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食料品補助の廃止でイラン国民の政府に対する抗議活動が先鋭化

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最近「インフレ」について書いている。スリランカでは国家デフォルトが起こり、トルコも危機的な状況にある。それぞれの事情を見ていると「ああ大変だなあ」という感想を持つ人が多いと思うのだが、実はそれで終わりそうもない。

イランでも物価高に抗議する動きが起きている。「ある事情」がありイランは軍事的活動を活発化させるかもしれない。イスラエルが巻き込まれアメリカが関与するようになれば、ウクライナ・ロシアに続き状況が不安定化する可能性がある。

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イランで抗議活動が活発化しているとCNNの英語版が伝えている。原題はWhy Iranians are taking to the streets again – つまりなぜ「イラン人は再び街に出るのか?」というものだ。街に出るというのは抗議活動のことである。

何が起きているのかよくわからないので記事を読んでゆくと「政府が食料保護を廃止した」ことで小麦製品の値段などが300パーセント上がったという。何が起きているのかはよくわからないがイランはロシアやウクライナからの小麦に頼っており価格高騰についてゆけなくなったのではないかと思う。今月にライシ大統領が導入した補助金だったということだが、おそらくは国庫で支えられなくなったのだろう。

イランではこれに加えて石油やガスが売りにくくなっているとCNNは説明する。政府補助との因果関係は書かれていない。イランは主にエネルギーを中国に売っていたそうだが、中国が格安になったロシア産に乗り換えつつあるため需要が減っているのだそうだ。

小麦供給の40%をロシアとウクライナに頼っているのだから小麦の価格が高騰するのは当たり前だ。石油やガスを売った金でそれを賄おうとしたが価格高騰についてゆけなくなり補助金を廃止した途端に抗議活動が起きたのかもしれないと考えるのが自然である。

パンのスタンドを作って国民の不満を和らげているトルコとは明暗が分かれたという印象も持つ。最初に痛みに耐えられなくなるのはやはり生活困窮層だからだ。

もちろん抗議活動といっても小さなものだ。「先鋭化とは大げさな」という人もいるだろう。だがトルコやイランといった強権的な国家で抗議活動が起こるということは背景にさらに大きな不満が溜まっているということ示唆している。当然政府は「イラン人がこんなことをするはずはないから外国に扇動されたものがやった」と説明することになる。

背景にあるのはアメリカの経済制裁だということはよく知られているようだ。つまり、イラン政府がアメリカと核合意を結び核兵器開発さえ手放してくれれば庶民の生活は楽になる。

ライシ大統領が当選したのは2021年6月だった。BBCによると革命体制を維持したい体制側が選挙を有利に運んだと見る有権者も多かったそうだ。ライシ政権は革命防衛隊のテロ指定解除を求めてアメリカ合衆国と争う姿勢を見せている。つまりアメリカとの敵対姿勢を鮮明にすることで西側の影響力を排除しようとしているのだ。核開発を手放したくないという気持ちは北朝鮮と共通する。

ここまでが英語のニュースである。それを読んだ後で、革命防衛隊の大佐が殺されたというニュースを読むと背景がよくわかる。なんらかの理由で革命防衛隊の大佐が殺された。犯行声明を出している人は誰もいない。

殺されたのはイアド・ホダイ大佐だ。自宅の前にある車で殺されたという。犯行声明を出している組織はない。ホダイ大佐は海外の作戦を指揮している「コッズ部隊」の幹部だったそうだ。アメリカはこれをテロ組織と認定している。イランはこの暗殺についてイスラエルの関与をほのめかしているそうだ。日本の報道はここだけを切り取って「報復を誓った」と強調する。

BBCの記事だけを読むと「外国勢力が何らかの意図を持ってホダイ大佐を狙ったのか?」という気持ちになる。だがCNNを読んだ後だと印象が変わる。

おそらくは国内にもアメリカと早く手を打って経済を何とかしてほしいという人もいるのだろう。革命体制が権力基盤を温存するために対立姿勢を強めれば強めるほど国民の生活が貧しくなるとすれば「何とか体制を変えたい」と考える人が出てくるのは当たり前だ。逆に体制側はイランが外国に狙われているとナショナリズムを煽る方向に持ってゆきたいと考えるだろう。

普通「報復」は儀式的な敵国への攻撃で終わることが一般的である。問題なのはイスラエル側も政治的な問題を抱えているという点だ。最近アラブ系議員が離党し連立与党が少数派に転落した。ベネット首相の対パレスチナ対策に抗議する動きに抗議しての辞任である。国会では解散をめぐる予備投票が行われているそうだ。

ベネット首相には融和と先鋭化という二つの選択肢がある。パレスチナへの態度を融和させれば元々の支持基盤を失うだろう。こうなると「もう一つの選択肢」であるパレスチナに対する態度をさらに先鋭化させることになるのは明らかだ。

つまり、「武力衝突をエスカレートさせて国内の不満をそらしたい」とする動機はイランとイスラエルの双方にある。何も起こらないことを願うばかりだ。

こうなると対中国シフトに復帰して国力の増強をアピールしたいバイデン大統領はウクライナ・ロシアに続いて、イスラエル・アラブ・イランという難しい状況に直面するだろう。こうした国内の経済不振を背景にする不穏な動きが色々なところで起きている。

今回の日米共同記者会見でわかったのはアメリカが「世界の警察官をやめて普通の国に戻ります」と宣言した途端にロシアのウクライナ侵攻を誘発したということをアメリカが痛感しているということだった。とはいえ議会を説得できるわけでもないのでバイデン 大統領は「口先コミット」で台湾有事に対応するといい国内向けには「アメリカの方針は変わっていない」と言い続けている。

表面的には反発してみせる中国だがおそらくはこのあたりの事情を分析しているはずである。アメリカは国内の政治事情で思うように動けないというのは誰の目にも明らかである。だが、ここで中国が火中の栗を拾って軍事活動を先鋭化させる必要はない。なぜならば世界では不穏な材料がいくつも転がっており何が破裂するかわからない状態になっているからである。中国はただ黙って見ていればいいということになる。

このようにインフレや国家デフォルトは単体でみれば「ああかわいそうに大変だ」という程度の話なのだが、それが積み重なった時にはかなり面倒な事態を引き起こすことがわかる。実は世界各地で大きな変化が起きていることがわかる。こうした変化がインフレを引き起こす。そしてそのインフレがますます状況を先鋭化するというスパイラル状の流れが生まれている。

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