台湾電撃訪問を諦められないペロシ下院議長が起こした波紋

ペロシ・アメリカ下院議長のアジア・太平洋地域歴訪が始まった。台頭する中国を念頭にアメリカが大統領・議会ともにこの地域を重視しているということを示す良い機会になるはずだった。ところがこれが思わぬ波紋を呼んでいる。バ

イデン大統領の発言をきっかけに中国と軍事衝突の可能性が出てきたのである。どちらが悪いと言うわけではない。双方のどことなくギクシャクした関係が影響しているものと思われる。

まずBloombergが「ペロシ米下院議長の訪台計画、いまだ確定せず-29日からアジア歴訪」と言う記事を出している。訪問先のリストには日本、韓国、インドネシア、シンガポールが含まれる。






このうち、インドネシアは今年11月に行われるG20首脳会談の議長国である。G20は現在先進国ブロックとロシア・中国に分断されており、議長がどのような裁定を下すのかは今後の世界経済に大きな影響を与えるだろう。ジョコ大統領は日本を訪問し11月の議事や両国の関係について話し合ったものとみられている。ジョコ大統領としてもインドネシアの存在を世界に知らしめるため11月の首脳会談を成功させたい。日本の他に韓国も訪問する予定になっている。

ところが、ペロシ議長の暫定的な訪問先に台湾(中華民国)が入っているようだと言う噂があった。ペロシ議長も自身の「民主主義の擁護者」としての地位を確かなものにするために台湾はいつか訪問して見たいと思っていたようだ。近い筋の情報を元に「どうやら今回の訪問で台湾にも行くらしい」というリーク記事が出てきたそうだ。うがった見方をすれば世論の動向を探ったのであろう。

それに対してバイデン大統領はおそらくうっかりと「軍が反対している」と表明してしまったと、現代ビジネスが詳細を書いている。翻訳では「米軍はそれがいい考えだとは思っていない」となっている。そして「今、状況がどうなっているかよく知らない」と付け加えた。どうやらペロシ議長と親密に話ができる間柄ではないようである。

中国はペロシ訪台を牽制していたが大統領発言を受けて「人民解放軍が座視しない」と問題をエスカレートさせた。バイデン大統領の発言は非常に曖昧だがこの中国の発言と合わせると、ペロシ議長の訪台に合わせて人民解放軍が出動するかもしれないということになる。

そうなると米軍はそれに対応せざるを得なくなる。バイデン大統領らアメリカの要人が東京に入るときには横田基地を使う。民間機ではなく軍の飛行機を使うのだ。これが人民解放軍に襲われたらどうなるか。日中軍事衝突ということになるだろう。

一方、中国から見れば、事前に状況を盛り上げて堂々とアメリカの軍用機で台北に乗り込んでくるアメリカの下院議長という図式に見えてしまう。日本人はバイデン大統領が横田から日本の入国管理をすり抜けて入ってきてもなんとも思わないが、台湾を自国の領土だと考える大陸中国にとってみればこれは世論を巻き込んだ重大な挑戦である。

だが、この現代ビジネスの報道を読む限り「バイデン大統領が何か意図があってこの発言をした」とはとても思えない。どちらかといえば言って良いことと悪いことの区別がつかなくなっており頭の中にあることを全て記者に開陳してしまっているようにしか見えない。

ところがペロシ下院議長はこの発言を受けて「バイデン大統領は撃墜を心配しているのかもしれないが、それでも台湾は重要である」と強気の発言をした。日テレはこの発言の真意について解説はしていないが普通に読めば「心配性なバイデンさんが心配しても私は行く」という表明に見える。もちろん本当に人民解放軍が出てくるかどうかはわからないが、中国が反発するのもやむを得ないと言ったところである。そして挑発発言が繰り返されれば繰り返されるほど中国も引くに引けなくなってしまうのである。

国内で経済対策が行き詰まりバイデン大統領にには人気がない。中間選挙で勝つためにはなんらかの起死回生のチャンスが必要だ。ここでペロシ議長が国内の民主主義擁護派にアピールできればおそらく選挙にも良い影響が出るだろう。議会襲撃事件の公聴会を下院主催で開催するなど普段から何かと目立ちたいペロシ下院議長にとってはまたとないチャンスだったはずである。

ところがこれがバイデン大統領の「うっかり」によって米中の政治的アジェンダに乗ってしまった。中国が軍事衝突も辞さないという覚悟を見せているのだからペロス議長は台湾にゆけないと考えたほうがいいだろう。だが今度はこれが「バイデン大統領が中国の恫喝に屈したためペロシさんがゆけなくなった」という攻撃材料に使われかねないのだ。現代ビジネスは「共和党からの政権攻撃に利用されるだろう」と言っている。

ペロシ議長はおそらく民主党の人気浮揚のために台湾を利用したかった。ところがバイデン大統領とのコミュニケーションは取れていなかったようだ。米軍は「軍事衝突の可能性があるからおやめなさい」と水面下で交渉していたが結局ペロシさんが諦めたかどうかバイデン大統領は確認が取れていなかった。さらにバイデン大統領のうっかり発言の後もペロシ議長の発言があまり変わらなかったことから二人の関係が必ずしも良好ではないことがうかがえる。こうして二人が周りを巻き込んでやり取りを繰り返すと、結果的に中国を刺激し共和党に攻撃材料を与えることになる。

繰り返しになるがどちらかが悪いというわけではない。あえていうなら仲が良くないのだ。

結局このペロシ議長の無謀な行動計画はバイデン大統領と習近平国家主席の電話会談をも気まずいものにしたようだ。会談は2時間に及んだそうだが中国は強い口調で「火遊びをすれば痛い目にあう」としてアメリカの台湾介入を牽制したそうだ。BBCは漢文調で「火遊びする者は身を焦がす」と翻訳している。なんとなく格調が高く怒っているのか怒っていないのかよくわからない言い方である。中国側は総括として「総論としては協力的な会合だったが、アメリカ側が一方的に関係を気まずいものにしている」とバイデン政権を批判したそうである。

冒頭のBloombergの記事によれば与野党から「中国の恫喝に屈したと思われないように訪台すべきだ」という声が出ているそうだが、そもそも非公式訪問のはずなので訪台するとは一言も言っていない。だから「行く」とも「いかない」とも表明できない。実際にペロシ議長の行動がどちらになるのかに注目が集まるが、どちらにせよバイデン政権と民主党には苦い結果になりそうである。

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“台湾電撃訪問を諦められないペロシ下院議長が起こした波紋” への1件の返信

  1. 厄介な時にペロシ下院議長の訪台は米中対立に油を注いでいる。撃ち落とすと発言した中国が撃ち落とさなければ、アメリカの勝ちである。もし、撃ち落としてしまったら、第3次世界大戦に突入する。どちらにしても、アメリカの勝ちになりそうだ。

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