ニューヨークで「株式市場機能崩壊」の懸念

Bloombergに「【コラム】株価急落は新たな段階か、市場機能の崩壊懸念-エラリアン」と言う物騒な記事が出ている。市場機能崩壊とは「世界の終わり」を感じさせる大げさで物騒な表現なのだがどう言う意味なのだろうか?と思った。

一言で言えば市場が実経済を映す鏡ではなくなり企業が資金調達ができなくなるというような意味なのだろう。

事実8週連続で株価が下落している。これほどの下落は1932年以来90年ぶりなのだそうだ。金融関係者はこうした「事実」と「観測」を容易に結びつけてしまうため、株化を見た後でこのようなヘッドラインを見ると不安な気分になる。そのため、機関投資家やストラテジストは冷静な対応を呼びかけている。






ターゲットの業績不振をきっかけにNYダウなどが大きく下げた。これが単なる株価急落ではなく「新たな始まりなのではないか」というのがエラリアン氏の懸念だ。さらにこれは株価下落だけでなく実体経済に影響を及ぼすかもしれないと警告する。

この株価ショックは三つのストレスを与えるとエラリアン氏は説明する。

  1. 投資家の市場に対する信頼感が損なわれる。
  2. 株価を経済指標と見る消費者の信頼感が損なわれる。
  3. 資金調達が難しくなった(流動性に問題が生じた)と考える企業がより慎重に行動するようになる。

このうち「1」はすでに散々指摘されているが中段がやや分かりにくい。なぜそうなったのかが説明されていないからだ。

健全な株式市場において投資家は各企業の業績を研究し株を買いしばらくは株を持っている。だが現実はそうではなくなっている。株価が上がっているということを察知した人々がSNS経由で情報を集めてスマホで株を買うという「株式市場の民主化」が起きているからである。エラリアン氏の記事はこの「株式市場の民主化」には触れていない。

いずれにせよ人々が株式市場を実体経済の指標だと捉えるようになると株価が下がったことが消費者に懸念を生じさせ消費意欲を減退させることになるだろう。因果関係が逆になると株価が下がったことで実経済が悪くなるという逆転現象が起きる。こうして落ち着きを失った株式市場からは継続的な資金調達が難しくなるだろう。

なんらかの急激な変化が「感じられては」いるがその正体はよくわかっていない。すると不安に駆られた人々は一つひとつの企業の業績に一喜一憂し「経済全体」に当てはめるようになる。

ウォール街の専門家は「バイヤーズストライキ」と表現した。つまり買い手がつかなくなっている状態のようだ。記事が説明する直接の原因はインフレ(実経済の不調)とFRBに対する信頼感の不足のようだ。

専門家は「多くの人がターゲットとウォルマートの業績悪化を経済全体に当てはめようとしている」と指摘する。おそらくそれはあまりにも極端な見方なのだが人々は予測で動くためにこの悲観論があっという間に市場全体に広がってしまうというのだ。不安感が経済を動かすというのは不思議な気がするのだが、実際に起きていることの説明にはなる。

もちろんプロのストラテジストたちはこれをゆきすぎた悲観とみている。アメリカの株式市場は「悲観的になりすぎている」とゴールドマンサックスやJPモルガンのストラテジストたちは主張する。リセッションの可能性は払拭できないものの「これで慌てて売るべきではない」というわけだ。

いずれにせよ日欧米の中央銀行は株価対策を優先順位においているわけではない。経済誌の記事の中では「企業の流動性確保」という表現をされている。流動性確保の優先順位は高くないようだ。

G7財務大臣・中央銀行総裁会議では「インフレ抑制」が大きなテーマになったようだ。日本を除く欧米ではさらなる金利の引き上げが検討される流れになっている。このため利上げを予想して債券市場に戻る人たちもで出てきた。Bloombergは「債券市場に回帰する強者」と表現するように債券市場に回帰する動きはまだメインストリームにはなっていない。

YouTubeでニュースを見ていると同じようなニュースばかりがレコメンドされてくる。アメリカの急激なインフレについての英語のプレゼンテーションを見ているうちに、次から次へと同じようなニュースばかりが流れてくるようになった。現在、アメリカとイギリスではこの「インフレ対策」がかなり大きなテーマになっているようだ。

一方で日本は財政を支えるための長期金利抑制が行われている。欧米がインフレ対策に舵を切る一方で黒田総裁は金融緩和を続けると主張し続けている。

金融政策では「あれもこれも」一度にはできない。日銀出身の大塚耕平参議院議員によると「ティンバーゲンの定理」というそうである。

つまり一度インフレ対策をやると宣言してしまった以上、株価が崩壊しようが流動性に問題が生じようが一定期間は「やり抜く」ことが求められることになる。

今回読んだ記事の中には「流動性に問題が生じれば(つまり株価が相当下落すれば)」アメリカの金融当局も何か考えるだろうとしているものはある。だが、実際にそれがいつ頃どの程度のものになるのかはわからない。

こうなると金融政策で生じた歪みの補正は政治の仕事ということになる。これはアメリカだけではなく日本でも同じことである。日本の場合は実質上の財政ファイナンスを支えるために長期金利を抑えているので急速な円安が進み「悪い物価上昇」が起きている。これをどう立て直すのかというのは岸田政権の仕事だ。ティンバーゲンの定理により円安の是正は行えないからである。さらに日本の株価はアメリカの株価の影響を受けるため日本の投資家は株の不安定さにも対処することが求められる。

いずれにせよバイデン政権化でアメリカの経済は急速に悪化しているということだけは確かであり、これはトランプ政権下では見られなかったことだ。このままでは人々の非難がバイデン政権に向かうことは避けられそうにない。バイデン政権にとっては非常に難しい局面に入っているということだけは確かなようだ。

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