内閣改造でも岸田政権の人気は回復しなかった

岸田政権が内閣改造を行って初めての世論調査が日経新聞から出て来た。結論だけをいうと内閣改造でも人気が回復することはなかった。選挙と人事で空気の刷新を図ってきた安倍政権との違いが現れた格好だ。

印象が変わらなかったのは統一教会問題が依然くすぶり続けているからだろう。読売新聞によると主に高齢者がネガティブな印象を積み上げているようだ。特に最初の印象がなかなか変わりにくい年代の人たちだ。






事前に時事通信から世論調査の結果が出ていた。時事通信の世論調査は選挙後・内閣改造前に行われていたため「次の世論調査に注目が集まる」とされていた。世論がコロナ対応を疑問視し統一教会問題が追い討ちをかけた格好だった。これまで世論を刺激する課題を避けて「安全運転」に徹して来た岸田政権だがコロナの波には勝てなかった。むしろこれまで「無関心」を支持基盤にしてきたため慌てて説明しても誰も聞いてくれなかったと理解してもいいかもしれない。

読売新聞の世論調査の内容はおそらく岸田政権に大きな影響を与えたものと思われる。岸田政権は安倍元総理の後継であることを内外に宣言しようと国葬を決めた。だが60歳以上の高齢者はむしろ統一教会問題に大きく反応し逆に支持を減らしてしまった。

高齢者が統一教会問題に大きく反応したのはおそらくワイドショーを通じて統一教会の合同結婚式問題を知っていたからだろう。有名な芸能人が合同結婚式に参加してそのあと引退同然となったり、有名な作家の娘で自身もタレントだった人の奪還騒ぎなどがあった。最近は「ある芸能人」としか語られなくなった桜田淳子さんの合同結婚式が行われたのは1992年だったそうだ。作家の飯干晃一さんが娘の飯星景子さんを「奪還」するためにワイドショーで教団批判を繰り返していたのも同じ年だった。

これが朝日新聞のように政権に批判的な新聞の世論調査であれば岸田政権も特に大きく反応しなかったかもしれない。読売新聞読者の特に高齢読者層が動いたことが結果的に岸田政権を内閣改造に駆り立てた。

とはいえ日経新聞の世論調査で「不支持が増えた」わけではない。どちらかというと「内閣改造をやっても支持は回復しなかった」ということになる。ワイドショー経由で漠然と旧統一教会にネガティブなイメージを持っている高齢者は「説明」くらいで印象を変えることはなかったということになる。

このように日本の政治は漠然とした印象で動いている。このため、一度ネガティブな印象がつくとすべての見え方がネガティブになってしまうという特徴がある。日経新聞の岸田改造内閣評「なんとなく嫌い」という人が増えていることがわかる。政策が評価されないというような合理的な理由ではないため説得は難しそうだ。

  • 派閥の意向に囚われている
  • クリーンでない
  • 若手の登用が進んでいない

では「印象に引っ張られるのは高齢者だけなのか?」という話になるのだが、実は若年層も印象に大きく左右されている。それがわかるのが「WHOの新組織で日本に置かれる」という話である。記事が出た直後、Twitterでは「日本が食い物にされる」とか「中国にやられる」というような話が飛び交っていた。

もともとテドロス事務局長はアフリカの公衆衛生の向上をライフワークにしていた。日経新聞によるとWHO事務局長になったのは「エチオピアでの保健大臣としての実績」が評価されたからである。前の事務総長は選挙なしで選ばれた香港出身者だったがSARSの対応で中国に有利すぎるのではという批判があった。このため「選挙で選ぼう」という話が浮上した。選挙になると票をたくさん持っているアフリカが有利だ。そこで中国は自分たちに敵対しないような候補者を応援する作戦に変更しだのだ。

日本のような皆保険制度が導入できれば新興国の公衆衛生状況は大きく改善する。このためテドロス事務総長にとって日本のようなユニバーサルヘルスケアの導入はライフワークの一つだということになる。就任直後からこの姿勢は一貫している。

おそらくこれが安倍元総理であれば「日本のユニバーサルヘルスケアは世界が羨む次世代のスタンダードなのですよ」などと盛んに宣伝しただろう。すると「日本はすごい」と思いたい人たちはこぞってこの計画を称賛しただろう。

新組織の目標は「世界中の誰もが必要な医療サービスを負担可能な額で受けられる「万人のための医療」の実現を国際目標に掲げる」ということだが、安倍元総理の支持者向けに翻訳するならば「世界が羨む日本の素晴らしい皆保険制度を世界に広げてゆく」ための組織だということになる。

だが、岸田総理は「広島サミットで発表する」と自身のレガシー作りを全面に押し出してしまった。読売新聞はテドロス氏再選時に「WHO事務局長のテドロス氏再選…コロナ対応で「中国寄り」の批判も」とテドロス氏の中国寄りの姿勢を批判するような書き方をしているため、読者にはむしろこちらの方の印象しか残っていないのだろう。安倍元総理のコミュニケーション手法の違いを感じる。

安倍元総理は「有権者は漠然とした印象で政治を評価する」ことを知っていた。これを巧みに利用し「日本は素晴らしいのだ」というメッセージを送り続けていた。こうしたメッセージは感情のレベルで浸透するため安倍元総理がとても好きな人と安倍元総理がとても嫌いな人の両極端が生まれたものと思われる。

岸田総理は逆に「難しいことはすべてお任せで」と説明しない態度を貫いている。何もない時にはそれでもいいのだが、一度過去のネガティブな記憶と結びつくとそれを挽回するのは難しいのかもしれない。無関心が関係の基礎となっているため漠然とした印象だけで判断されてしまうからである。

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