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国民民主党が維新との連携を全面見直しへ

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国民民主党が「維新との連携を見直す」と言っている。党内の手続きに瑕疵があったことが表向きの理由だが実際にはすでに破談しており現状追認の動きのようだ。

経緯を見ると野党が有権者の要望を掴みかねていることが理由になっているように思える。従来型の野党は自分たちが持っている政治的アジェンダを有権者に浸透させることが政党設立と維持の目的になっているのだが全く有権者には響いていない。

さらに維新の松井代表が積極的に野党間の連携を壊す運動を展開している。これによって結果的に維新に振り回されているようだ。

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岸田政権のもとで行われた衆議院選挙は結果こそ自民党勝利で終わったが維新躍進の印象だけが記憶に残る選挙になった。国民民主党は自民党に接近し、焦りを見せる公明党が「補正予算の策定」を総理大臣に直談判するというような事態になっている。

維新は従来型の野党とは全く違った方向で有権者に浸透している。テレビを積極的に利用して有権者が喜びそうなアジェンダを掲げるのが得意なのだ。だからその影響範囲も関西のテレビが映る地域に限られている。

例えばMBSは「維新を取り上げすぎた」と自主的に報道姿勢を反省する動きを見せたのだが、裏返せば「維新を出せば数字が取れる」し「出演料も払わなくて済む」と考えていたことがわかる。MBSは「政策スポーツ局の判断だった」「一年を総括するにあたり面白いと思った」などと総括している。東京スポーツは「人気のある政治家がノーギャラで出てくれるのが大きかった」とする局内の声を伝える。

関西では東京発のお堅いニュースではなく地元に根ざした庶民的な政治が好まれるのだろう。だが衆議院選挙の時とは違い「吉村さんで数字が取れなくなった」という声も伝えられており人気がいつまで続くのかという点に関しては不確かなところもあるようだ。

維新の戦略はいくつかのパートに分かれており、これを松井代表が巧みに使い分けることによって微妙なバランスを保っている。結果的にこの戦略は成功し関西では高い人気を獲得していることがわかる。

  • 大阪などの地方議会で勢力を伸ばし政権政党としての実績を作る。地域の問題を地元テレビ局に伝えてもらい露出を増やす。
  • 自民党とは適切な距離を保ち協力しつつあくまでも関西の利益を代表する野党として振る舞い外から国政を批判する。
  • 立憲民主党や共産党などを「左派」として攻撃し野党の連携を積極的に崩してゆく。

左派系野党はこれを「ゆ党」と揶揄するが維新は「是々非々の現実的な対応なのだ」と説明してきた。この是々非々戦略に乗ろうとしたのが左派批判に疲れていた国民民主党だったがやはり利用されるだけに終わってしまいそうだ。

衆議院選挙後に維新が取り組んだのは野党分断だった。国民民主党と立憲民主党の中があまり良くないことに目をつけ「議員報酬削減(いわゆる文通費問題だ)」で国民民主党と協力すると表明した。だがこれは政策に関する協力であり統一会派を組むことには否定的な考えを示していた。選挙連合を「政治家都合による野合だ」と批判されることを恐れていたのだろう。左派嫌いの産経新聞はこれを是々非々連携であると歓迎した。協力の中には改憲推進なども含まれていたからである。国民民主党はこれに乗り「立民、共産、社民」の左派連合の国対委員長会談から離脱を表明する。

その後立憲民主党も維新との国対委員長会談の枠組みを作った。ポイントは「共産党抜き」だ。つまり共産党を抜くことで内部に反発が起こることを期待したのだろう。案の定、共産党は猛反発したそうだ。時事通信はこれまで「国対委員長会談では維新が孤立していた」と言っている。だが立憲民主党にいる左派の支持者たちの騒ぎが大きく広がると立憲民主党は共産党外しをするつもりはなかったと共産党外しの国対協議からは撤退する。当然穀田国対委員長は「立民は謝罪しろ」と立憲民主党を批判した。おそらく立憲民主党内の左派の支持者たちも新しい執行部に複雑な感情を抱いているのではないかと思う。つまり「なかったこと」にはならなかったのである。

立憲民主党と共産党の間にさざ波を建てた維新は国民民主党との連携を見直す動きを見せるようになる。国民民主党が岸田政権の予算案に賛成すると「与党になるなら連携できない」として国民民主党を批判したのだ。さらに3月になると「維新が国民民主党との連携を白紙化した」というニュースが流れてきた。表向きの理由は「国民民主党が与党に接近したため」ということになっているが、パートナーとしてはあまり役に立たないと見切ったのかもしれない。政権に協力するなら自民党と連立すればいいのにといっている。

維新は要所要所では政権と協力し利権を誘導している。管政権と緊密に結びついて万博を誘致したのもその一つの成果と言っていいだろう。だが、あくまでも表向きは「関西から東京の政権と対峙する」というポジションを貫いている。こうして中央と地方で見せ方を変えることで独特の一貫性を維持しているのだ。

時事の記事は国民民主党側の苛立ちも感じられる。「維新は大阪の意向が絶対だ」であり「ガバナンスがなっていない」と批判している。松井代表が風を読みつつ柔軟に損得勘定による連携や連携解除を目指すという姿勢についてゆけなくなってしまったのだろう。

このように維新は(正確には松井さんということなのかもしれないが)後から考えてみると「左から右」に野党を並べて「左から切ってゆく」という一貫した方針を取っている。さらに最終的にどの合意もなかったことになってしまうことから「おそらく連携は視野に入れていないのだろうな」ということがわかる。ただし野党が話を聞くのは国会議員団なので維新が何を考えているのかがよくわからないのだ。

いずれにせよ、紆余曲折を経て国民民主党側が「党内手続きに瑕疵があったので決定を見直す」と表現したというのが今回のニュースだ。選挙に向けた連携がないのだから見直しではなく事実の事後追認といってよい。

中央ではこのような動きになっているが、各選挙区ではまた別の動きが出ている。まず京都では福山哲郎さんに国民民主党が協力しないと表明した。静岡と京都で双方の候補者を相互推薦するそうだ。関西では勝ち目がないということで撤退し代わりに「静岡を取る」という計算なのだろう。国民民主党は応援しないが2議席あるんだから福山さんにも是非頑張ってもらいたいと説明している。中央では協力しないといっている維新と国民民主党だが「それはそれこれはこれ」という対応だ。

有権者に明確な要求があればある程度の政党的な塊ができるのだろうが、現在のようなほぼ無風状態では民意を汲み取りつつテレビで反応を探るしかない。こうなると選挙区の事情に合わせて「是々非々」で対応するしかなくなる。すると政策的な塊という意味での政党が消えてしまうのである。

当然これは野党だけではなく自民党と公明党にも言えることである。補正予算か予備費かという問題は「公明党の勝利」で終わったが自民党の内部からは不満も出ているという。特に相互推薦がない「是々非々の選挙区」では岸田総理が公明党に華を持たせた結果自分たちの利益代表者が当選できなかったということになりかねない。

参考文献

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