日本と世界の経済に影響を与え始めた異常気象

6月というのに関東地方は猛烈な暑さになっている。25日も暑かったが26日は都心で35度に到達した。二日連続の猛暑日になったのは1875年の観測開始以来初めてだったそうだ。気象庁は関東地方などの梅雨明けを発表した。梅雨の期間は関東地方でわずか21日間だった。降水も少なく地域によっては渇水も心配されるという。NHKは「ここまで早い梅雨明けは予想できなかった」という気象庁の所感を伝えた。専門家の間でも未曾有の事態だったことがわかる。

暑い夏は珍しくない。だが今年の夏は特別な夏になりそうだ。エネルギー価格が高騰し電気の不足も伝えられている。つまり、異常気象という他人事だった問題がついに我々一人ひとりの生活に影響を与えるようになってきたなという印象があるのである。






異常気象は何も日本だけの現象ではない。異常気象は様々な国の経済活動に影響を与え各地の治安を悪化させている。人々が異常気象について話し合いを始めてかなりの時間が経過したが、問題が複合的に絡み合い次第に大きくなるという状況までも予想した人はそれほど多くなかったに違いない。ガソリン価格高騰・発電所不足・インフレ・食糧不足は一つひとつが大きな問題だがそれぞれが連関して問題をより複雑なものにする。

まずインドなど南アジアで問題が起きた

まず最初に猛暑のニュースを見たのはインドとパキスタンだった。CNNが伝えている。4月から問題が深刻になり始め「人が生存できるかどうかわからない」という状態になった。5月にはさらに問題が悪化し48度とか50度という衝撃の最高気温となっていた。

この時に問題になったのは主に小麦の価格だった。今年の小麦は豊作だという話だったのだが一転して「猛暑のため小麦が輸出できない」ということになったのだ。一時は新興国の間に衝撃が走った。ウクライナからの小麦が滞りインド産小麦に期待していた人が多かったからだ。

ただし問題はそれだけでは収まらなかった。インドでは働くか死ぬかという状態になっている。また、電力不足も深刻である。停電が頻発しているという。エアコンがないというのも問題なのだが停電が起きると扇風機すら回せなくなる。さらに冷蔵庫が止まると食品衛生に問題が出る。3億2300万人が高いリスクにさらされているという。

これがさらに複雑化しているのがパキスタンだ。放漫財政の結果、外貨が不足している。パキスタンの外貨不足は深刻で「国民に紅茶を飲むのを控えてくれ」という事態になっている。首相の座を追い出された前首相が「新しい政権は外国に支配されている」として国民を扇動し総選挙を要求している。

インドでは高温だけでなく乾燥も深刻になっている。ただこの干魃の問題は近年定着しているためそもそもニュースになりにくい。GIGAZINEが翻訳記事のまとめを出している。これは日本でもこの夏問題になるかもしれない。飲み水の確保に手一杯で農業に影響が出る地域も出かねないという深刻な状態である。

ただし、すべての地域が高温・渇水に見舞われるわけではない。インドや中国では豪雨被害も出ているそうだ。インドといっても広いため東西では全く気候が異なる。西部は高温・干魃が問題になるのだが、東部とバングラディシュでは豪雨災害が起きている。6月20日には洪水や土砂崩れで60名がなくなっている。中国でも豪雨被害が起きていた。ロイターの記事によると60年ぶりの降雨量だったそうだ。

次に熱波が襲ったのはヨーロッパだった

次に熱波が襲ったのはヨーロッパだった。6月になり最高記録が次々に更新された。日本よりもカラッとしていて涼しいという印象があるヨーロッパだがスペインとフランスでは最高気温が40度を超える日もあったようだ。イタリアでは干魃も大きな問題になっている。このままでは農業に影響が出るという。

ヨーロッパでは各地で物価高対策を求めるデモや交通関係のストライキが起きている。ベルギーでは7万人のデモが起き鉄道が運休した。政府に対策を要求するだけでなく企業にも賃上げを訴えている。イギリスでも鉄道職員のストが始まった。30年ぶりなのだそうだ。複合的な要因で起きた物価高に対応するために賃金を上げろと要求している。

原因らしきものはわかっているが因果関係の解明はまだまだ

インドがなぜこんなに高温になったのかを調べると「ラニーニャ現象」が原因だとするテレビ朝日の記事が見つかった。ラニーニャ現象(南米ペルー沖の海面温度が低くなる)が起きると偏西風が北側に移動するため気温が高い状態が続くのだという。ラニーニャ現象が起こると暑い夏が来る地域があるということまではわかっているそうだが因果関係はわからない。因果関係がわからないために予想ができない。

日本の6月の記録的暑さと早すぎる梅雨明けはヨーロッパ・インド・中国と続く不調と地続きになっているのだろうなということはわかる。だがメカニズムがわからない以上は予想が難しい。気象庁の職員が「これほど早い梅雨明けは予想していなかった」というのはこのためなのだろう。

なぜこうした状況が起きているのかは詳しくはわからない。だからこれは今年だけの問題なのかもしれないし、この先もずっと続くのかもよくわからない。ただ今回の件を読んで「去年もそうだった」と知っている人も多いのではないかと思う。

実は2021年にはアメリカ西海岸やカナダで高温と干魃の組み合わせが起きていた。カリフォルニアなどアメリカ西部では山火事が問題になっていたが、日本にはカナダ産小麦価格の高騰という形で影響が出た。さらにウクライナで戦争が始まるとウクライナ産小麦の価格も高騰している。つまり異常気象は単体で問題を引き起こすだけでなく複合的にも問題を起こすのだ。

今回のような猛暑とウクライナの戦争が複合的に重なると各国ではエネルギー資源をめぐる争奪戦が起こることになる。日本では6月27日に電力逼迫注意報が出された。2011年から続く原子力発電所に対する懸念が払拭されなかったこととウクライナ情勢の悪化が重なったうえに早すぎる夏と異常な高温という事態だ。

一旦複合的に起きた問題を解決するのは難しい。我々は一つひとつできることをやってゆくしかないのかもしれない。今年は色々な意味で厳しい夏になりそうだ。

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