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司法省・FBIとトランプ前大統領の対立が泥沼化し「核関連文書の持ち出し」の噂が広まる

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ネットニュースで「トランプ前大統領が持ち出したのは核関連文書のようだ」という不穏なタイトルを見つけた。これについてソースを追ってみたのだがオリジナルのロイターの記事には情報ソースは出ていなかった。のちに、ワシントンポストの消息筋の話だということがわかったのだが消息筋の話のため真偽は不明である。だが、ネット上ではこのワシントンポストの記事を引用した伝聞の記事が飛び交っている。現在の最新情報では「最高機密」が含まれていたらしいというところまでわかっているそうだ。ドキュメントができた瞬間に機密扱いとなり議会承認なしに解除はできないというクラスのドキュメントだ。

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時期としては非常に微妙なタイミングだった。選挙前90日前という期限が迫っていたからだ。選挙への影響を避けるため重大な捜査は行わないという慣例だ。最初に仕掛けたのはFBIだった。トランプ大統領の邸宅マール・ア・ラーゴに家宅捜索が入ったのだ。トランプ大統領は「急進左派の攻撃である」と反論した。

トランプ前大統領の主張に刺激され共和党が民主党を攻撃し始めた。さらにトランプ大統領支持者と見られる男性がFBIに潜入しようとして射殺された。FBIに対する圧力も強まっているようだ。武装した男の詳しい動機はわかっていない。

そこで仕掛けたのがガーランド司法長官だった。おそらくトランプ前大統領が開示を拒否するだろうことを見越して「何が持ち去られたのか明らかにしてはどうか?」と提案した。これでトランプ前大統領が拒否すれば「何かやましいところがあるのだろう」という印象を世間に与えることができる。

ガーランド司法長官は明らかに世論の反応に期待している。前大統領と司法省が世論選を繰り広げるというのはこれだけでもすでに「泥沼化」である。

BBCによるとトランプ前大統領は「開示には反対しない」と表明しているという。開示がなされれば実際にどんな文章が捜査対象になっていたのかはわかる。

ところが今回捜査対象になったドキュメントについてはすでに噂が飛び交っている。日本語で最初に読んだ記事はロイターの「核関連のドキュメントらしい」というものだったが情報の出所は不明だった。この時点で英語の検索をすると「どうやらワシントンポストの消息筋の話らしい」ということがわかった。ワシントンポストなのである程度の信頼は置けそうだが「消息筋」なので真偽の確かめようがない。CNNはこの時点で「情報は確認できていない」と但し書きをしていた。

その後、英語の記事が日本語に翻訳されあらましがわかってきた。

Quoraでこの話を二回に分けて書いたところ、英語ではすでに新しい情報が出ているということを教えてくれた人がいた。

  • 5ヶ月前から返還が要求されていたがトランプ前大統領はそれを無視した。つまり選挙直前を狙ったものではなくギリギリのタイミングだった。
  • 大統領は機密解除の権限を持っているが、一部例外のドキュメントもある。このため大統領が機密解除できなかった文書が持ち出された可能性がある。
  • 押収されたドキュメントの中には「最高機密」に当たるものが含まれているということまではわかっている。

ワシントンポストの消息筋の情報を確認することはできず、トランプ前大統領が情報開示に応じるとは思えないのだが、状況証拠は積み上がっていると言えるだろう。

時事通信がワシントンポストの内容の一部を書いている。「どの国の機密情報が持ち出されたのか」ということは今はまだわかっておらずすべては憶測の域を出ない。だが、仮に持ち出されたものがアメリカの機密であれば、アメリカの核の傘の下で守られている日本としても安全保障上の脅威ということになりそうだ。

同紙は「米国が持つ核兵器の情報が流出すれば、対抗システムの構築を図る敵性勢力に道筋を示すことになる」と危惧する専門家の声を紹介。前大統領宅の家宅捜索という前代未聞の捜査当局の対応は、安保上の深刻な懸念を裏付けるものだと指摘している。

核兵器関連の機密文書捜索か FBIのトランプ氏強制捜査―米紙

今後、どのような開示がなされるのかに注目が集まるが、そもそもトランプ前大統領が何の目的でドキュメントを持ち出したのかは不明のままである。

参考文献