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日銀政策決定会合の「円安対応なし」で円安が一時131円台に進行

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日銀の政策決定会合が終わった。蓋を開けて見ると「これまでの金融政策維持」という予想通りの展開になったのだがサプライズもあった。あくまでも例外的と考えられていた指し値オペを毎日(営業日のみ)実施するのだという。つまり円安政策を容認するという姿勢が明確になったのだ。あとはアメリカの景気が悪化する「スタグフレーション」などが起きて強気のタカ派的金利調整を持続できないというような場合を除いてこのままある程度の円安が進行しそうだ。

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まずロイターが「日銀会合後に円安・株高・金利低下、ドルは20年ぶり130円乗せ」という記事を書いている。ハト派的な内容(金融緩和策の持続)と市場が受け止めたためだと分析する。現状の金利操作(YCC)の全面的な継続を決めたからである。むしろサプライズだったのは指し値オペを毎日(正確には毎営業日)実施するという宣言だった。このままでは「買う国債がなくなるのではないか」と心配する分析者もいる。

金融政策の続行は物価高が抑制されていることが条件だ。この物価高が起こりそうなのだが黒田総裁はそれを認めないかもしれない。ロイターの日銀、金融政策の現状維持を決定 指し値オペを原則毎日実施へを読む限り現状認識の変更はなかったようであるが物価上昇予測は引き上げられた。

物価高の展望が大幅に引き上げられた。プラス1.1%から1.9%への修正であり従来黒田総裁が目標としていた2%に迫る。つまり金融緩和政策の修正が討議されても不思議ではない状況である。ただ日銀は「これはエネルギー価格をめぐる不確実性を織り込んだものであり持続的なものではない」という姿勢を崩していない。ウクライナ危機は続くかもしれないが新型コロナ感染症関係の供給制約は次第に和らいでゆくであろうという読みのようだ。

「指し値オペを続けるとは日銀も相当困っているのだろうな」などと思うのだが、ブルームバーグは日銀の別の説明を紹介している。オペ明確化で政策の憶測払拭、市場の不安定性軽減-黒田日銀総裁というヘッドラインからはわかりにくいのだが、本文を読むと「オペをやったりやらなかったりするとこれが憶測を呼び不安定化の原因になる」と言っている。いずれにせよこれが今回のサプライズになった。

いずれにせよ「日銀は円安対策よりも金利の上昇を抑える政策を優先する」という姿勢が明確になったことで、金利差が縮小するためにはアメリカが前のめりの金融引き締め政策をやめるか日銀総裁の交代が必要ということになりそうだ。アメリカの前のめりの金融政策についてはドイツ銀行が「大規模リセッション入りを招く可能性が高い」と予想している。FRBの政策もバイデン大統領に歩調を合わせる形になっており急速な見直しはありそうにないのだが内外からの批判が集まれば修正はあり得るかもしれない。イエレン財務長官はアメリカがリセッション入りすることなどないという立場だ。

アメリカ経済が減速しているのは確かだ。2022年1〜3月期のGDPがマイナス成長だった。ただし急速なプラス成長の揺り戻しである可能性もある。さらに輸出は低調でも国内の個人消費はプラス(+2.7%)というまだら模様になっている。おそらくアメリカ国内では「景気が低迷している」という実感は湧きにくいだろう。

今の所どこまで到達するのかはわからないが130円の壁を越えたところで止まり131円から130円台後半というところで推移している。NY円は一時131円台前半で取引されていたがやや落ち着きを取り戻しつつある。円安のトレンドは直線的に伸びており「政策決定会合」で様子見だった分を取り戻す動きに見える。

円安より気になるのは国債の本来の価値である。市中に出回っている国債は日銀が引き取れるが政府が新しく発行する国債は一度は誰かに引き取ってもらう必要がある。この「本当の金利」がいくらになっているのかがもう誰にもわからなくなっている。選挙を直前に控え政治系のニュースには「大型物価高対策」や「防衛費の倍増を目指す動き」といったニュースが多いのだが、裏打ちになる国債がきちんと発行できるのか?という議論はあまり行われていない。一旦誰かが買い取っても日銀が後々処理してくれるのだろうという「安心感」だけが国債の裏打ちになってゆくのかもしれないとは思うが、それについて分析した記事は見つからなかった。

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