アメリカの富豪イーロン・マスク氏とTwitter社の間で買収協議がまとまりそうだ。マスク氏の狙いは必ずしも明らかではないがかねてよりTwitter社の政治へのリベラルな姿勢に疑問を呈している。このため共和党の内部からは「これでトランプ氏がTwitterに戻ってくる」と期待する声がある。まだ買収が決まっていないうちからマスク氏に対して「アカウント凍結を解除してくれ」という要望が出ているそうだ中間選挙に向けてアメリカの分断がますます過熱するのかもしれない。
ロイターが「米ツイッター、マスク氏の買収提案受け入れへ 25日にも発表=関係筋」という記事を出している。最終調整が必要なうえ株主の合意が必要となるため実際にいつ頃の発表になるのかはよくわかっていない。両者のバックにはゴールドマンサックスとモルガンスタンレー社がついているそうだ。企業価値を約430億ドル(約5兆4300億円)になり多額のアドバイス料が動くからである。金融界にとってはかなり大きなイベントである。
もちろん、金融界だけではなく政治に与えるインパクトも大きい。トランプ政権の末期にはTwitter社が議会襲撃への悪影響を恐れてトランプ大統領のアカウントを永久凍結していた。
トランプ大統領のアカウントは支持者たちにトランプ氏のメッセージを伝え共和党議員たちを応援する役割を果たしていた。つまり選挙の集票マシーンとしても機能していたわけである。共和党の議員や知事たちを褒め称え民主党を攻撃するTweetが飛び交っていたのを記憶している人も多いだろう。
マスク氏の政治的狙いはよくわからないのだが、ロイターは「米下院共和党、ツイッター買収提案歓迎 トランプ氏復活に期待」という記事を出している。これまでのTwitter社は株式が公開された企業だったわけだが、今後マスク氏の表明通りに非公開企業になれば共和党はマスク氏に働きかければいいことになる
。大統領選挙でバイデン大統領に負けたトランプ氏がTwitterに戻って来れば当然積極的なバイデン政権批判を繰り広げるだろう。これは中間選挙で当落線上にいる共和党議員にとってはこの上ない追い風になる。バイデン政権は支持率が低迷しておりなかなか復活の糸口がつかめない。そんな中でトランプ大統領がTwitterに再参戦ということになれば政権批判のトーンが一段上がるのかもしれない。
すでに別の記事でお伝えしたように共和党知事のいるフロリダ州では「批判的人種理論」や「性自認の多様性」を攻撃する動きが出ている。ターゲットになっているのは教科書や小学校である。日本から見ているとよくわからないのだが、少なくともアメリカ合衆国の一部ではかなり激しい「イデオロギー闘争」が起きており収まる気配がない。Twitter社の買収劇がアメリカ政治にどのような影響を与えるのかはまだ未知数だがおそらくは抑制の方向ではなく拡大の方向に進んでゆくものではないかと思う。