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CPI8.6%の衝撃 アメリカの物価高は5月も止まらなかった

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日本ではあまり話題になっていないのだがアメリカでは物価の上昇が止まらないことが問題になっている。金融市場への影響は限定的だったが「展望を見誤った」としてバイデン大統領への批判は強まっている。今後物価の上昇がさらに続けば金融当局がさらなる引き締めに転じる可能性がある。こうなるとさらなる円安を招きかねない。

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アメリカで5月のCPIが発表された。政権は「4月にはピークアウトする」と説明してきたのだが蓋を開けてみると40年5カ月ぶりの高水準だった。年率に換算すると8.6%の上昇という数字だった。前月比でも1.0%上がるというハイペースぶりだ。もっとも深刻に受け止められたのは4月の8.3%よりも上昇率が加速しているという点だ。

ニューヨークの株価は反応したがこれは「恒例行事」になりつつある。市場はすでに0.5ポイントの上昇を見込んでおり為替への影響はあまり見られなかったようだ。今後0.75ポイントのサプライズがあれば金融市場は動揺することになるだろうが、株式市場はFRBの政策によって動揺しているためBloombergは「来週0.75ポイントのサプライズはないだろう」と分析している。市場の動揺が限定的だったのはそのためである。

こうなるとバイデン政権への風当たりが強くなる。すでに消費者マインド指数は落ち込んでおり「リセッション入り」の可能性もいよいよ濃厚になってきた。だが中間選挙を控えて共和党からの抵抗が強く議会で十分な物価高対策はできていない。

さらにこのような物価上昇はアメリカ人にボルカーショック当時の記憶を呼び覚ます。当時のFRBボルカー議長は景気に強いブレーキを踏んだ。インフレは収まったが資金調達に行き詰った中小企業が倒産するなどの副作用も大きかったとされている。

このままでは中間選挙に負けてしまうという強い不安があるのだろう。バイデン大統領は石油元売会社を名指しして批判したそうだ。曰くエクソンは神より多く稼いだそうである。こうしてバイデン大統領が感情的な苛立ちを誰かにぶつければぶつけるほど求心力が落ち物価高騰対策が取りにくくなるが、バイデン大統領にはもうよゆうがなさそうだ。

なぜこのような急激なインフレが起きているのかはよくわからない。以前「コラム:米景気の早期後退が望ましい理由、2%のアンカー外れれば重大事に=門間一夫氏」というロイターのコラムをご紹介した。インフレは統計や政府の政策ではなく期待値で動く。だから「心理的アンカー」が重要なのだ。門間氏が心配していたようにアメリカのアンカーは外れかけており「重大事」の危険が出てきた。こうするとリセッションという衝撃を覚悟しつつ急ブレーキを踏む可能性も現実的な選択肢になるのだろう。一方で日本は「何をやっても賃金は上がらないから物価は絶対にあげてはいけない」という重すぎる錨が経済を沈滞させている。こちらも景気は合理性ではなく人々の予想によって動いている。

国民の気持ちを動かさない限りは何らかのショックを与えて外から行動変容を促すしかなくなる。だがそれは痛みを伴う対策でありできれば避けたいところだ。

政治家の言葉が大切なのは最終的に人々の期待に働きかけて違いを作ることができるのは国のトップリーダーだけだからなのだろう。

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