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マクロン大統領の与党が大敗しフランスの民主主義とヨーロッパ経済が試される

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マクロン大統領を支える与党が大敗した。今後連立交渉が進められることになるのだが失敗すればフランス政治は混乱するだろうと言われている。当座ユーロの価格が下落することはなかったのだが、ロイター通信は別のマクロン仏大統領、議会過半数割れで政権運営・改革推進が困難にというタイトルの記事で「マクロン大統領は連立政権か法案ごとに野党と協議する少数与党政権かの選択を迫られる。いずれの合意もなければフランス経済の混乱は避けられない」と書いている。

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マクロン大統領が選ばれた選挙の争点はこれまで通り国際的な地位を維持するのかそれとも国内対策に重点を置くのかというものだった。マクロン大統領を支える人たちはフランスは世界の大国としてヨーロッパの秩序維持に力を尽くすべきだと考えている。だが貧困にあえぐ人たちも増えていて「他人のことはどうでもいいから国民の暮らしが楽になる政治をやってほしい」と要求する。フランスでは反マクロン陣営が極右と急進左派に分かれているためかろうじてマクロン大統領の再選が決まったが「過半数から信任されている」とはとても言えない状況だった。

ところが今回の国民議会選挙では異なる結果が出た。与党連合は245議席を獲得した。だが2位はメランション氏の左派連合だった。大統領選挙では最終決戦に進めなかったために白票を投じた人たちで急進左派と呼ばれる。第3勢力は極右と呼ばれるルペン氏の国民連合だった。ルペン氏は大統領選挙では2位だったが小選挙区の議会選挙では若干苦戦したことがわかる。

いずれにせよフランスの新自由主義・急進左派・極右という構成は変わらなかったことがわかる。

時事通信

マクロン大統領はフランスが穏健右派・穏健左派に分かれていた時に穏健左派に所属していたが新自由主義的な政策を掲げ穏健左派を離脱した。このためフランスからは穏健左派が消えてしまった。一方で穏健右派は生き残り今回は第4勢力になった。共和党は今のところ「与党連合とは政権を組まない」と言っている。

マクロン大統領が急進左派や極右と組むという選択肢は考えにくい。またイタリアのように急進左派と極右が合同しても過半数は取れないためポピュリズム連合もなさそうだ。

となると残る選択肢は「是々非々」でなんとかやってゆくというものになりそうだ。つまり、閣外協力を通じて共和党と議会を乗り切るという状況になる可能性が最も高いのかもしれない。時事通信によると共和党は「野党ではあり続けるが政策によっては協力してもいい」と言っている。親欧州連合(EU)姿勢や構造改革の必要性では与党連合と一致しているというのだ。

共和党は「旧態依然とした政党」として国民からは離反された。だが、よほどの番狂わせがない限りはマクロン政権が推し進める改革をブロックしつつ穏健な右派的政策(ヨーロッパではEUの枠組みに止まることを意味する)を推し進めることになるのかもしれない。与党連合は未曾有と言っている。かなり厳しい状況だがこの制限の中でなんとかやってゆくしかない。

外交やウクライナ情勢にはさほど大きな影響は出ないかもしれない。国民連合が政権入りすれば「NATOの指令系統から離脱する」などと言いかねないのだが共和党が親EUであると表明している。つまり外交政策では極端な方針転換はなさそうだ。これは安心材料と言える。

だが経済に対する懸念は残る。今回の議会選挙を受けてユーロが下落することはなかった。ロイターは「欧州外為市場ではユーロが上昇した。フランスで与党連合が議会の過半数を失ったことによるリスクよりも、欧州中央銀行(ECB)の分断化防止措置に対する期待の方が相場に大きく影響した」と分析する。ECBの政策は金融業界からは好感を持って受け止められているようである。

だが別の記事にはこんな記述がある。 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は20日、ユーロ圏各国の借入コストのスプレッド拡大に対処しつつ、今夏に政策金利を2回引き上げる計画を再確認したのだという。かなり金融市場の動向に気を使いつつインフレ対策を推し進めようとしていることがわかる。

FRBのパウエル議長はかなり前のめりなインフレ対策で金融市場にパニックと呼ばれる混乱を引き起こした。これはアメリカ議会には民主党と共和党の対立構造が生まれており議会が協力して経済対策を講じることができないためだ。つまりパウエル議長は極端な政治事情のために他に取り得る選択肢がなかった。

フランスやその他の国で同じようなことが起こればラガルド総裁の選択肢は狭められ、ヨーロッパの経済も混乱することになるだろう。ヨーロッパの政治状況はアメリカよりさらに多様で混乱要素も多い。ラガルド総裁は今のところこの状況をうまく抑えており金融市場関係者もECBを信任しているのだがこれは民主主義が比較的うまく機能しているからなのである。

だが今回のフランスの議会分裂はアメリカのような問題がヨーロッパで起こる可能性がゼロではないということを示している。すぐに大きなパニックが起こることは考えにくいのだが、ヨーロッパの民主主義と経済は試されているということになる。

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