EUにウクライナを加盟させるつもりのなかったマクロン大統領が「マイナーリーグ創設」を提案

マクロン大統領がショルツ首相と会談し「ウクライナは当分EUには参加できないだろう」との見通しを示した。数十年後といっていることから最初から入れるつもりはなかったのだろうということがわかる。代わりに提示したのが「別の枠組み」である。マイナーリーグを作って二軍をそこに入れようという発言に聞こえる。ウクライナにとってはあまり気分のいい話ではないだろうと感じた。早速リトアニアが反発している。






AFPの記事は「ウクライナEU加盟は「数十年後」の可能性 仏大統領、新組織設立を提唱」となっている。つまり、特に二軍とかマイナーリーグなどと書かれているわけではない。ただ「我々の基準を満たすには数十年かかる」と言っていることからフランスやドイツなどの優位性を強調し「その水準にははるかに劣る」といっているのだから二軍扱いしているのは自明である。

例えばアメリカとオーストラリアが同盟を結び「日本は我々のスタンダードに合致していないからマイナーリーグで雑巾掛けからやってくれ」などと言われて喜ぶ日本人はいないだろう。マクロン大統領はそういうことをウクライナに政治的な意図を持って言っている。

さすがにウクライナだけを排除するのはまずいと感じたのかマクロン大統領はモルドバ、ジョージア、イギリス、ボスニア・ヘルツェゴビナをはじめとする西バルカン諸国、数十年前からEU加盟を検討している国々などの名前を挙げた。名指しこそしなかったが「トルコも我々のスタンダードには合致しない」と切り捨てたように聞こえてしまう。つまり逆に多くの国を怒らせかねない状況を自分で作ってしまった。

ロシアの脅威をより身近に感じるリトアニアが早速反発した。当然の反応だろう。「私の印象では、EU加盟候補国として認定するという断固たる決断を下す政治的意志が全くないことを覆い隠そうとするものだ」とした上で「提案の前にウクライナの意見を聞き、希望に沿うか確認すべきだ」と言っている。上から目線で高いスタンダードを押し付けるヨーロッパのエリートと彼らからやや下に見られてきた周辺国の目線の違いを感じる。つまりこの発言はEUの中にある潜在的一流国家と潜在的二流国家の間にある微妙な差別感情を呼び起こす可能性がある。

ウクライナのゼレンスキー大統領は「対等なパートナーとしての関係を望む」との希望を表明しているのだから、これがウクライナが気にいるソリューションにならないのは自明である。ウクライナ側は「対等な加盟」が直ちに実現することを期待しており二級市民・二流国家扱いは想定していない。入るからには対等な国になりたいと望むのは当たり前のことである。そしてそれはすでにEUに参加している国にも言えることなのだ。

もちろんマクロン大統領の言い分も理解できる。ハンガリーのように汚職が撲滅できない国もある。EUとの間で闘争状態になっており「予算を配分しない」とか「ロシア産の原油を禁輸にするのは認めらえない」などいう争いが生まれている。おそらくマクロン大統領にとってみればハンガリーも「本来は我々の高いスタンダードに合致しない」遅れた国なのだろう。

さらにイギリスも北アイルランド・アイルランドを巡って「ソーセージ戦争」と言われる国境問題を抱えている。イギリスは離脱協定の破棄をほのめかして規則を形骸化させようとしており争いは今でも続いている。国益のためになりふり構わぬ姿勢を見せるジョンソン首相に対してマクロン大統領が好ましくない感情を抱えているのは明らかである。

ただしEUもウクライナの加盟申請がすぐに実現するとは思っていないようだ。フォンデアライエン委員長の発言を注意深く読み直すと「加盟を支持」とは言っているが「すぐに加盟できますよ」という表現が微妙に避けられている。リトアニアの大統領も8年くらいかかるのではないかとの見通しを持っているようだ。

ただ、このマクロン大統領の態度はむしろフランスで問題を引き起こすのではないかと思った。ルペン候補の躍進からフランス国内にも「高いスタンダードについてゆけない」と感じる人が増えている。急進左翼と急進右翼の仲が悪かったことからマクロン大統領の再選が拒否されることはなかったが白票がルペン支持票を上回るなど「アンチ・エリート」の動きが加速している。おそらくマクロン大統領に代表されるフランスのエリートのプライドの高さはそれについてゆけない内外の離反者を生み出すのではないかと思う。

「ロシア陣営に渡さないために緩衝国リーグ」を作るという構想も理解はできる。失敗した結果ウクライナに親ロシア派の政権ができるとEUのどこかの国と国境を接することになる。防衛コストは確実にヨーロッパ経済を圧迫し続けるだろう。だが、緩衝国を抱えるということはそれを経済的・軍事的に支援するということである。フランス人の中にも「外国を支えるならまずは自国民を何とかしろ」という人たちが大勢出てきている。つまりマクロン大統領の上から目線の提案は「結局緩衝国を維持するためにフランス人がどれだけ支出するつもりがあるのか、またできたとしてそれがフランス国民に支持してもらえるのか」という現実的な問題に直面するのかもしれない。

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