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共に民主党が新代表に「対日強硬派」の李在明氏が就任

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韓国の多数派野党「共に民主党」に新しい代表が誕生した。日本では「対日強硬派」として知られている。ただ日本の報道を見ても韓国で何が起きているのかはよくわからない。そこで韓国語の各紙を探し出して自動翻訳で読んでみた。

李在明新代表は尹錫悦政権と是々非々で対峙するとしている。ただしこれは体面を気にした韓国流の表現に過ぎない。実際には政権との対決姿勢が全面に打ち出されてもいる。強気の背景にあるのは共に民主党の議席である。前回の総選挙で大勝しているため議会では依然多数派なのだ。

ただし李在明氏は自身が「司法リスク」を抱える。党内規約を改定し「政治弾圧であることが明白ならば代表を辞任しなくてもすむ」ように規約を改正したというのだが党内外からは批判もあるようだ。

韓国政治は議会と大統領が対立している。このため政権への対決姿勢を前面に押し出した李在明師が勝利した。李在明新代表が「対日強硬派」というのは確かだが実はそれだけではないということがわかる。

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今回の参考資料は文末にまとめた。

まず総論を見る前に共に民主党について確認する。2020年4月の総選挙で共に民主党は過半数を超える180名の議席を獲得した。日経新聞は「与野党が対決する法案は6割の賛成がなければ上程できないルールがあり180議席あれば与党単独での上程や採決が可能となる」と解説している。政権を失ったとはいえ単独で法律を上程し採決が可能な議員数を確保している。「野党」とはいえ無視できない存在なのだ。一方で与党「国民の力」は党首李俊錫氏が党員資格停止処分を受けている。つまり少数与党である上に権力闘争が始まっていることになる。尹錫悦大統領は与党・国民の力がまとまらない中での政権運営を余儀なくされているのだ。

今回読んだのは東亜日報、中央日報、聯合ニュースだ。記事自体は自動翻訳である程度読めるのだが検索するためには韓国語がタイプできなければならない。

  • 李在明新代表は尹錫悦政権とは協力すると言っている。つまり民主主義的な党であると主張している。
  • 一方で「尹錫悦政権が道を外すようなことがあれば鋭く対立する」と主張する。つまり強硬姿勢には大義名分があると言っている。
  • ではその「道を外した政策」とはどのようなものか。中央日報は「スーパーリッチ減税・庶民予算削減」などの常識はずれの政策を行うようなことがあれば双極化が悪化するだろうといっている。日本語風の言い方をすると「金持ち優遇庶民いじめの政策では格差が拡大する」というような意味になるのだろう。
  • 李在明氏は党内に熱烈なファンがいる一方で一部の人たちが熱心に支持しているだけではないかという批判があるようだ。李在明氏はこれを否定している。李在明氏の得票率は77.77%だったそうだ。
  • 李在明氏は「司法リスク」を抱えている。東亜日報はこれが与野党衝突の雷管になるだろうと指摘した上で大統領選挙第三ラウンドと呼んでいる。つまり議会・多数派野党と大統領の対立は議場だけでなく司法の場にも持ち込まれているということになる。李在明氏はこれに対抗するため「政治弾圧とみなせば代表を辞任しなくて済む」ように規約を改定した。
  • 最高委員と呼ばれる意思決定機関があるようだが委員として選ばれたのは首都圏の議員だけだったそうだ。李在明新代表は全羅道を意識し「湖南地方に配慮する可能性がある」とした。

湖南地方への言及は日本人にはよくわからないところだ。大統領選挙の結果を見るとソウル特別市を除く京畿道、全羅道、済州道で李在明氏が勝利している。全羅道は古くから革新系の地盤なのだが京畿道(ソウル郊外の地域)の方が人口が多いため共に民主党や李在明氏の支持者が京畿道に集まると相対的に全羅道の影響力が下がってしまうという構図があるのだろう。

記事の中に「개딸」という奇妙な単語が出てくる。개(犬)딸(娘)なので自動翻訳だと「犬娘」という奇妙な翻訳になるのだが、元々の意味はよくわからかった。もともと「応答せよ1997年」というドラマではやった流行語だったようだが「改革に熱心な娘」という意味で共に民主党内部の改革派の名前として再解釈されたとナムウィキには書かれている。彼女たちは主に李在明氏を支援しているようだ。

李在明新代表は常識的な政治が行われるならば民主党を重要視する共に民主党は与党と協力するだろうという姿勢を示している。ところが実際には「与党と対峙するためには穏健な人よりも多少激しい人が必要だ」という気持ちがあるようだ。これが李在明氏が代表に選ばれた背景にあるのだろう。

日本では「反日姿勢」が強調されがちだがもともと対立姿勢を煽って支持者をまとめようという気持ちが現れているだけなのかもしれない。彼らには彼らなりの要求があり「その正義」が実現しないならば強い調子で相手を糾弾しようという姿勢なのだろう。経済的に隣国と付き合ってゆかなければならないとすればこの激しい気性を織り込んだ上で理解しなければならないということになる。

李在明氏は尹錫悦大統領の対立候補だった。時事通信が日本語で簡単に経緯をまとめている。李在明氏は今年6月に国会議員に初当選しており次期大統領選出馬を視野に入れいているそうだ。まずは2024年4月の総選挙で共に民主党の勝利を目指すそうだ。一部の報道にあった「司法リスク」を避けるため「政治弾圧なら代表が職務停止規定を取り消せる」ように規約を改正したそうである。

だが国民の力は代表が「セックススキャンダル」で党員資格停止に追い込まれている。代表という地位にあっても成果を挙げ続けなければ失脚しかねないという厳しさが韓国の政治にはある。

参考文献

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