ざっくり解説 時々深掘り

テレビではおそらくやらない旧統一教会関係で騒ぎになっている人の背景について調べてみた

多分、テレビではあまりやらないであろうと思われる旧統一教会に関連が噂されている議員さんたちについて手当たり次第に調べて見た。安倍元総理に近い人たちもいるのだがそうでない人たちもいる。そうでない人たちは選挙にあまり強くないという共通点がある。何れにせよ数が多すぎるためおそらく全部は拾いきれていないと思う。

広がり方を見ていると茂木幹事長が主張するように「自民党の組織的関与はなかっただろうなあ」とは思う。震源地がどこなのかはわからないのだが、徐々に「あの団体に頼れば選挙はなんとかなる」ということになっていったのかもしれない。ただ「広がる」きっかけに重鎮たちの関与があったということは確かなようだ。

これが安心感を与え党内外に広がっていったのであろう。

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維新

時事通信が「維新13議員が旧統一教会と接点 藤田幹事長「組織的関わりなし」」と報道している。元々は関わりがあるかないかが問題なのだから「組織的関与がない」という線引きをされても困るなとは思うのだが、西日本中心に統一教会系の選挙協力が常態化していた現状を見ると「政治とはこんなものなのだ」と維新の議員が思うのは仕方がないことなのかなという気もする。

岸信夫防衛大臣

安倍元総理の実弟だが岸家に養子に出ていた。物心がつくまで養子ということを知らなかったというのは有名な話だ。岸さんの派閥はもちろん清和会・安倍派だ。岸元総理大臣の孫の2人である安倍晋三・岸信夫両氏がいることで福田派として出発した清和会が「改憲派の本流なのだ」という位置付けになる。

岸さんは「お手伝いとして統一教会の信徒が電話による呼びかけに参加している」ことを告白した。統一教会について問題があることは知っていたが、特に疑問には感じていなかったと説明している。その程度には当たり前になっていたということだろう。

なお山口二区は民主党が強かった時代があるものの岸さんが出るようになってからは安定して岸さんが勝っている。つまり選挙が弱いので頼ったというわけではなさそうである。ただ山口県西部は元々民主党が強かったようだ。単に岸家ブランドで人気が回復したのか、あるいは別の要因であったのかなど疑い出すときりがない。

現在体調を悪くされているようで防衛大臣を続投されるのかに注目が集まっている。

福田達夫総務会長

この人も安倍派だ。念のために書いておくと清和会はもともと福田赳夫さんが作った派閥で安倍家のものではなかった。この福田達夫さんは創業者の孫にあたる。いわば「創業家のプリンス」の立場にいる。

派閥の領袖ともなればあまり選挙基盤が磐石でない議員が当選できるように色々な支援をしてやらなければならない。だが福田達夫さんはそれについてあまり実感が持てていないようである。

祖父と父親がともに総理大臣というサラブレッドで父親の総理大臣秘書官として政治デビューした。群馬県連が公募をして応募したことになっているが、当然福田達夫さんの他に応募者はいなかった。事実上の世襲だが世襲はしなかったことになっている。

このため福田さんに選挙に不安はない。だが派閥の領袖的立場にはないため他の候補者の票の割り当てなどは行う必要がないという立場にいる。このため「私は統一教会について聞いたことがない」といい「何が問題かわからない」と発言しマスコミで問題視された。

福田さんは今回の人事で総務会長を続投するかが注目されており一部で交代説が出ている。また面倒見が意外と悪いようだということになれば「派閥の領袖」には選ばれなくなるのかもしれない。福田康夫首相について色々見聞きしているはずだが、それについてご本人がどう考えていたのかというのはまた別の話である。

福田さんが派閥というものの存在をどう考え、領袖が果たした役割についてどう理解しているのかが気になるところだが、マスコミは大挙して攻め立てるような報道してしまったためにご自身の口からこのことが語られることはないのかもしれない。

二之湯智国家公安委員長

自民党は派閥の領袖だけではなく地方組織の長にも「器」が求められる。器というと聞こえはいいのだが結局「金銭で支援できるのか」ということになる。そのことがわかるのが二之湯さんである。茂木派・谷垣グループに所属していたが参議院議員を退任された。この方は京都の自民党府連のまとめ役だった。

それが良いことなのか悪いことなのかは別にして組織のトップともなれば「どういう面倒を見てくれるのか」が気になってしまうのというのが日本の政治風土なのだろう。

二之湯さんは統一教会の関連団体に名前を貸していたことが判明。市議会議員から京都府連の会長に就任した。2021年6月に引退を表明しているため現在民間人となっているがしばらく岸田政権の人事が行われないためそのまま国家公安委員長を続けることになる。ご本人曰く「クビにならない限り続ける」とのことだ。国葬については国の威信をかけて警備をすると強い意欲を表明している。

なお二之湯さんがどこから教団との関係を持ったのかは不明である。また統一教会のことは知らなかったといっており考案のトップとしての資質には問題があるようだ。

二之湯さんは選挙前にちょっとした騒ぎが起きていた。それが「京都府連のマネーロンダリング疑惑」だ。候補者が地方議員にお金を回すと買収になってしまうので、一度府連が預かって収支報告書に記載することにしたとういうスキームである。

