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参議院選挙でどの政党に頑張ってもらえば最低賃金が上がるのか?

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政府・自民党は最低賃金を現行の930円から1000円以上を目指すという方針を明らかにした。非常にざっくりした計算だが毎年3%上がってゆくと大体2025年ごろにはこれくらいの数字になる。原油高・ウクライナの戦争・円安などを背景にしたインフレが2%程度だと仮定すると「大体現状維持プラスアルファ」ということだ。逆にこれより低い伸びになると「最低賃金階層」の暮らしは苦しくなることが予想される。「なんだ現状を追認しているだけではないか」と思った。

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自民党はインフレがすすむと「だいたいこれくらいは上がるだろう」という現状を改めてまとめて目標として掲げたことになる。だがこれでも反発が予想されるのだそうだ。

政府の政策は厚生労働省の審議会の諮問を参考にするということになっている。この委員会には公益・労働者・使用者が代表を出している。つまりこの審議会を無視して選挙を念頭に政府が「勝手に最賃目標を決める」と主に企業側(使用者)からの反発が予想されるのだという。産業界(労使ともに)が現状の低成長状態から抜け出せなくなっているということなのかもしれない。特に地方の人手不足は深刻だ。人が集めたくてもそれに見合う給料が出せないという事業者が多く海外から人を入れろという話になっている。

それでも選挙を控えた自民党政権は最低賃金の目標を出したい。念頭にあるのは野党分断を狙った動きだろう。連合の芳野会長は自民党の会合(政府の会合ではない)に出席し連合の目標を伝えている。野党候補者を抱える連合が自民党の会合に出席すること自体が異例であり当時ニュースになった。ちなみに連合は2022年の春闘で「企業内で1150円」の最低賃金を目指していた。さらに2022年3月に麻生副総裁と芳野会長が食事をしたというニュースが取り上げれらたのを記憶している人は多いだろう。これも当時は「切り崩し」などと報道された。

公明党も最低賃金引き上げに取り組むというニュースがある。ただし額については明記されていない。公明党は不思議なことを言っている。持続的賃金上昇がなければ新しい資本主義はないと言うのだ。ただ政府が介入して企業に賃金を上げさせるのは国家主導の社会主義的な体制である。

立憲民主党も「政治が目標を出すべきだ」と考えているようだ。最低賃金について2021年の衆議院選挙の時には「時給1500円を将来的な目標に中小企業には助成する」と書いている。だがいつまでにということは書かれていない。ちなみに自民党と同じペースの3%を当てはめるとその「将来」は2038年になる。

労働組合に支えられているはずの国民民主党も「早期に1000円以上を目指す」と書いているだけである。これも連合の目標よりはおそらく下回るだろうという予想なのだろう。こちらもいつまでに達成するかという年限目標は見つからなかった。

ここまでが現状維持型の政党の主張である。数字は出ているが目標がない。目標があったとしても現状追認を「目指す」としているだけだ。

賃金上昇がインフレに直結しているアメリカ合衆国は「賃金を上げないから人が来ない」という状態になっており、金融政策は主に加熱した労働市場を冷やすという役割を担っている。日本では政府が最賃アップを宣言しても企業が応じず労働者も移動しない。政府は仕方なく財政支出を増やして有権者の不満を和らげることになる。資本主義経済では政府が賃金を上昇させることはできない。

それでは現状打破型の政党は何を言っているのか。両極端にある共産党と維新の政策を見てみよう。

「共産党は何を言っているのだろう」と思い検索して見たところこちらも2021年6月の記事が出てきた。理論家の多い共産党らしく「大体普通に暮らして行ける給料は1500円から1600円程度だ」と説明している。東京と地方の生活費の違いなどは無視され「全国一律1000円以上」と書かれている。「すみやかに1500円を目指す」と言っているのだが、時期目標と手段は明らかになっていない。ただし、共産党は労働者目線の社会主義政党なのだから国家主導で最低賃金引き上げを行うという点についてはイデオロギー的には問題がないのだろう。共産党が地方経済や起業家・資本家のことを考えていないと文句を言うのは筋違いだ。もともとそういう政党なのである。

ただ、起業家目線が欠落した社会主義政権の経済は中期的には失敗することになっている。起業家や投資家が国外に逃げ出してしまうからだ。地域ごとの違いを無視して全国一律に最低賃金を上げてしまえばおそらく地方からは地域密着型の中小企業が消えてしまうだろう。

維新についても調べてみようと思ったのだがもともと新自由主義型の政党だったため最低賃金には懐疑的な姿勢なようだ。2012年に共産党が維新の「最賃廃止」提案を批判している記事だけが見つかった。朝日新聞によるとそのあと2012年12月(つまり民主党政権末期)に廃止提案を取り下げて改革に修正したという記事が出てきた。当時の浅田均政調会長は「誤解されて伝わった」と報道各社に説明したそうである。その後維新はこの分野については積極的に発言していないようだ。

確かに労働市場が流動化すればアメリカのようにインフレを伴った賃金上昇は起こるのかもしれない。だがこのまま中進国化が進めば競争力低下にともない賃金は落ちてゆくだろう。賃金相場は大きく変わるかもしれないがその方向はよくわからない。

そう考えると最賃を上げるためには共産党政権にして国家が始動するか新自由主義政権にして国家が全く手を引くかの二択ということになる。そう考えると、自民党・立憲民主党・国民民主党が「現状維持と停滞」を意識的に選択しているということがよくわかる。下手に何かを動かすとさらに状態が悪化するかもしれないという恐れがあり複雑化したシステムに手をつけられないという状態になっているのである。

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Comments

“参議院選挙でどの政党に頑張ってもらえば最低賃金が上がるのか?” への2件のフィードバック

  1. れいわ新選組は、全国一律1500円に、国の補助で引き上げることを公約の一つに掲げています。これは、資本主義か社会主義かのイデオロギーではなく、現状の地域格差や賃金格差を減らし、人々の生活を底上げするためです。
    ただ、どのような方法で、中小企業に補助を出し、賃金を引き上げるのかについては、制度設計に詳しい方との協議で具体化していくとのことです。
    共産党の主張に近いかもしれませんが、目的の一つは地方の再生でもあります。どこにいても最低賃金が保障されることで、都市への一局集中ではなく、人口が分散されることを狙いとしているようです。

    1. れいわ新選組については別の財源に関する記事で扱いました。インフレ率が起動に乗るまでは無制限に国債発行してもかまわないという図式を示した上でそれをどこに使うべきかという議論をしているようですね。インフレ目標が達成されるまで国債発行ができるという着想は安倍元総理と同じなのだが使い道が全く異なるという点は興味深いです。

      コメントありがとうございました。