5月9日の戦勝記念日を前に「宣戦布告するのではないか」とか「プーチン大統領がガン手術のために指揮権を一時手放すのではないか」という報道が出ている。いずれもイギリス発の情報で真偽のほどはよくわからないがロシアは宣戦布告報道を否定した。一方でウクライナ東部の戦線はロシア側に張り出す形になっている。
5月9日という節目を前に情報戦が活発化する一方で「戦争・紛争の形」自体はますます見えにくくなっていることがわかる。日本政府はこうした状況下で「正しい判断」を下しNATOやウクライナを支援することになる。
いずれにせよ他国に対する一方的な侵略はあってはならないし民間人の犠牲を伴う武力行使は即時停止されるべきだという基本的な姿勢を保持しないと、単に情報に流されてしまう可能性がある。
先日、イギリスの国防大臣が「5月9日の戦勝記念日にロシアは総動員体制に移行するのではないか?」という観測を流した。これが日本では「宣戦布告だ」として伝わり、その後にテレビで「総動員体制に移行する可能性はある」という解説が出た。いわば緊急事態宣言のようなもので大統領に強い権限が与えられることになるというのだ。中には憲法の規定を説明し「選挙の延期」などに触れる解説者もいた。
ロシアのペスコフ大統領報道官はこの観測を否定した。戦勝記念日の宣戦布告否定(共同)・9日に「戦争」宣言の見方否定 ウクライナ侵攻でロシア(時事)がそれぞれ伝えている。
また既にご存知の方も多いと思うのだが「プーチン大統領がガンの手術を行うため一時姿を消す」という報道もなされている。こちらもイギリス発の情報だ。テレビ朝日が伝えているのを見たことがある人がいるかもしれない。一時姿を消す時に指揮権を腹心に一時的に委譲するというのである。テレビ朝日のYouTube動画(今後の影響は・・・プーチン大統領“がん手術報道” 一時的に指揮権を“腹心”へ?(2022年5月4日))でその内容が確認できる。
こちらテレビ朝日の報道は「?」がついている。クリックしてもらえるヘッドラインではあるのだが確度が極めて低いとみなされているのだろう。戦況について伝えた後にこの情報に触れているという程度である。
これらの情報を見て、当初節目と見られていた5月9日に向けて情報戦が活発化してきたんだなということを感じた。だがその意図や確度についてはよくわからない。
- まず、これらは全て事実である可能性がある。
- イギリス側が「プーチン大統領が総動員体制を出せばロシアの民主主義や国民生活が制限される」とか「ロシアの行動がエスカレートするだろうから準備をして備えなければならない」ということをほのめかして流している可能性がある。また指揮権の問題についても「一時期プーチン大統領の睨みが聞かなくなる」という情報を流している可能性がある。
- 逆にロシア側が奇想天外な情報を流し「どういう経路で伝わるのか」を調べようとしている可能性もある。
こうした情報は疑いだすといくらでも可能性を探すことができる。つまり、この件に関する情報は全て(当然このブログの情報も含めて)疑ってかかる必要がある。このためこのブログではできるだけ情報のソースをリンクするようにしている。結局は読んでいる人に確かめてもらうしかないからだ。
ただし「情報が撹乱することにより全体像が見えなくなっている」ということだけは確かである。これは実は軍事的にも言えることである。最近になって混乱がウクライナの東部からロシア側に張り出している。「ロシアで爆発や火災相次ぐ 19件、ウクライナの破壊工作か」で詳しい内容を読むことができる。ウクライナ側から見れば「攻撃の拠点となっている国境の向こう」に反撃が広げていることになるのだが、西側からもたらされた武器や装備品の管理が難しくなっているのは確かである。
これまでの報道ではウクライナの地図の中で全ての戦況が語られていたのだがその構図が成り立たなくなっている。情報戦も活発化しているため全体像がますます見えにくくなっているのだ。
日本政府はこうした状態の中で常に「正しい判断」をしながらNATOやウクライナを支援することになる。情報を見ている側も「民間人の犠牲や他国への一方的な侵攻は許されるべきではない」という基本的な価値観を保持しておかないと単に情報に流されることになりかねない。情報を取捨選択する側の姿勢も試されていると言えるのかもしれない。