがその4倍に上っておりすでに7720億円が支出されていた後だった。この時は会計検査院の要請で改めて関係省庁に資料を提出するまで総額そのものがわからなかったそうである。この2880億円も実は当初の発表から比べると膨らんでいた。桜田義孝担当大臣が発表した2018年10月の時点では1725億円が支出されているということになっていた。この時も会計監査院は8000億円が支出されていると指摘していたのだがそれを否定する形の発表になっていた。政府は野党からの指摘がなければ、必要支出を低く発表しようとする傾向がある。

特徴は「直接の経費」ではないところにお金が使われていたという点だ。オリンピックなら承認されやすいという理由で省庁が便乗した予算も多かったのかもしれない。また全体を把握している人が誰もおらず「警察官の待機施設の費用の132億円が公表されていない」というような問題もあった。

税金の使い道は厳しく吟味されなければならないというのは民主主義の原則だ。だが、この一連の経緯からわかるように政府機関の認識は極めて杜撰であった。杜撰だったのは政府機関だけではない。理事経験者たちも「自分たちがみなし公務員である」という認識が極めて薄かったことがわかっている。

時事通信が組織委員会理事経験者の一人(名前は公表されていない)に取材しているが、自分たちが公金を扱うみなし公務員であるという認識は持っていなかったそうだ。「担当各部署」が決めたことが報告されるだけであとは単なる意見交換だったと言っている。

この空気を作っていたのが森喜朗会長だった。のちに「女性がたくさん入っているから理事会の会議は時間がかかる」という不適切な発言で辞任している。当時は日本のメディアでも盛んに伝えられたがBBCでも伝えられ日本の旧弊ぶりが世界に広まった。

この時に問題になったのは女性蔑視発言だったのだが、今にして思えば森喜朗会長が組織委員会が公金を管理する意識を持っておらず、会議体を単に「時間がかかる面倒なもの」としか捉えていたということもわかる。長い目で見れば実はこちらの方が問題としては大きかったのかもしれない。国会は憲法の面倒な制約でがんじがらめになっているが、オリンピック・パラリンピックはむしろ自分が好きなように振る舞える「我が家だ」と考えていた可能性が高い。

このような体制下でガバナンスが効かなかったのは当然といえば当然なのだろう。これが結果的に高橋治之容疑者が「活躍」するステージを作った。

そのツケは大きかった。まずAOKIから逮捕者が出た。まず逮捕されたのは紳士服の行商からスタートし一から企業を大きくしてきた青木拡憲前会長だった。現時点で青木会長は容疑を認める意向だという。これまで容疑を否認してきたが捜査の過程でいろいろな説明を受け「それでは仕方ない」ということになったのかもしれない。

次に「特捜の魔の手」が伸びたのはKADOKAWAだった。角川歴彦会長は経営危機にあったKADOKAWAを再興した企業の功労者である。おそらく根っからの悪人ではなくむしろ真面目なタイプだ。兄の角川春彦氏がコカイン騒動などで経営を退いてからKADOKAWAのイメージ刷新と多角化を推し進めた。

危機から脱却するために多角化を図ったという点でもAOKIとKADOKAWAには共通点がある。どちらもCI(ブランディング)改革を行なっている。この世代の人たちにとって近代化とは会社名をローマ字にするということなのかもしれない。なんとなくグローバルな印象になるからだ。

このように角川会長はAOKIとは違うと言っているが実はこの二つの会社には類似点が多い。

角川会長は「戸惑っている」「犯罪を犯した意識はない」と発言していた。マスコミの前に堂々と出てきたところから本当に罪の意識はなかったのだろう。

角川会長は「電通の雑誌局長だったはずなのに実は組織委員だった」と指摘している。KADOKAWAは経営多角化を進めておりその一環として電通に協力を求めたという認識だったようだ。それがいつの間にかオリンピック組織委員会とつながっていた。

電通・コンサルタント・組織委員会の垣根は極めて曖昧だったようだ。つまりどこからどこまでが汚職でありどこからどこまでがビジネスなのかがよくわからなくなっているということになる。また「こういうことはビジネスではよくあること」とされており、電通が普段からコンサルタントを通じた働きかけを許容しているということがよくわかる。独占的にメディア枠を扱っているという強みがあり、そこに入り込むためには企業は電通の関係者に「ご挨拶」として資金を提供しなければならないのである。オリンピックもテレビのCM枠と同じような「独占案件」だったのだ。

日本は市場の閉鎖性が高くどこも利権でがんじがらめになっているため古いタイプのビジネスマンが新規にビジネスを立ち上げようとするとこういう面倒なことに巻き込まれてしまう。新参者が新規参入するためには「顔役にご挨拶」をすることになる。この時に手土産持参でゆかないと誠意がない人とみなされる。一般の社会常識だが公金が入るとたちまち贈収賄事件になる。

結果的に、電通を頼った多角化路線の影響は非常に大きなものになった。AOKIに続きKADOKAWAからも2名の逮捕者が出た。また今回逮捕された深海和彦氏はKADOKAWAが「雑誌局長だった人」と言っている人だ。キャリアと人脈を生かして電通卒業後の収入源にしていたということなのかもしれない。

もう一つ影響が出ている分野がある。それが札幌オリンピック招致運動である。おそらくこの状態では札幌オリンピックは開けないだろう。バッハ会長と札幌市長の面会は土壇場でキャンセルされた。スイス・ローザンヌで面会するはずだったそうだが、突然「都合がつかない」としてバッハ会長が逃げたようだ。

日本は形式的には先進国なのだがことオリンピックに関していうと汚職が蔓延する発展途上国並みの意識しか持っていない。こんな状態でオリンピック開催都市に選定されたとしても様々な問題が浮上する可能性が高い。そもそもまともな企業はスポンサーにはならないだろう。

またIOCとしても検察捜査でがんじがらめになっている今の日本には魅力はない。日本では十分に稼いだ。善良なスポンサー企業から逮捕者が出るという事態になっても、それは日本の組織委員が勝手にやったことであり彼らには一切関係がない。彼らはまた別の旨味を探して新しい候補地を探すことになるのだろう。

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