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ロシアの「恫喝」にヨーロッパは連帯して対応する

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ロシアのやり方にはおおよそパターンがあることがわかってきた。集団の中にある強い点は狙わず弱い点を狙い攻撃する。つまり「見せしめ」手法だ。ヨーロッパはこのやり方に慣れていて連帯を強めて対応しようとする。対抗すると事態がエスカレートすることはわかっているのだし動揺して相手と交渉をしても中長期的には利益がないからだろう。ロシアは短期的には国内市場でのルーブルの上昇やEU内の動揺と言った成果を手にするだろうが、中長期的には「長年ガスの供給だけは戦争の道具にしなかった」という信頼を売り渡すことになった。

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「ロシアがついに実行に移した」というニュースには少なからぬインパクトがあった。ポーランドとブルガリアのガスを止めるという通告がありその後本当にガスの供給が止まったとロイターほかが伝えている。ヨーロッパ側はこれをロシアの恫喝だと受け止めたが動揺せず毅然として対応することに決めた。EUが連携してポーランドとブルガリアに影響が出ないようにしようとしている。フォン・デア・ライエンEU委員長は「一方的な供給停止はロシアがガスを脅迫の道具として使おうとする新たな試みだ」と指摘する。

ロシアのやり方を見ていると「弱い点」を叩き相手の動揺を狙う作戦が多く取られていることがわかる。おそらく様々な民族や宗教が入り混じっておりお互いに警戒心を持っているような地域ではこうしたやり方が効果的なのだろう。

一方でヨーロッパは違った対応を取っている。ロシアやオスマンなどの外敵と対峙してきた歴史が長いため外敵に対して連帯して対応することに慣れている。細かいいざこざは多く抱えているものの連帯により統一された市場と法の支配・法治主義という基本的な理念を作り上げた。結果的に経済的に成功したのはヨーロッパだったのだから分断よりも連帯の方が繁栄の早道であるということがよくわかる。最近ではハンガリーに対し「法の支配を徹底しないのなら予算配分をしない」という厳しい措置も取っている。

ヨーロッパの連帯は資源管理から始まっている。もともと資源をめぐる戦争が絶えなかったドイツとフランスは国境付近の鉄鉱石や石炭の共同管理に取り組み始め同一通貨ユーロ経済圏まで発展したという経緯がある。

経済連携から初めて徐々に信頼を構築してゆくというヨーロッパ型の仕組みは東アジアの安定にとって参考になる点が多い。日本では河野太郎氏が日本にも同じような枠組みを作るべきだという主張をしているがあまり浸透しているとは言えない。日本や東アジアは地域はこうした細かい違いに拘泥しておりNATOのような相互防衛協定までは作ることができていない。むしろ国債を大量発行してでも防衛費を2倍にし単独で国を守ろうという意見が広がり始めている。

ただしロシア側はなんとしてでも自分たちは勝っているのだと思いたい。天然ガスにはルーブルが必要なのだからルーブルを調達する国は増えるだろうという判断なのだろう。ルーブルの価値が上がっているそうである。ただよく読むとこれは「ロシア国内」の話だ。つまりロシアの中では「ヨーロッパの連帯など大したことはない」という認識になっているのかもしれない。

ブルームバーグは「ガスプロムに近い筋の話」として欧州の数社はロシアの要求を受け入れる手続きを進めているという話を伝えている。ロシア側の働きかけに応じてルーブル払いに応じる会社も出て来たようだ。ロイターが追加取材をしてロシア側の主張を裏付けた。ただし応じた企業の中に大手はいないそうだ。部分的な事実を全体に当てはめようという試みがあることがわかる。こうした情報が出ることで「もしかすると」という動揺を誘おうという狙いもあるのだろう。ヨーロッパの連帯が試されている。

フォンデアライエン委員長は硬軟織り交ぜつつ「協定破りには制裁がある」と警告している。派手な対決構図こそないのだが、連帯して外からの脅威に対応しようという歴史のあるヨーロッパは連帯をより強めて共同でロシアに対峙しようとしているのである。

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