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アメリカの最高裁判所が「公の場所での個人による銃の携行を原則的に禁じているニューヨーク州法」を無効化

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Bloombergが「公の場所での個人による銃の携行を原則的に禁じているニューヨーク州法は無効」と裁判所が判断を下したと報道している。共同通信によるとこの法律は100年以上前に定められた法律なのだそうだ。

現在銃規制の問題は治安の問題ではなくアメリカ人と自由というイデオロギーの問題になっている。だがこの最高裁判決がどんな意味を持つのかはこれらの記事を読んでもよくわからない。また細かいことだが「原則的に」の意味も気になる。そこで、CNNの記事を読んでみた。なおCNNは民主党寄りのメディアなので若干の偏りがある。

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  • 最高裁判所が違憲判決を出した法律は100年以上前に作られた。所持している拳銃を隠したまま公共の場所に出かけることを制限するのは違法だと説明している。つまり「隠し持つことを州が制限してはいけない」というのが判断の趣旨であり、すべての銃規制が違憲になったわけではない。
  • 下級裁判所の判断に用いられるようになるため今後銃規制強化のために用いられる法律の審議にも影響するだろう。
  • こうした法律はカリフォルニア、ハワイ、メリーランド、マサチューセッツ、ニュージャージにもある。数は少ないが人口の多い州だ。一方で25の州は公共の場所で銃を隠し持つ権利の制限は一切なかった。
  • バイデン大統領はこの判断に失望したと言っている。

この判決は「州が正当な理由を決める」のが憲法の精神に反すると言っている。確かにこれはこれで合理的なように思える。ところがこの後で中絶の問題でも最高裁はある判断を下している。こちらは「中絶を禁止するかしないかは州で決めろ」と言っている。つまり、最高裁がなんらかの理由で恣意的な判断を下しているのは明らかである。

いずれにせよニューヨーク州が「正当な理由」をどのようなものにするかを決めることができるためニューヨーク州ではこの法律はかなり厳格に運用されてきたようだ。それがBloombergの「原則的に禁止されている」という表現につながるのだろう。

この点に関しては民主党が任命した最高裁判事と共和党(特にトランプ大統領)が任命した最高裁判事の間にかなりの意見の相違がある。今回CNNが問題にしているのはトランプ大統領が退任間際に押し込んだエイミー・コニー・バレット判事だ。民主党支持者はおそらくバレット判事は「どさくさ」で任命されたと考えているはずである。

日本では最高裁裁判官の罷免はあまり問題にならないのだが、アメリカではこうした判断が出るたびに顔写真入りで「誰が賛成で誰が反対か」が詳しく報道される。ところが一旦決まった判事は本人が勇退の姿勢を示すまで罷免することができない。

民主党寄りのCNNはこの記事とは別にニューヨーク州の関係者たちのリアクションも伝えている。ニューヨーク州はありとあらゆる代替手段を使ってこの判断に抵抗すると言っている。日本では考えられないことだがニューヨーク州の議員たちの中には公安の悪夢(nightmare for public safety)という表現を使って最高裁判所の判断を批判する人もいる。

もちろんNRAは「自分たちの長年の主張が認められた」と勝利宣言をしている。

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参考文献