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ロシアと中国の反発によって国連の核兵器開発の抑止機能が機能停止

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ロシアと中国が北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への経済制裁に反対した。国連が担ってきた核開発抑止の機能が機能不全に陥ったということがよくわかる出来事だった。国連総会はロシアと中国の説明を求めているが2カ国がこれに応じるかどうかはよくわからない。

核兵器の占有という優位性が崩れ、経済の独占という優位性も崩れた。一方で我々は少なくともしばらくの間は核兵器開発という脅威を黙認する中国とロシアがいる世界を生きなければならない。

では次をどうするのだ?というのが重要な課題なのだろう。

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国連安保理事会は北朝鮮の大陸弾道弾ミサイル(ICBM)発射を受けて経済制裁の強化を目指す決議を採択しようとした。だが、中国とロシアが拒否権を発動したことで経済制裁案は否決された。一連の流れを時事通信が伝えている。

国連総会は中国とロシアに説明を求める会合を開くそうだが中露に説明の義務はない。仮に応じたとしても両国の主張を正当化する場として利用されるだけになるのだろう。

背景にあるのは「経済的優位」を武器に現状を維持しようとする西側に対するロシアと中国の反発である。バイデン大統領はIPEFやクアッドという「中国を念頭に置いた」枠組みづくりを進めていることからこの反発はあらかじめ予想された動きと言えるだろう。

アメリカ合衆国では「専制主義との戦い」は政治利用されている。つまり中国の反発はこの政治利用のコストである。だがコストを支払うのはアメリカだけではない。おそらく北朝鮮で核兵器開発が進めば日本はより危険な状態に置かれることになる。

国連安全保障理事会は大国同士の牽制のために利用されているのだが国連安全保障理事会の意味づけを常任理事国自らが破壊するかなり危険な行為である。NHKによると国連安全保障理事会が北朝鮮に対する制裁決議を採択したのは2006年10月だった。きっかけは北朝鮮の初めての核開発だったそうだ。

「あいつが悪い、いやあいつが偉そうだ」という言い争いのために国連が利用されている。その裏で危険な核開発が進んでいるのである。

国連がダメなら多国間協議でということになるのだが、イランをめぐる核開発抑止も進んでいない。アメリカが離脱しロシアが関与を停止している。バイデン政権は交渉のテーブルに復帰しようとしたがイスラエルが抵抗し結果的に交渉への復帰は見通せない状態だ。

つまり国連による抑止も多国間抑止も共に機能不全を起こしている。故に我々はこの現実を受け止める必要がある。ではどうするのか?ということになる。まず最初に思い浮かぶのは現実を受け入れて核兵器の保持・共有の議論を始めることだ。

ここでは二つの点について考えたい。まずは最初に核兵器を最初に実戦運用したアメリカのその後の説明の変遷だ。アメリカ人と話していると真顔で「核兵器の使用は仕方ないことだった」と言われることがある。日本人としてはとてもショックな体験だがアメリカ人もその説明が「後付け」であることを知らないことが多い。

第二次世界大戦に巻き込まれるのを避けたいトルーマン大統領は日本本土への攻撃には慎重だった。だが対ドイツ戦に使おうとしていた原子爆弾の使い道がなくなると「これを使えば戦争をすぐに終わらせることができるのでは?」という意見が生まれた。結局トルーマン大統領はこれを受け入れ軍部に使用を許可した。

当時アメリカには検閲があり日本の被害は報道されなかった。トルーマン大統領は「報復と戦後のアメリカの優位性を確保するために原爆を使った」と説明した。だが、検閲が解かれた後でジョン・ハーシーが執筆した広島で被爆した人々の惨状を伝える記事で実情が知られるようになる。あまりの惨劇に「これはやりすぎだったのでは?」という声が出ると使用の正当化が必要になった。この時に説明として使われたのが「スティムソン論文」である。「戦争の犠牲を拡大せずに本を解放する目的もあった」と発言が修正されることになった。のちにトルーマン大統領は広島の訴えに抗弁するときにこのスティムソン論文に沿った説明をしている。

この時の経緯はロイターとCNNの二つの記事に詳しい。

つまり、原子力爆弾は使った人や国にかなりの罪悪感を与える非人道的な兵器である。現在核兵器は利用が目的ではなく抑止のために保持されていると説明されるのはそのためだ。使った時の非人道性に向き合うことはできないため「何とかして使うつもりはないが手放せないという理由づけが模索される」のである。つまり人間の一般的道徳概念ではとても扱えない兵器だということは知っておく必要だある。

現在公式に核兵器保有が許されている国は常任理事国だけではない。実際にはイスラエルも核兵器を保有していると考えられている。支援したのはフランスでありアメリカ合衆国は黙認した。アメリカ合衆国は中東戦争に対する非難決議などに拒否権を発動することでイスラエルという体制を守ってきた。

この「曖昧路線」は地域のバランスを保ちアメリカのメンツも保つという効果があるものと評価されているようだ。だが近年イランが核兵器開発への意欲を見せており、このバランスは崩れつつある。

バイデン政権はイランの核合意交渉に復帰するつもりだったようだが、議会の反発と急進化するイスラエルに押されてしまい結果的に復帰を諦めたようだ。今後追い詰められたイランが核兵器開発を加速させる可能性がある。経済制裁でロシアが追い詰められれば、2015年の合意(イラン・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・中国・ロシア)の様相が変わる可能性もある。アメリカは復帰を目指していたが今度はウクライナ侵攻でロシアが経済制裁を課されたことで関係が悪化していた。

どちらも産油国であるロシアとイランは石油でライバル関係にある。このためイランがロシアに無条件に接近することはないだろう。だがどちらもアメリカに経済制裁を受けているという事情があり「一時休戦・協力」の動機がある。つまりアメリカが追い詰めることで本来接近するはずがなかった国が接近してしまうという可能性があるのだ。

もともと核兵器は「誰も持っていない」という占有性が最大の抑止力になっていた。一方で使ってしまった後の罪悪感も使用国に大きなインパクトを与える。その代わりに経済優位性を使って核兵器を抑え込もうしたがこれも失敗しつつある。

さらにこれに不安を感じた周辺諸国が次々に核兵器開発や所持の動きに入るとおそらくこれを止めることができる人は誰もいなくなるだろう。未来への漠然とした不安や恐怖に勝てる人は多くないからである。

ロシアやイランのような資源国は資源を西側に売る必要があった。西側が唯一の消費地だったからだ。だが、中国という一大消費地ができてしまったことによってその図式が崩れつつある。

日本・アメリカ・ヨーロッパの「価値観を共有する国」が優位性を保つためには武力でも経済力でもない新しい何かを見つける必要がある。仮にそれが見つけられれば安保理でロシアと中国の拒否権もそれほど大きな問題はそれほど大きなものではなくなるだろう。単純な話だが、我々が中国の脅威を取り除くためには中国よりも先にゆかなければならない。

一方で「すぐには新しい優位性を獲得できない」ならば妥協してでも融和を図る必要がある。いずれにせよ、このままとりとめのない不安にさらされ続ければ、おそらく次の世代には核兵器は「ありふれた終末兵器」になってしまうだろう。

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