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初期のコロナ対策・ステイホームの経済へのインパクトを内閣府が発表

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共同通信が「景気の谷、20年5月で確定」という記事を出している。記事ではわかりにくいのだが要するに最初のコロナ対策だったステイホームの影響がどれくらいのものかが確定したということだ。景気動向指数研究会の分析を内閣府が発表した。

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いろいろ説明するより記事を見てもらった方が手っ取り早い。2015年が100になっていて2020年の初頭のわずか数ヶ月で95から75に急落している。景気の谷というより「切り立った渓谷」のようである。

このグラフを読んで改めて気が付いたことがある。安倍政権が戦後最長の景気回復と言っていた景気の回復のきっかけが作られたのは実は民主党政権末期である。安倍政権はこの波に乗り「自分たちが景気を回復させた」と宣伝していた。ところがこの景気回復は長く続かない。2014年の春頃に一旦急激な落ち込みがあった。そのままじわじわと下がり続ける。

その後、景気は再び登り調子になる。安倍政権はこれを一続きの景気回復だと説明し続けた。つまり安倍政権が続いているからこそ景気はよくなり続けていると説明したのだ。だが、最終的には景気動向指数研究会が2018年10月に終了していると宣言した。当時の日経新聞の記事は西村康稔経済財政・再生相が苦渋の「後退」認定と書いている。

この記事も「戦後最長の好景気が2012年12月から始まっていた」と書いている。だが今回のグラフを見るとそうは読み取れない。安倍政権の景気の山には明らかにピークが二つある。

では、景気が腰折れしたのは安倍政権の失策だったのかという話になる。実はこれもそうではなさそうだ。2014年4月に消費税が増税されている。5%が8%になったタイミングだった。国民負担は8兆円増えたと当時の日経新聞が書いている。この消費税が給料アップなき物価高のように見えてしまうため消費者が防衛行動にでる。つまり節約を始めるのだ。この消費税増税を決めたのは安倍政権ではなく野田政権である。

我々の記憶は意外と曖昧ため改めて検証しないと事実とは異なる認識を持ってしまう可能性が高い。

それを念頭に2019年秋のグラフに着目すると面白いことがわかる。大方予測できることではあるが当然景気にブレーキがかかっている。おそらくコロナによるステイホームがなければ前回のようにじわじわと下がる傾向が数年続いたのちに再び回復というようなグラフになっていたのかもしれない。

今からステイホームの影響と消費税増税の影響を分けて捉えることはできないのだが「たまたま二つが重なった」ことにはかなりのインパクトがあったのではないかと、どうしても考えてしまう。

いずれにせよ、このグラフを見せられると「コロナが拡大したから人流抑制・行動制限をしましょう」とはとても言えなくなる。

2022年1月に尾身茂会長が「人流抑制は必要ない」と言って話題になっていた。この時は後藤厚生労働大臣との間のメッセージのズレが問題になっていた。尾身さんが自分自身で判断して発言したのか誰かの意を汲み取ったのかはわからない。

改めて2020年春頃の急速な経済の落ち込みのグラフを見せられると、なぜ政府が頑なに人流抑制・行動制限をやろうとしないのかがよくわかる。政府は今の所「行動制限は考えず、高齢者と医療福祉従事者のワクチン接種で乗り切る」という方針だ。また日本医師会も「現時点でこうどうせ弦は必要ない」と言っている。ただし医師会は「自宅療養者が増えることが予想される」といっている。つまり入院は積極的に受け入れない方針なのだろう。

だが、感染者は急拡大しており発熱外来難民も出始めているという。おそらく当面のリスクは政府が感染者拡大に耐えられなくなり急に行動制限に方針をシフトさせることなのかもしれない。各者の発言にはそれぞれの思惑の違いがありまとまりを欠く状態だ。だが、感染者が急増すれば方針転換を認めざるを得なくなるだろう。

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