ざっくり解説 時々深掘り

岸田総理は、発熱外来が「ちょっと」混乱していることを認識

カテゴリー:

新型コロナの感染者が増えており、テレビでは連日医療機関が逼迫していて夜も眠れていないというような報道がなされている。総理の認識が注目されていたのだがようやく発熱外来が「ちょっと」混乱していると認識したようだ。

発言は共同通信が伝えている。共同通信などのインタビューの中の発言である。正確な発言は「発熱外来がちょっと混乱しているのはその通りだ」である。共同通信は岸田総理がようやく発熱外来の問題を認知してくれたようだと歓迎している。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






BA.5対策強化宣言では、政府は自分たちが表に立つのではなく「都道府県独自」で対策を取るように方針を転換した。その理由としてあげられているのはBA.2.5の性質の違いだ。TBSNHKの報道を元にまとめると次のようになる。すでに過去のエントリーで書いたように「自己責任」を徹底させる構えである。

  • 都道府県独自の対策であるということが強調されている。
  • 政府は一律の行動制限は行わない。やるとしてもそれは都道府県知事の判断だ。
  • 高齢者や重症化しやすい患者さんは自分で身を守るべきだ。
  • 発熱したら自分で検査すべきだ。
  • 政府はお金は出す予定はない。でも、医療人材などの職員は派遣する。

この「自己責任型対処」はすでに始まっている。

一つは新規感染者が105万人だったというニュースでもう一つは自宅待機が100万人というニュースだ。まず1週間の新規感染者数が105万人だったというニュースは7月25日のものだった。ところが読売新聞東京新聞で確認すると自宅療養も100万人と書かれている。これが29日のものである。

一瞬「自宅療養者と新規感染者数を取り違えた」のかと思ったのだがそうではなかった。

つまり今感染するとほどんどが自宅療養になるということだ。では病院は守られているのかと言われるとそうでもなさそうだ。7月29日時点の集計では病床使用率50%を超えた自治体が20都府県もある。つまり医療機関が逼迫していてもほとんど感染者を受け入れられないという状態になってもいることがわかる。とにかく感染者が多すぎる。

かなり逼迫した状態だが政府はその役割を後退させた。経済と医療機関の保護を両立させる必要があるが全国で状況が違うため一律には判断できないという認識があるようだ。木原官房長官は「都道府県が多様な対策を選択できるようにするのが狙いだと説明」した。

そんな中分科会有志が行動制限の案を取りまとめた。政府が重い腰を上げないなか尾身会長が動いてくれるのではないかという淡い期待を抱いて記事を読んだのだが、どうもそうではなさそうである。あくまでも感染対策は自己責任でやってほしいがそれでも収まらなければこういう事態になりますよ、それでもいいのですか?と示す役割があるようだ。

提言には「周囲で感染者が発生した場合、濃厚接触者に特定されなくても、自主的な行動抑制を求める」と書かれるという。しばらくの間は周囲に感染者が出たら「自主的に」行動を自粛してくれということだ。例えば、幼稚園でお友達が感染したら「自主的に」幼稚園をお休みし、同僚が感染したら「自主的に」休めということである。補償はあるかもしれないしないかもしれない。それはそれぞれが「自主的に」企業などと相談することになるのだろう。

徹底した自己責任型の対応を求められている。

厚生労働省の諮問機関は海外で使用実績がある薬の承認には積極的だが、自分たちで責任を取らなければならない国内製造の薬剤については極めて慎重になる傾向がある。過去の薬害事件で大きな騒ぎが起きたこともトラウマになっているのだろう。第七波のゲームチェンジャーとして期待されていた塩野義のゾコーバは結局特例緊急承認されないことになった。医療機関からは落胆の声が聞かれたそうだが、軽症者は社会活動を一旦おやすみして自宅療養に勤めるしか選択肢がないというのが現実的な対応である。

日本人は政府の言うことには協力的で公衆衛生に関する意識も高い。さらに問題が起きても政府や社会に怒りをぶつけることは少なく「自分がもっと気をつけていれば」と自省する人も多い。発熱しても「医療機関に迷惑をかけるわけにはいかない」として受診を諦めてしまう人もいそうである。このため「民度の高さ」に任せていれば国が表に出なくてもなんとかなると言うことなのだろう。

7月29日の時点で東京都は60人に1人が陽性になっていると言われている。そうなので、従来基準で濃厚接触者判定をすれば社会が心停止に陥りかねない。フジテレビは入院・宿泊・自宅のいずれかで療養中としているがほとんどが自宅療養である。NHKの報道によると自宅療養者の割合は96%だそうだ。

ただ、国は「専門家を派遣したりして支援するだけ」で「あとは自主的な奮闘に期待する」と言う立場だ。NHKの報道でも「厚生労働省は全国の自治体に医療提供の体制などを強化するよう求めて」いる。自己責任でやってくれという認識がある中で、岸田総理が「発熱外来がちょっと混乱しているみたいですね」と言う認識を持ってくれていると言うのは実はありがたいことなのかもしれない。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です