広島では「清浄化」をやらなかったために大問題になったのだが、現在の公職選挙法では一度府連を通して収支報告書に記載することで形式的に同じような目的のお金であっても合法化できる。一部週刊誌報道で問題になったが不発に終わり選挙に大きな影響は出なかった。

ダイヤモンドオンラインではこんな記事が読める。このレポートの中では「二之湯智大臣、西田昌司氏も選挙には強いとは言えないため、こうした手法を利用していたのではないか」と書かれている。

二之湯さんはこのやり方で960万円を京都府連に「寄付」している。つまり960万円を地元議員に還流しているわけである。そもそもこれをどうやって貯めたのかという点については記事では触れられていない。社会的には好ましくないが決して違法ではない広告塔活動よりも実際にはこちらの方が問題は大きいのかもしれない。ダイヤモンドのレポートでは「利用者」なのだが、実はこの創設に関わっているのではないかというのが文藝春秋の記事の趣旨である。

実情は今もわからず、二之湯さんは議員を引退されるため、今後このスキームが解決することもないのかもしれない。

井上義行参議院議員

この人も安倍派だ。安倍総理の秘書としてエスカレータ式に議員になったと思っていたのだが経歴を見ると議員になるのにものすごく苦労している。

安倍晋三内閣官房副長官の秘書官を経て安倍晋三内閣官房長官の秘書官になる。第一次安倍政権が発足するとそのまま内閣総理大臣秘書官になった。なぜか無所属で立候補し落選。みんなの党でも選挙区では落選したが参議院の比例で当選。みんなの党が解散すると再び所属先がなくなる。2016年に客員として細田派に入会した。2018年にようやく自民党から比例で立候補したが落選した。2022年に11番目でからくも当選した。つまり選挙区で勝てるほどの存在ではなかったということがわかる。

統一教会からは信徒(食口)であると紹介されたと言われているがご本人は否定している。

細田さんルート

工藤彰三衆議院議員

井上さんの例はわかりやすい。だがそうでない人もいる。工藤さんは名古屋市議を経て自民党公認で立候補し選挙区当選した。以来選挙区で四勝している。つまり普通に勝てるのだからあえて統一教会に頼る必要もなさそうだ。

細田博之衆議院議員が主催する議員懇親会に写真が出たことで関与が判明した。自身も応援を受けていたことを認めている。この人について調べていて「あるルート」の参加者であることがわかった。いわゆる細田ルートである。TBSがNEWS DIGブランドで伝えている。大手メディアではTBSが非常に熱心にこの問題に取り組んでいる。

この時の写真にいる議員(現職のみ)を挙げたが、細田衆議院議長が派閥を超えて幅広く声をかけていることがわかる。現職だけを挙げた。

  • 伊東良孝議員(二階派)
  • 御法川信英議員(無派閥)
  • 逢沢一郎議員(谷垣グループ)
  • 細田博之議員(議長のため無所属。元安倍派)
  • 中村裕之議員(麻生派)
  • 工藤彰三議員(麻生派)
  • 斎藤洋明議員(麻生派)
  • 藤原崇議員(安倍派)
  • 関芳弘議員(安倍派)
  • 田畑裕明議員(安倍派)
  • 奥野信亮議員(安倍派)
  • 八木哲也議員(石破グループ)
  • 上野賢一郎議員(森山派)

細田衆議院議長は安倍晋三氏が引き継ぐ前の安倍派の領袖だった人だ。衆議院議長になったため慣例によって派閥を離れその後を安倍晋三氏が引き継いだ。細田さんをみていると「派閥の領袖となるとある程度の太客」をいくつか持ち選挙の世話をしてやる必要があるのだなということがわかる。おそらくは安倍晋三さんも派閥の領袖としては同じ役割を期待されていたことだろう。

今回マスコミは統一教会問題を「売れる商品だ」と認識しており盛んに報道している。だが、扱わないものもある。参議院選挙の間に女性記者へのセクハラ疑惑が報道されたが、この時は当事者であるマスコミ各社が大きく騒ぐことはなく、その後沈静化していた。

週刊文春は取材の結果を「読売新聞とフジテレビは「セクハラ被害の報告は受けていない」などと細田議長のセクハラを否定。5社は調査したと回答したが、セクハラの有無は回答しなかった。また、8社が調査の有無を回答しなかった。」と書いている。

このようにマスコミも広い意味ではインサイダーであり「自分たちが関与しているかどうか」によって扱いが変わることがわかる。

北海道ルート

今回調べていて「西日本が多いな」とは思ったのだが、飛び地のようになっているところがある。それが北海道だ。

伊東良孝衆議院議員

まず、細田氏主催の写真の中に入っているのが伊東良孝衆議院議員だ。中川一郎氏の後援会青年部で活躍し鈴木宗男系の北海道議会議員を二期務めたという経歴の方のようだ。その後、釧路市長を経て自民党公認で衆議院議員選挙に立候補。選挙区で当選した。現在は二階派である。ここから「北海道に別の系統がある」ことがわかる。

