今週は3日から4日にかけてアメリカ連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。メディアによって確度に差はあるが「利上げを検討」とか「利上げへ」と書かれている。
利上げの主な影響は二つある。株価と為替だ。ドル高・円安についてはすでに織り込み済みであると見られているようだ。つまり今回の発表によって大きな影響を受けるとは考えられていないようだ。だが、アメリカの株価はすでに大きな影響を受けている。これを「騒ぎ」と表現する識者もいる。
利上げの確度についてはメディアによって書き方が違う。ロイターは利上げか?と書いているが、時事通信は「2000年5月以来となる0.5%の大幅な利上げに踏み切り、物価安定の回復に向け強い意志を示すとみられる。」と久々に大きな利上げがあるだろうと断定的に書いている。
このブログではしばらく円安について研究していたため「またこれで円が安くなるのではないか?」と思ったのだが実際には129円台で取引されていた。記事をよく読むと「為替への影響はすでに織り込まれている」そうだ。アメリカ中心の書き方なので「ドル高」という表現になっている。
個人的にはパウエル議長の発言はかなり曖昧だったような印象を受けたのだが市場は「確実に利上げがあるだろう」と判断したようだ。ロイターは「NY外為市場=ドル下落、4月は7年ぶりの大幅な上昇」と書いている。つまり4月の時点で織り込まれ大幅な上昇をしたため「やや行きすぎた感がある」とさえ考えられていることがわかる。
ところが株価は大きな影響を受けている。時事通信は「逆風」と書いている。ではこの株価の混乱はまともな評価なのかということになる。
確かにアメリカではインフレが加速しGDPも縮小している。いわゆるスタグフレーションかと思わせるような内容だ。ところが内情を見ると輸出は不調だったが個人消費は順調だったようだ。労働市場が好調で(やや過熱気味という評価すらある)賃金の上昇も実感されているため個人消費が伸びているのであろう。
ではなぜ株価が「逆風」を受けているのだろうか。東洋経済がいくつかの記事を出している。米国の利上げが想定内でもなお警戒が必要なワケによるとパウエル議長の発言が波乱を呼んでいるのだという。パウエル議長は実行力を持った対策を準備している可能性があり株式投資家が必要以上に警戒している様子がうかがえる。これは日銀の黒田総裁が何かを発言しても特に市場からの反応がないのとは真逆である。
識者によっては「市場は過敏になりすぎている」と見ているようだ。米国株式市場の「金利騒ぎ」はもうたくさんだはこれを騒ぎ(つまり必要以上の反応)と見ている。こちらは賃金の伸びを積極的に評価している。つまりアメリカの個人消費が堅調ならばこうした混乱は一時的なものでそのうち落ち着くであろうと予想する。
面白いことにこちらの記事は「現在騒ぎになっている株価」よりも「一旦落ち着いた円安」の方が長期的な日本の深刻さを示しているとしている。つまり、アメリカの好景気が落ち着きを取り戻した時点で金利差が再び開くと予想していることになる。これを克服しアメリカの経済にキャッチアップするためには「投資に値する国になるしかない」と言っている。つまり構造を改革して再び稼げる国になるべきだという主張である。
こうした主張は長年繰り返されてきたが実際にはめぼしい成果は出ていない。だがそれでも「出口」を模索するならば地道に産業構造を改善したり生産性を上げたりするしかないという当たり前のことがわかる。