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日銀金融政策決定会合が終わるまで一段の円安は小休止

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4月27日から28日にかけて日銀金融政策決定会合が開かれている。目下円安が進行しておりなんらかの政策変更があるのかが注目される。

現在日銀は「円安対策」か「金利の上昇阻止」かでジレンマに陥っている。目下の状況をそのまま反映させてしまうと思わぬ方向に動きかねないため表現そのものは当たり障りのないものになりそうだと言われており関係者は「行間を読みながら」日銀の思惑を探ることになりそうだ。

ロイターは政策会合の発表が終わるまで円安は小休止だろうと言っている。裏を読めば「何の発表もなければまたもとの円安基調に戻るだろう」と言っていることになる。一方でさすがにこのレベルまで円安が進めば日銀も何かするだろうという声も聞かれる。

このブログは関連記事を読みながらできるだけ短い時間で概要が理解できるように構成する記事を出している。このトピックに興味を持った人は文末の参考文献から関連記事を探すことができる。

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「ジレンマ」にさらされている日銀は、今のところ金利上昇阻止に重きを置いているようだ。一定利率で国債を無制限に買い入れる「指し値」オペが2日間延長されたことからも姿勢は明確である。

この28日の会合の結果を受けて金融政策が変更になる可能性があると市場は一応の警戒感を見せている。だがブルームバーグが調査したところによると「9割が現状維持を予想している」そうだ。つまり現状維持で何もしないであろうという予想が大方なのである。ロイターは「日銀の政策会合が終わるまで円安は小休止である」という三井住友銀行チーフストラテジストの宇野大介氏のコメントを紹介している。

いずれにせよ黒田総裁は目下の経済情勢に関する判断をどう表現するかに苦労しそうだ。

2022年度のコアCPI見通しが1%台後半に乗りそうなのだという。欧米に比べると全く大した数字とは言えない。だが、黒田総裁は常々2%で目標が達成されるとしており、その「成就」に近づくことになる。ところがここで金融緩和策を終えことをほのめかすと長期金利が上昇し始める。政府と綿密な調整をしないまま長期金利が高騰すると当座預金の利上げなどの対応を迫られることになるだろう。日銀が持っている資産の多くを占める国債にはそこまでの金利収入をもたらさないため日銀の持続可能性が問題になってしまう。これが一部のエコノミストが懸念する「ハイパーインフレ」シナリオだ。

黒田総裁は岸田政権とコミュニケーションを密にして政府日銀で一体となって現状に対応しなければならない状況だ。だが岸田政権は連立相手の公明党などから「もっと財政支出を強めるべきだ」という圧力にさらされており金融引き締め・財政再建に向けて調整ができそうな空気ではなさそうだ。

発表された経済対策は6.2兆円と当初予定されていた4兆円よりも多くなる見通しである。さらに一部からは防衛費もGDP2%以上にすべきだという声までもが聞かれ始めた。自民党はすでに提言を済ませている。公明党の山口代表は「国民が増税や医療・福祉の削減を予想する」として選挙前の前のめり発言には警戒感をあらわにしているのだが、茂木幹事長は参議院選挙前にこれを訴えることで防衛費増強の流れを作りたい考えているようである。背景には一部の国民に人気が高い安倍元総理の「財源は国債でいいではないか」という発言もありそうだ。政府を大きくして国民生活を守るべきであるという声が日増しに大きくなっている。

では内閣が一致して財政拡大に向けて日銀を全面支援しているのかと言えばそうでもない。財務大臣は円安を嫌悪する発言を繰り返している。いわゆる「悪い円安」を匂わせる発言である。金利上昇を抑えると円安基調に傾く。外的環境が劇的に変わっているため「これを今まで通りに抑える」ことは不可能だ。

いずれにせよ全体としては金利上昇を警戒し円安が進むと政府が支出を増やして物価高対策をするという方向に進みつつある。国債依存が増えるため金利上昇が容認できなくなりさらに円安に進む可能性があるということになる。

政治がらみの複雑な状況があり日銀の最終的なステートメントは当たり障りのないものになるだろうと予想されているようだ。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは「日銀による情報発信はバランスの取れた方向感のないものに変わっていく」と言っている。

ロイターは「さすがにこの水準まで円が安くなれば日銀も動くのではないかと市場が警戒している」という声も伝える。「みずほ(ロンドン)の金融機関外為取引部門責任者、ニール・ジョーンズ氏は「当局者が円安を懸念し、何らかの措置を取る可能性があるとの見方が出ている」と指摘」と書いている。アメリカの常識から見ると「ここまで来て何もしないのは不自然である」ということになるのかもしれない。だがそれでも何もしない可能性があるというのが日本の特殊なところだ。

アメリカでは長期金利の上昇が早く進み過ぎてしまった。ドイツ銀行は前のめりの金融政策はアメリカのリセッション入りを招くであろうと警戒している。ただのリセッションではなく「大規模な」と表現している。CNNはドイツ銀行は「アメリカが「穏やか」なリセッションに入る」ことを予想した実績があると評価しておりこちらの動向からも目が離せない。一方のイエレン財務長官は「アメリカのリセッション入りなどあり得ない」と強気な姿勢を崩さない。想定していないということは何もしないということだから金利が上昇したまま不景気に直面という可能性が高まっているのかもしれない。アメリカが不景気に慣れば日本は金融政策だけでなく景気に大きな影響が出る。経済の牽引役がいなくなってしまうからだ。

日本の金融政策はアメリカの景気によって政策が左右される従属的な状態になっているため日銀総裁の発言や政府の発言ではなくアメリカの経済動向によって大きな影響を受けるだろう。欧米の当局者がアメリカ経済の評価を巡って意見が一致しないという状態なのだから日本が思い切った政策変更に動き出すのはかなり難しいそうだ。

こうなると実は最も大きな要素は岸田総理の動向なのかもしれない。6月に「新しい資本主義」の全容を見せると言っている。つまり「経済財政運営は2段階で」ということだ。それまでは自民党・公明党幹事長が上げてくる分配政策が主に出てくるのだがその後それとはメッセージが流れてくるということなのかもしれない。仮にこの時点までに何もメッセージが出ないとなると、これまでの「風まかせ」の状態は継続することになるのだろう。

参考文献

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