トルコが北欧2カ国のNATO入りを容認・NATOは中国の脅威にも触れる予定

日経新聞が6月29日未明(2022年6月29日 3:41 (2022年6月29日 4:33更新))に記事を出した。トルコが北欧2カ国(フィンランドとスウェーデン)のNATO入りを容認する見通しだそうだ。また、記事は中国の脅威も念頭に置いた今後10年の計画である「戦略概念」を発表するとも書かれている。「中国」がNATO全体の中でどの程度の重みのものになるのかはこの記事からはよくわからないが、日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドの首脳が招待されている。

岸田総理は先ほどスペインに到着した。NATOにとっても我が国にとっても重要な転換点になるのかもしれない。






土壇場でエルドアン大統領が北欧2カ国のNATO入りを容認

日経新聞は「NATOのテロ対策に全面的に取り組む」というフィンランドのニーニスト大統領の声明を引用している。土壇場になってまとまった印象だが大統領選挙を控え国内の右派に向けて「クルド人過激派対策」を訴えたいトルコ・エルドアン首相の勝利ということになる。ただ日経新聞は背後にあったやりとりについては触れていない。つまりアメリカを含むNATO加盟国がトルコにどんな約束をしたのかは語られておらずそれが公表されるかもよくわからない。

NATOは対ソビエトの連帯と敗戦国家ドイツの管理を目的として作られた。ドイツはNATOの枠組みの中で再軍備を認められ現在に至る。東西冷戦当時は片側の当事者だったが東西冷戦が集結しワルシャワ条約機構が解体された時にその役割は一度終わった。NATOは解体せず「ヨーロッパを人道危機から守る」という名目で旧ユーゴスラビア地域に介入することで「新しい枠組み」として生き残った。さらに旧ワルシャワ条約機構やソ連の加盟国を次々と加盟させた。

今回プーチン大統領が引き起こした緊張状態に対処するため長年中立を守ってきたフィンランドとスウェーデンがNATO陣営に入ることになった。これまではこの「対ロシア・対プーチンシフト」が最大の変化だと考えられてきた。

今後10年の方針である「戦略概念」は中国の脅威にも触れる予定

ところが日経の記事を読むとどうやら今後10年の戦略概念の変化はそれだけではないようだ。NATOはこれまではヨーロッパと北アメリカの軍事的枠組みだったわけだが、今回は岸田総理や尹錫悦大統領も参加しており東洋側に拡大するということになる。このほかオーストラリアとニュージーランドの首脳も招待されているため実質的には太平洋に大きく張り出したことになる。念頭に置かれているのは中国だ。

そう考えるとNATOの新しい「戦略概念」は我が国の安全保障環境に大きな変化をもたらすことになるのかもしれない。太平洋への張り出しが単なる「付け足し」になるのかあるいは抜本的な大きな枠組みの変化になるのかは今のところはよくわからない。

Bloombergによるとロシアについては「パートナー国から脅威へ」と評価が劇的に変化するようだが、中国についての書き方は非常に微妙である。単にロシアとの関係で中国の脅威が触れられるだけなのかそれともそれ以上の書き方になるのかは今後の首脳同士の話し合いによって決まることになりそうである。こうした情報がリークされる裏には「まだ本決まりにはなっていないが国際世論を味方につけて状況を有利に展開したい」という思惑があるのだろう。だが、国連安保理が機能を失いつつあるなかで「代替手段」としてNATOに期待が集まるのは当然だ。「実力部隊」を持った組織としては最も大掛かりな枠組みの一つだからである。

機密情報だとして匿名を条件に語った関係者によれば、NATOは中国を敵対国と位置付けるまでには至らない。サイバーセキュリティーや虚偽情報、重要インフラの制御、ルールに基づいた国際秩序の順守などについて、中国への懸念が強調される見通しという。

NATO、新戦略概念で中国を「システムへの挑戦」と言及へ-関係者

NATOがどのような枠組みに移行するのかは日本にとっても極めて重要である。現在の憲法とその改正論議は国連安保理を中心とした枠組みが前提となっている。だが枠組みそのものが変わってしまえば議論の前提も大きく変化せざるを得ない。

今後のニュースに注目したい。

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