伊達忠一元参議院議長

辿ってゆくとやはり清和会の重鎮に行き着く。伊達さんは立場的に「みんなの面倒を見てあげる」必要がある。清和会の問題というより「派閥の領袖が面倒を見る」という従来のあり方が問題なのかもしれない。相手の思想的な問題点が見えにくくなると同時に「この会派とは付き合っても大丈夫」というお墨付きになってしまうからである。反社会性があるにも関わらず「安全宣言」がされたような状態になってしまうのだ。

この方は北海道議会の議員を経て参議院議員になり四期務めた。安倍・福田・麻生内閣で自民党副幹事長を務めたことから参議院の重鎮とみなされていたことがわかる。のちに参議院幹事長に就任し参議院議長になった。この伊達さんが注目されているのはあるスクープのためだ。

自身と統一協会の関係を聞かれ「自分はよく知らなかったが配下の議員を当選させたお礼に行ったことがある」と説明したのである。つまり選挙に協力してくれる有力な団体という認識だったことがわかる。その中で安倍元総理が票の割り振りをしていたと主張したためHTBはこれを「安倍氏の関与」とスクープ扱いにした。

お世話になったとされているのは宮島喜文さんだが、今度は井上義行さんに票を回すので協力できないというようなことを主張している。青山繁晴さんが「ある派閥の長」とほのめかしたあとで取材に応じなくなってしまった。青山さんがこの派閥の長の名前を上げることはないだろうが、それが誰だったのかということは別の人から伝わったことになる。また統一教会といえども「一度に何人も」面倒を見ることはできないようだ。このため「枠」が埋まったと感じた宮島さんは自ら候補者を降りたそうだ。

フライデー「濃厚接触議員」ルート

フライデーが「濃厚接触議員」を挙げている。週刊誌らしい名前の付け方だが、ここはまた別の人脈があるようだ。バックグラウンドはバラバラだが選挙にあまり強くないという共通点がある。ただしここまで調べて来るうちに「統一教会は選挙で何かと助けになってくれる」という認識があれば、この程度の関係性にさほどやましさは感じないのだろうなという気になる。

  • 江島潔議員は安倍派。安倍元総理の地元下関市の市長だった。4選目は僅差で当選したが5選は目指さず参議院議員補欠選挙で初当選した。
  • 武田良太衆議院議員は亀井静香氏の秘書を経て伯父の田中六助氏と同じ選挙区から立候補した。死後しばらくたっていたため地盤が引き継げなかったそうである。初出馬から10年でようやく初当選した。派閥を転々とし現在は二階派に所属している。ちなみに選挙区は北九州市の南に広がる旧豊前地域だ。
  • 山本朋広衆議院議員は京都市出身で松下政経塾の卒塾者。京都の選挙区で落選するも比例復活した。2009年には前原誠司氏に負けて比例復活もできなかった。その後、神奈川県に国替えした。浅尾慶一郎さんの対立候補だったようだ。南関東ブロックで比例復活し国政復帰した。その後は菅さんに近いところにおり、現在も菅グループの一員とみなされている。かなり教会と近しい関係にあると思われるビデオが流出しているがTBSの取材に関しては言葉を濁しているようだ。京都で仕入れた人脈が関東に飛び火した事例といえるだろう。

小鑓(こやり)隆史参議院議員ら岸田派の議員

統一教会系の後援組織隆和会で「巨人の星の替え歌で激励してもらった」ことを感慨深ツイートしていたことで知られる。アベノミクスの策定に携わっていたが派閥は岸田派なのだそうだ。元通産官僚だが選挙に弱いという感じの経歴でもない。この中では異質の存在と言えるかもしれない。関東近県で統一教会の浸透ぶりがわかる事例になっている。岸田派では平井卓也さんと磯崎仁彦さんがそれぞれ関連団体のイベントに参加したことがわかっている。平井さんは衆議院の比例復活であり磯崎さんは参議院議員だが、ともに香川県選出である。

逢沢一郎衆議院議員

日テレは平井さんと磯崎さんの他に逢沢一郎さんが「祝電を送っていたようだ」と報じている。逢沢さんは祖父と父も議員というサラブレッドの家系であり松下政経塾卒塾生というエリートでもある。つまり血筋によって地盤を継承したというわけでもなさそうである。選挙区は岡山県で現在12選目というベテランだ。

現在の所属は谷垣グループである。この逢沢さんがどこから統一教会人脈を拾ってきたのかはわかっていないのだが、少なくとも細田さんの会合のメンバーとして顔写真が出ている。西日本ではかなり関係が常態化していたことはわかる。現在報じれらているのは2018年以降の事例なので「統一教会によって勝った」というわけではないのだろう。裏返せばその程度には「普通の団体」とみなされていたことになる。

すると、なぜ反社会性が指摘されていたにも関わらず「普通の団体」という認識になっていったのかということが気になる。

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