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岸田政権のスタートアップ推進のニュースになぜザワザワするのか考えてみた……

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最低賃金のニュースを調べていて、政府の成長戦略はどうなっているのだろうかと言うことが気になった。今、岸田政権が一生懸命頑張っている具体的政策は二つある。一つはベンチャービジネスへの投資拡大でもう一つがベンチャー人材の育成である。この二つのニュースをみて「なぜザワザワを感じるのだろう?」と思った。なんとなくスッキリしないのだ。これが正解というわけではないのだが一応考えたことを言語化しておこうと思う。なおニュース主体ではなく「私見」なのでニュースが知りたい人は読み飛ばしてもらっていいと思う。

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政府のスタートアップ政策にはいくつかの目玉がある。一つ目はスタートアップ担当大臣の設置である。最初のお仕事は「投資拡大のための受け皿を作る」というものになるそうだ。だが投資家の視点に立ってみると、日本が魅力的な投資先になるためにはいくつかの要素が必要だ。

  • 投資に優しい環境になっていること
  • 金融政策が低金利に縛られていないこと
  • やる気のある人材が多く揃っていること
  • 消費市場に余裕があり新しいサービスや製品を貪欲に求める消費者がいること

この一つひとつについて研究してもよいのだが短く言えば「このうちの何もない」といえる。山際大臣がなぜ担当大臣になったのかはよくわからないが、この方はもともと獣医さんでビジネスの専門家ではないということが気になる。ロンドンで大々的に発信したものの大したニュースにならなかった金融所得倍増計画の一環なのだろうなとは思う。

また内閣に「グローバルスタートアップキャンパス構想推進室」なるものが作られたそうだ。実際の構想の中身を調べてみた。TBSが「スタンフォードやMITが日本に? 総理肝いり「スタートアップ10倍増計画」で海外大学誘致へ 」というニュースを伝えている。

萩生田さんなのかと思った。萩生田さんは要するに「日本にスタンフォードやMITを誘致すれば日本にもスタートアップの土壌が作られる」というようなことを自慢げに話している。

発想が昭和だとは思ったのだが、萩生田さんの何にざわざわするのかはよくわからなかった。

加計学園の問題について検索してようやく理由の一端がわかった。当時の政権は総理との個人的なつながりが強かった加計学園を優遇したかった。このことが問題視され当時の国会は大騒ぎになった。この時に「防波堤」の役割を果たしたのが萩生田さんだったのだ。このニュースのその後を知っている人はあまりいないと思う。創設の目的が「四国に獣医を増やすため」だったため四国枠というものが作られた。だが四国枠には応募者があまりいなかったため(つまり公費で四国に縛りのある獣医師免許を取ろういう人はあまりいなかったのだ)現在では運用が変わっている。つまり獣医師会が利権を守ろうとしたもののそれが政治的にこじ開けられた。結局は国会全体が大騒ぎして新しい獣医師養成の学校がひとつできただけだった。

総理のお友達優遇という割には「利権」としても小粒だったため、改めて調べるまで一体何が起きていたのかをすっかり忘れていたくらいだ。その後も加計会長が「不正入試疑惑 加計理事長が直撃に「何が説明責任だ!」」と息巻いたというニュースが伝えられたりしたようだがすっかりノーマークだった。このころの日本は新型コロナで大騒ぎになっておりそれどころではない状態になっていたからである。

岸田政権があまり泥臭いことはやりたくないがなんとなくカッコイイ形のあるものに憧れのある浮ついた政権なのだということがよくわかる。だがその発想も「日本にも大学を誘致したり箱を作ったりすれば自ずとベンチャーの気風が浸透するだろう」程度の発想でしかないわけだ。

ざわざわの言語化はここまでだ。つまり「終わっている発想」をあたかも起死回生策のように喧伝することに当惑しているのだなと思った。色々大騒ぎをした割には結局何も変わらず次から次に「新しい箱」が出てくることにうんざりしているという側面もあるのだろう。ただ別にそれがなんらかの害になるわけではない。

最近ではYouTubeなどで「これからの企業はシンガポールだ」などというような情報がいくらでも出てくる。つまりある年代から下の人たちは日本はもう成長しないのだろうなということに気がついており外に出る機会をうかがっているのである。確かに政府のスタートアップ政策は単なる税金の無駄使いか掛け声倒れに終わってしまうかもしれないのだがそれが日本人の終わりを意味しているわけではない。むしろ選択肢が広がっておりやる気のある人たちにとってはチャンスを掴みやすい環境になっていると言えるかもしれない。情報は豊富にあり、後は行動するだけだ。

日経はいかにもスタートアップ起業家らしい名前の渡辺創太氏がシンガポールに渡った理由を紹介している。1995年生まれで最初からネットが繋がっている世界に生まれた世代の起業家だ。日本はGAFAに敗北したとはっきり言っているがこれは必ずしも日本人が負けたというわけではない。日本人の中にも最先端で活躍している人は大勢いるし、そうした人に資金を出す人もいる。渡辺さんは25億円集めたそうだ。

渡辺さんは実例を作ることで日本の税制を変えようとしているようだが、平成の世代はベンチャー起業家が政治と関わることで次々とひどい目にあってゆくという事例を見ているので「あまり日本にこだわらずに儲けられるところで世界を相手に儲ければいいのではないか」という気がする。

昭和の感覚を生きる政治家は「確実に儲かる」ものが利権化できることがわからないと動いてくれない。また出来上がったブランドの権威にはとても弱く大きなものは保護しようとする。萩生田さんがスタンフォードやMITというビッグネームに反応するのはそのためだろう。だが渡辺さんによれば「名前が確立する頃には新規参入者が増えて競争が激化する」のだから日本がこの分野でキャッチアップすることはおそらくないのではないかと思う。

ようやく「クラウドはすごいらしい」ということが伝わると「では日本もクラウドだ」ということになる。「今さら国産クラウドの育成」、自民党と経産省は何を考えているのかという記事によると肯定的な人は60歳以上だが現役の40代と30代は酷評しているそうである。

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