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ロシアがようやくデフォルト? いやまだまだデフォルトしていない?

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NHKを見ていたら「ロシアがデフォルトした」というようなニュースをやっていた。正確には「デフォルトした」ような印象を勝手に持った。アメリカはG7に合わせて「ロシアはデフォルトした」から経済制裁の成果が出ていると主張している。ああやっぱりデフォルトしたんだなと思った。これをQuoraで書いたところBloombergの記事を持ち出して質問してきた人がいた。そこで改めて調べて見たのだがNHKの記事のタイトルは正確には「ロシアの外貨建て国債 “デフォルト”が起きた認識広がるか」というものだった。未曾有の事態が起きていて正確にデフォルトが定義できなくなっているのだ。

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まずBloombergの記事を確認する。

  • ロシアは資金を送ったといっている
  • だが債権者には資金が送られてきていない
  • 契約上は「債権者がデフォルトを認定する」ことができる
  • だが戦争という特殊な状態にあるため3年間の猶予がある

つまり、この記事を読むと「国際金融市場でデフォルトの認識が広まればデフォルトとういうことになる」ということになる。アメリカ合衆国の高官は勝手にデフォルトを主張しているわけではなくこの事実に基づいた発言をしているということはわかる。

だが債権者はこの後で債権の価値を無効化するか(つまり自分で自分の資産を紙くず認定するということだ)裁判を起こすかを決めなければならない。Bloombergは自分たちの読者が意思決定を迫られていることがわかっているため「特殊な事情なのでもうしばらく待ってみるのもいいかもしれませんよ」といっているのだ。

裁判はそもそも非常に面倒だ。たまたま知っていたアルゼンチンのケースを調べると2001年に起きたデフォルトに対して2019年に和解が成立したという記事があった。裁判に18年かかっているのだ。

ルゼンチン政府は22日、2001年にデフォルト(債務不履行)に陥った円建て外債(サムライ債)を巡り、元本の150%を支払うことで債権者と合意した。債務不履行となった同債券は約19億円分が未償還で、債券の管理会社である三菱UFJ銀行などとアルゼンチン政府が係争中。今回の合意をもとに年内にも裁判で和解が成立し、サムライ債問題がすべて解決する可能性がある。

アルゼンチン、債務不履行問題で債権者と合意

裁判が面倒な上に今回は解決しなければならない別の問題が複数ある。

  • そもそもロシアは支払っているといっているのだから、ロシアを訴えても「我々は資金を送った」と言われるだけである。つまりロシアは紛争の事実そのものを認めていない。
  • ロシアはそもそも国際金融市場で資金調達ができなくなっているのだから、そもそも紛争を解決するメリットがない。
  • デフォルトしたかどうかよくわからない債権を今後しばらくどう評価していいかという問題が残る。

こうなると3年間の猶予がある金融機関や投資家たちは状況を見守りながら「今後どうしてゆくか」を決めなければならない。普通にNHKを見ていると「ああロシアはいよいよデフォルトしたんだなあ」とか「経済制裁の効果も出ているんだなあ」などと理解してしまうが、実際にはもっと複雑なことが起きているようだ。

だが、後になって記事を再確認するとNHKでさえ「ロシアの外貨建て国債 “デフォルト”が起きた認識広がるか」と疑問文になっている。このためNHKの記事はロシアの言い分を併記しつつ盛んに「海外メディアがそういっている」と書いている。これを書いたNHKの記者たちは「ちょっと無理があるなあ」と思いつつもG7の首脳たちの空気とは大きくかけ離れたことは書けないと感じているのかもしれない。

G7サミットが開幕し主要先進国はウクライナへの継続的な支援を約束した。ただし一部ではウクライナ疲れもみえるため「経済制裁は効果を上げている」と宣伝する必要があったのだろう。アメリカの高官の動機はわかるし、これをそのまま伝える日本側の事情もなんとなくわかる。

G7をサミット(頂点)にした国際社会はロシアを金融市場から排除することには成功した。これは独立した主権国家であるウクライナ侵攻という暴挙の当然の結果といえる。だが同時にロシアは豊富な天然ガスと石油を持っており、国際経済から完全に締め出すのが難しいというのもまた確かなことだ。このため日本政府の主張をそのまま流す傾向が強いNHKでさえも「ロシアはデフォルトした」とは断言できないのだろう。

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