岸田政権が10日に内閣改造を前倒しするのではないかという観測が出てきた。8月6日はグテーレス事務総長が広島を訪れる。ここから8月9日の長崎まで「原爆忌」の期間が始まる。そのあとですぐに内閣改造をしようというのである。事前の予想は「9月の前半」だったため約一ヶ月も前倒しされたことになる。狙いはどこにあるのか。そしてそれを各社はどう伝えているのか調べてみた。
岸田総理はもともと内閣改造を9月前半に予定していた。この時の説明は時事通信によると次の通りだった。
- 人事をめぐっては当初8月3~5日の臨時国会の閉会直後に行うとの見方も一部にあったが、日程上厳しいと判断された。
- お盆明けの8月下旬も検討されたが、銃撃で亡くなった安倍晋三元首相の「四十九日」を同25日に控える。
- 首相が同27、28両日にチュニジアで開かれる第8回アフリカ開発会議(TICAD8)に出席を予定している。
- 9月上旬へずれ込む見通しとなった。
確かにどれももっともなように思えるのだが、よく考えて見ると決定的な理由にはならない。このため、安倍元総理が亡くなってすぐの人事を避けて状況を落ち着かせようという狙いがあるのではないかと指摘されていた。後藤謙次氏はこれを「瞬間冷凍」という言葉で説明していた。服喪期間をコントロールしている間に安倍派を整理する時間を取ることができる。その総決算が9月末に国葬になるはずだった。この時に後藤氏はこれを岸田氏の「深謀と鬼算」と表現している。
ところが人間はやはり神にはなれず「鬼算」を働かせることはできない。この後次々と政権に難題が降りかかる。コロナの第七波で「政府の顔がない」と批判され、統一教会問題も予想外の盛り上がりを見せている。最後にやってきたのは誰も計算していなかったペロシ議長の卒業旅行が巻き起こした混乱である。中国は事態をエスカレートさせ力による現状変更に成功しつつある。
台湾問題が大きく動いたことで「早くこの問題に答えを出さなければ保守派が騒ぎだす」ということになったのではないかと思う。おそらくその答えは誰が防衛大臣になるかによってわかるだろう。党内外をまとめることができる人材が配置されれば「一丸となってこの問題に取り組もうとしている」ということがわかるのだろうし、逆に安倍派に配慮した人事になれば「やはり党内政治を優先した」ということがわかるだろう。
いずれにせよ、淀んだ空気を一掃するためにはまず足元を固めなければならない。安倍元総理の四十九日やお盆などと言っている場合ではなくなってしまったのだ。
各社がこの件について報道している。
- 【速報】岸田総理、来週10日にも内閣改造・自民党役員人事の方針固める(TBS)
- 岸田首相が内閣改造を前倒し、10日実施の意向…旧統一教会と関係の閣僚ら処遇注目(読売新聞)
- 内閣改造・党人事10日実施 麻生、茂木氏続投固まる(共同通信)
- 岸田首相、10日に内閣改造 党人事も、局面転換狙う―林・鈴木氏も続投へ(時事通信)
- 岸田首相 内閣改造と党役員人事 来週10日にも行う意向固める(NHK)
今回の一番の注目ポイントはやはり安倍派の処遇である。これが色濃く現れているのが読売新聞だ。読売新聞は確定している二之湯・金子両大臣(参議院議員ではなくなっているので続投はありえなかった)以外のことはほとんど書いていない。記事が出たのは22時30分なのでギリギリまで情報を取ろうとしたことはわかる。が今表に出せるのはこの程度の情報だ。今後【独自】として様々な観測気球をあげるかに注目が集まる。重要なポストについては国民に支持されているのかは極めて重要だ。
読売新聞は「だが、新型コロナウイルスの感染再拡大や緊迫化する台湾情勢などを踏まえ、秋の臨時国会に向け、早期に体制を整える必要があると判断した」とまとめようとしているのだが、新型コロナ第七波と統一教会問題だけではここまでの大きなスケジュールの変更はなかった。第七波は発熱外来がちょっと混乱しているだけであり、統一教会問題に至っては何が問題なのかわからないという認識なのだろう。有権者の多くは政権に抗議こそしないがこの間の一連の政府の対応を冷静にみているのではないだろうか。
だが台湾情勢が大きく変化したことで状況は大きく変わった。岸田政権が日本の安全保障について懸念しているのか党内の動揺を恐れているのか。
繰り返しになるがこれは今後の人事によって明らかになるだろう。
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